2016年2月12日
高取 洋介さん日立GEニュークリア・エナジー株式会社 日立事業所
原子力設計部 予防保全機器設計グループ技師
2016年2月12日
- 高取 洋介さん
- 日立GEニュークリア・エナジー株式会社 日立事業所
原子力設計部 予防保全機器設計グループ技師
1Fでの除染や廃炉を確実に推し進めるとともに、1Fで働くみなさんが安全に作業するために欠かせないのが、作業の前に行う調査です。放射線の線量が高くて人が立ち入れない場所に、遠隔操作のロボットや治具を使ってカメラや各種測定器を入れることで、はじめて現場の様子が分かり、作業の計画が立てられるようになります。
今回は、そうした機器を設計するスペシャリストである日立GEニュークリア・エナジーの高取洋介さんに、1Fでのお仕事について伺いました。
1Fではどのようなお仕事をなさっているのですか。
高取さん:
東日本大震災が起きた直後は、4号機の使用済燃料プールから使用済燃料を取り出すための調査を目的として、水中ロボットを開発しました。現在は、1号機の調査・除染のために、遠隔操作のロボットを中心に開発をしています。線量が高くて人が入れない小部屋などのエリアに、遠隔操作ロボットを送り込み、レーザー光を利用して部屋の内部を3次元的に測定したり、放射線の線量率を測って汚染源を調べたりします。
自分が設計した機器を未知の場所に送り込むことにやりがいを感じます
特にどういう点にご苦労がありますか。
高取さん:
現場に機器を運んでも、実際にうまく動くかどうか分からないのが悩ましいところです。というのも、建屋や原子炉の図面はありますが、事故前のものだからです。現在は、機械が倒れて道をふさいでいるかもしれません。現場の様子が変わっているので、以前の図面をもとにしてロボットをつくっても、現場に合わないかもしれないのです。だからといって、現場に行って調べるわけにもいきません。現場が見られない状況で機器の開発をしなければならないのが、普通の現場と1Fがもっとも違う点であり、設計に苦労するところです。
そこで、さまざまな状況を考えに入れて、臨機応変に対応できるように機器を設計することになります。ところが、そうすると今度は機械が大きくなったり、カメラで写す範囲が狭くなるという問題が起きてきます。あちらを立てればこちらが立たずというわけです。最終的に、どこでうまくすり合わせるか、には現場の人との話し合いが欠かせません。
やりがいを感じるところはどこですか。
高取さん:
事故後、誰も見ていない場所に自分のつくったロボットを初めて送り込むときでしょうか。今後の廃炉作業につながる調査作業(カメラ画像、線量率など)をできるんだと考えただけで、やる気が出ます。
調査というのは作業をするための第一歩です。何をするにも、「現場がどうなっているのか」が分からなくては計画も立てられません。やりがいのある有意義な仕事をしているなと誇らしく感じています。
入社してから原子力ひとすじ
入社当初から原子力の仕事をしていたと伺いましたが。
高取さん:
学生時代は電気が専門で超伝導の研究をしていましたが、だんだんと原子力に興味を持つようになり、入社してからは現在まで、原子炉の超音波検査装置などの研究開発を続けています。1Fにも東日本大震災の前から来ています。地震が起きる2週間ほど前まで、4号機の原子炉の下で超音波検査装置に関わる試験をしていました。
休日はどう過ごしていますか。
高取さん:
私の唯一の趣味はオートキャンプです。春から秋まで年に10回ほど、家族と車で福島、茨城、栃木のキャンプ場に出かけています。3人の子供のうち一番下が幼稚園で、そのお父さん仲間4家族と行くことが多いですね。子どもたちも喜んでいますが、それよりも大人のほうが昼間からお酒を飲んで楽しくやるのが気分転換になります。やはり、自分たちの家族だけでなく、何家族も一緒に行くのが楽しいですね。1Fの現場で学んだロープの結び方も、キャンプで大いに役に立ちました。
放射線被曝は不安ではありませんか。
高取さん:
私たちの企業は国の基準よりも線量を厳しく設定してあるので、正直なところ、日々の作業ではほとんど気にしていません。
現状では、まだまだロボットは万能とはいえませんが、研究を重ねることによって、危険な場所での作業はロボットだけでやっていけるようにして、少しずつでも作業員の方々の負担を減らしていかなくてはなりません。それが、もの作りに関わる者としての使命だと考えています。
- プロフィール
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高取洋介さん
- 【出身地】岡山県
- 【福島の食べ物について】1Fの食堂で食べた木戸川のサケがおいしかった
- 【休日の過ごし方】キャンプ(ローストチキンを作ります)
2002年に新卒で入社。当初から原子力部門に配属され、原子炉を超音波で検査する遠隔装置や超音波センサー、カメラの研究開発に携わる。機器を遠隔操作する技術は、1Fの廃炉事業でも大きく役立っている
- お勤め先
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日立GEニュークリア・エナジー株式会社
2007年に設立された原子力の専門メーカー。株式会社日立製作所と米国GE(ゼネラル・エレクトリック)社との提携によって設立。1950年代に日立製作所が始めた原子力事業の技術と経験を引き継ぎ、広く世界に事業展開することを目的としている。主な業務は、原子炉やそれに関連する製品の設計、製造、販売、保守など。1Fでは、除染・廃炉に関わる技術開発やサービスを提供している。