2016年5月1日
- 門馬 浩章さん
- 株式会社アトックス
福島復興支社 設備工事部 設備運転課 課長
- 富澤 淳也さん
- 株式会社アトックス
福島復興支社 設備工事部 設備運転課 班長
1Fの廃炉に向けて、大きな課題の一つが汚染水の処理。この課題を解決するために、放射性物質が含まれた滞留水から、放射性物質を取り除くための機械・設備がいくつも導入されています。今回は、そんな設備の運転を行っている株式会社アトックスの門馬浩章さんと富澤淳也さんに、仕事の内容や大切にしている点をうかがいました。
どのようなお仕事をしているのですか。
富澤さん:
建屋にたまった滞留水がきちんと処理されているかどうか、24時間3交代で設備をチェックしています。お聞きになったことがあると思いますが、現在は、キュリオン、サリーという設備で滞留水からセシウム、ストロンチウムを取り除き、さらにアルプスという設備でトリチウム以外の62種類の放射性物質を取り除いています。
新しい設備が次々に入るので技術のレベルを保つことが大切
当初は、不具合もよく起きたと報道されていました。
富澤さん:
今はかなり順調に進むようになりました。それでも、処理のために炭酸ソーダ、苛性ソーダ、塩酸などの薬品を入れていますので、配管が詰まりやすいのです。そんなときは警報音が鳴るので、設備をいったん止めて詰まりを解消する作業が必要になります。また、たまに設備の不調で、繰り返し異常警報が出ることもあります。そんなときは、対策をしたのちに、「さあ、今度はうまくいってほしい」と願う気持ちになりますね。異常警報が鳴らずにきちんとポンプが動き出したときは、ホッとします。
どんな点に苦労なさっていますか。
門馬さん
設備運転というのは特殊な仕事なので、経験者が少ないのです。ですから、私の立場でいえば教育が悩みの種ですね。以前とくらべて設備の数はかなり増えましたし、設備自体も改良されました。新しい設備が入れば、試運転から関わらなくてはなりませんし、設備の構造も勉強する必要があります。
また、設備が増えれば運転員も集めなくてはなりません。私が2011年5月に1Fに入ったときは、30人弱で始めましたが、今では108人になりました。そのなかには、20年以上続けているベテランもいますが、震災後に初めて運転をした人もいます。とくに、メンバーが入れ替わったときに、技術のレベルを保つのに苦労します。
富澤さん:
夜勤があるので生活時間が不規則になり、食事も不規則になってしまうのが苦労する点ですね。家に帰ったら、ご飯を食べて次の勤務に備えてすぐに寝てしまいますから、いつも運動不足で悩んでいます。
汚染水を処理する仕事は地元の人に安心を与えることにつながる
仕事で大切にしていることはありますか。
滞留水の処理は復興に向けた重要な仕事。チームメンバーとコミュニケーションを取りながら日々作業に取り組んでいる
門馬さん:
私をはじめ、社員には双葉郡出身者が多くいるので、この仕事にはやりがいを感じています。滞留水の処理というのは、地元の人に安心を与えると同時に、復興に向けた重要な仕事だと思うからです。
富澤さん:
なんといってもコミュニケーションです。一人ではすべてを完璧にこなすことはできません。私たちの仕事は1班13名で3交代なので、班内での協力体制がとれていないと設備の運転はうまくいかないのです。
操作室には設備が多くあるので、作業員は分かれて配置されています。そこで、私自身に余裕があるときは、あちこちに顔を出してなるべく会話を交わすようにしています。自分の経験をもとにして、「この設備はこういうクセがあるので注意するように」と指示することもあります。
職場はどんな雰囲気ですか。
富澤さん:
班のなかには私より年上の人がいますが、優しい人たちばかりです。もちろん、仕事中は緊張感をもって集中していますが、仕事場から離れれば、みんな和気あいあいとやっています。
門馬さん:
みなさん穏やかですが、強い意志を持っていることは感じられますね。年齢層は平均40歳くらいでしょうか。仕事が終わると、班単位ではもちろん、会社内でもよく飲みに行っています。少しお酒が入ると、普段は聞けないことも聞けるので、コミュニケーションを図るのに役立ちます。おとなしい人が多いので、酔って言い合いになることもないので上司としては気が楽です。
休みの日はどう過ごしていますか。
富澤さん:
震災前は地元のバスケットボールクラブに入っていましたが、今は仕事が忙しいので休日は家でのんびりすることが多いですね。3交代制なので、休みになる曜日が不規則なのですが、土日が休みになったときは、子どもたちと泊まりがけで出かけることもあります。7歳と1歳の子がいて、下の子はアンパンマンが大好き。このあいだは、仙台市内にあるアンパンマンこどもミュージアムに行ってきました。家族と過ごすとリフレッシュできます。
門馬さん:
私はもう子どもが大きくなったので、休日は妻に付き合っていわき市内で買い物をすることくらいでしょうか。仲のいい友人夫婦3組ほどで遠出をすることもあります。先日は、新潟県まで日帰り温泉に出かけたり、山形県でさくらんぼ狩りをしたりして楽しんできました。
- プロフィール
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門馬 浩章さん
- 【出身地】福島県双葉郡広野町
- 【好物】福島の果物
- 【趣味】友人夫婦との旅行
- 【出身地】福島県双葉郡双葉町
- 【好物】焼き肉
- 【趣味】スニーカー集め
門馬 浩章さん
- 【出身地】福島県双葉郡広野町
- 【好物】福島の果物
- 【趣味】友人夫婦との旅行
門馬さんは1981年入社。門馬さんが1Fに入ったのは震災後すぐの2011年5月中旬。現在は、1Fで働く108名の健康や作業内容を管理するのが主な仕事。ふだんは、広野町内(自宅)から常磐線広野駅前にある事務所に通っている
富澤 淳也さん
- 【出身地】福島県双葉郡双葉町
- 【好物】焼き肉
- 【趣味】スニーカー集め
富澤さんは2000年入社。震災前から2Fの定期検査の業務をしており、タービンの設備を分解したあとの洗浄・除染現場の管理を担当していた。現在は13名を束ねる班長として、汚染水処理の前線で活躍している
- お勤め先
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株式会社アトックス
1980年、アトックスの前身である株式会社ビル代行から原子力部門が分離され、株式会社原子力代行が設立。1993年、社名が株式会社アトックスに変わる。原子力発電所のメンテナンスや放射性物質に関わる業務を行っている。震災後は、1Fで滞留水処理装置の運転、放射線管理業務のほか、周辺地域の除染にも取り組んでいる。