1 FOR ALL JAPAN 廃炉のいま、あした

1Fを守る仲間たち

2015年12月25日

INTERVIEW 03 温かくおいしいものを食べて英気えいきを養っていただきたい

渋谷昌俊渋谷しぶや 昌俊まさとしさん
福島復興給食センター株式会社
代表取締役社長
竹口暁子竹口たけぐち 暁子あきこさん
福島復興給食センター株式会社
主任栄養士

 2015年6月1日に営業えいぎょうがはじまった大型休憩所きゅうけいじょの食堂。その食事をつくっているのが、今回紹介しょうかいする福島復興ふっこう給食センター株式会社です。給食センターがあるのは、双葉郡大熊町の大川原地区。ここでつくられた給食が車で30分ほどかけて、1Fに運ばれてきます。今回は、代表取締役社長の渋谷しぶや昌俊まさとしさんと主任栄養士の竹口たけぐち暁子あきこさんにお話をうかがいました。

給食センターができたいきさつを教えてください。

渋谷さん:

 1Fで働くみなさんに温かい食事を食べていただくことで、職場しょくば環境かんきょうを良くするのが第一の目的です。ただ、1F構内こうないで食事をつくるのはまだむずかしく、はなれたところに給食センターをつくって運びむことになりました。そこで、全国で社員食堂や病院の給食をつくっている日本ゼネラルフード株式会社(本社名古屋市)が、センターを運営うんえいするための会社を設立せつりつすることになったのです。

 現在げんざいは、給食センターで45人、1F大型休憩所きゅうけいじょの食堂で55人、合計100人が働いています。うち福島の方が90人で、残りの10人は日本ゼネラルフードから出向しゅっこうしてもらいました。

放射線ほうしゃせんに対しての不安はありませんでしたか。

渋谷さん:

 私はまったく心配していませんでした。なにより、廃炉をささえる社会的に意義いぎのある仕事ですし、私たちにはノウハウもあります。ためらうことなく「行きます」と返事をしました。

竹口さん:

 私も名古屋から来ていますが、実家の家族は、「福島に遊びに行けるね」といって喜んでいたほどです。友だちや同僚どうりょうの中には「大丈夫だいじょうぶなの?」と心配していた人もいましたが、そんなことを言ったら、こちらに住んでいる人に失礼だろうというのが本心でした。それでも、汚染土おせんどが黒いふくろめられて積み上げられている様子を初めて見たときには衝撃しょうげきを受けたのも事実ですが。

毎日の献立こんだてや毎月のフェアを考えるのは大変ですが楽しみでもあります

お仕事のご苦労はありますか。

竹口さん:

 私の主な仕事は、献立こんだてを考えることと食材の発注です。食材はなるべく福島県産、かつ値段ねだんが見合うもので、コメ、野菜、豚肉など、全体の3わりになりますね。これまで私はずっと給食の仕事をしていましたが、国産の豚を使うのは初めてです。値段ねだんは高いのですが、あまみが全然ちがうことにおどろきました。

 献立こんだてを毎日、昼5種類、夕3種類考えますが、内容ないようが重ならないようにしています。また、作業員の方は体を動かす仕事なのでボリュームを多めにしたり、東北の人の好みに合わせて味を変えたり、といった工夫もしています。もちろん、低カロリーのメニューも提供ていきょうしています。

 そして最大の課題は、1カ月間、同じメニューを出さないこと。定食はもちろん、カレーも30種類以上用意しています。大変なように見えますが、地元の納品のうひん業者さんや地元の栄養士の仲間がいろいろと教えてくれるのがありがたいですね。おいしいものを食べてもらうためになやむのですから、正直言って楽しい毎日です。ラーメンフェア、秋祭りなどのメニューフェアを考えるのも楽しい時間です。

渋谷さん:

 私も、作業員さんたちにいかにおいしく食べていただけるかを考えています。給食センターから1Fまで30分ほどかかりますので、どうしてもつくりたてを食堂で提供ていきょうするというわけにはいきません。そこで、メニューの内容ないようを工夫して、多少さめてもおいしい食事を考えることでカバーしています。また、おそい時間帯に食事をする作業員さんたちのために、同じ献立こんだてを4回に分けてつくり、作業員さんたちの食べる時間に合わせて運ぶという工夫もしています。

休みの日はどうごしていますか?

竹口さん:

 こちらに来て1年たちましたが、まだまだ福島や東北のことを知らないので、職場の人たちとよくドライブに出かけます。先日も、三春、郡山、仙台に行ってきました。立ちった先で、どんなものが食べられているのか、うまく献立こんだてに入れることができないかを考えています。

渋谷さん:

 最近、いわき市内のスポーツクラブに入会しました。こちらに来てから、いわき市内にあるアパートと給食センターの往復おうふくは自家用車ですし、給食センター内も広くないので、運動不足になってしまったからです。週1回は通うようにしていますが、なかなか時間がとれないのがなやみの種です。

地元の人が多く加わることでこの土地で仕事ができることをしめしたい

今後の給食センターについて教えてください。

渋谷さん:

 来年、新事務棟のとなりにもう1つ新しい食堂ができます。仕事場が現在げんざいの食堂から遠い方には、ぜひ新しい食堂で温かくておいしい料理を味わっていただきたいと思います。そのさいは、スタッフの増員ぞういんが必要なので、できるだけ地元の方々を採用さいようできればと思っています。いわき市内でも、大熊町おおくままちでは今でも防護ぼうご服が必要と誤解ごかいしている方が多くいます。そういう方々に、ここの食堂では、安心して安全に働くことができるのだとしめすことは大切だと思うのです。

 今は名古屋の人間が中心ですが、少しずつ現地げんち採用さいようの方に管理職や役員になっていただき、最終的には地元の方たちで運営うんえいしてもらえればと考えています。日本ゼネラルフードは全国で社員食堂を展開てんかいしていますが、これだけ注目されている職場は、ほかにありません。作業員さんたちにおいしいものを食べていただき、英気えいきを養い、事故のないように仕事をしてもらうのが、私たちの一番の願いです。

プロフィール
渋谷昌俊しぶやまさとしさん
  • 【出身地】愛知県尾張旭市おわりあさひし
  • 【福島の食べ物について】くだものがおいしい!
  • 【休日の過ごし方】映画を見たり、ドライブに出かけたりしています
竹口暁子たけぐちあきこさん
  • 【出身地】愛知県春日井市かすがいし
  • 【福島の食べ物について】芋煮いもにを初めて知りました!
  • 【休日の過ごし方】地元のお店の食べ歩きをしています

渋谷昌俊しぶやまさとしさん

  • 【出身地】愛知県尾張旭市おわりあさひし
  • 【福島の食べ物について】くだものがおいしい!
  • 【休日の過ごし方】映画を見たり、ドライブに出かけたりしています

2014年まで、日本ゼネラルフード株式会社の子会社の社長として愛知県で1日に2万食ほどをつくる給食センターを経営。2014年、福島復興給食センター株式会社の設立せつりつにあたって代表取締役社長として出向しゅっこう

竹口暁子たけぐちあきこさん

  • 【出身地】愛知県春日井市かすがいし
  • 【福島の食べ物について】芋煮いもにを初めて知りました!
  • 【休日の過ごし方】地元のお店の食べ歩きをしています

渋谷さんが経営していた給食センターの医療食いりょうしょく部門で栄養士として勤務きんむ。その経験けいけんを買われて、福島復興給食センター株式会社設立せつりつに合わせ福島に出向しゅっこう

つとめ先

福島復興給食センター株式会社

2014年設立せつりつ。本社は福島県いわき市。1Fで働く人に、温かくおいしい食事を提供ていきょうすることを目的として、日本ゼネラルフード株式会社、東京リビングサービス株式会社、株式会社鳥藤本店の3社の出資しゅっしによって設立せつりつされた会社です。大熊町大川原地区にある給食センターでは、2015年末現在げんざい、1日に2000食近くをつくっています。最大で1日3000食まで対応たいおうできます。

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