2025年6月10日
Vol.2 電気設備保守の現場
福島第一原子力発電所では、一日に数千人の作業員による数百件におよぶ作業が日々行われています。廃炉作業の最前線をシリーズで紹介していきます。


福島第一原子力発電所
建設・運用・保守センター 電気・計装部
電気設備保守グループ
遠藤 将弘
- 仕事概要
- 電気設備の保守管理および電源車の運用・保守管理を担当しています。主な業務内容は、電源盤・電動機・変圧器などの点検・取替を計画的に実施することです。設備の不具合を未然に防ぐことで、廃炉作業を支えています。メンバーそれぞれがリスクの抽出や災害事例から学び、主体的に業務に取り組む姿勢を重視しています。
多種多様な電動機を掌握し、不具合を未然に防ぐ――
設備の安定稼働で廃炉の地盤を支える。
福島第一原子力発電所には2,000台以上の電動機が設置されており、容量や電圧、設置場所も様々なので、それぞれに応じた点検が求められます。定期的な保守のほか、不具合の兆候があれば随時対応しています。
分解点検を行う際、据え付けられた場所では作業が難しいことが多く、通常は電動機が据え付けられている箇所から取り外し、点検エリアへの移動が必要となります。電動機には数トンに及ぶものもあり、通常は重機を用いて慎重に移動させます。しかし、設置環境によっては重機の使用が難しい場合もあり、その際は簡易的なクレーンなど、オリジナルの治具を自作して対応します。
また、他部署と作業エリアが重なることもあるため、関係者との調整を行いながら、動線確保や監視員の配置など、臨機応変な対応が求められます。前日と同じ作業環境であるとは限らないため、毎回「その日の現場」をしっかりと確認し、思い込みを排除して作業に臨むことが重要です。現場では、関係者それぞれの視点で得た気づきを迅速に共有し、現場全体での安全意識を高めています。変化があれば即座に共有し、「認識していなかった」という事態を防ぐことが災害防止に直結します。些細な違和感でも見逃さず、一度立ち止まって確認することが大切です。


各人がリスクを自分事として捉え、確認を行う。

電気設備の点検において、最も注意すべきなのが「感電災害」です。万が一発生すれば命にかかわる重大な事故につながるため、細心の注意を払って作業にあたっています。特に電源盤の点検では、見た目が非常に似た装置が複数並んで設置されている場合があり、誤って通電中のものに触れてしまうリスクがあります。そのため、点検対象の確認を徹底するとともに、他の回路から電気が流れ込まないように、操作禁止の表示や接地処理などの物理的な安全対策を必ず行います。
作業をする前に電源を停止させることは当然ですが、最終的な歯止めとなるのは、作業をする本人の確認です。「人がやったから大丈夫」と信用するのではなく、「自分が確認したから大丈夫」と言える状態をつくることが、安全確保の基本です。そのため作業に関わる全員に、確認を怠らず、違和感があれば一度立ち止まるよう日頃から指導しています。いかなる状況でも、最終的な安全確認を行うのは現場で作業する本人であり、その行為こそが最後の「安全のストッパー」になります。
電源設備の停止や不具合の発生は、廃炉作業全体の進捗に大きな影響を与えます。そのため、日々の点検を通じて異常の兆候を見逃さず、次回の点検まで安全に運用できるようにすることが私たちの責務です。廃炉の前進に一歩でもつながるように、これからも取り組んでいきたいと思います。
電動機の分解・点検作業について

福島第一原子力発電所
建設・運用・保守センター
電気・計装部 電気設備保守グループ
折笠 正宜
この日の作業のポイント
共用プール建屋3階をパトロール中に、空調用電動機(モーター)の運転音がいつもと違うことに気づきました。電動機が約430kgあり、重量物作業となりますので、取外/取付作業時は特に注意してます。電動機を吊る直前、作業エリアへ着床する際は人の挟まれ災害が発生しやすいので、作業する方が災害に遭わないよう作業手順/安全対策の確認をしています。今後は定期的な電動機の分解点検を実施します。小さな異常でも発見できるよう知識向上や工事監理に努めていきたいと思います。



グリス切れの場合、内部の摩擦が大きくなりベアリング寿命が短くなってしまう可能性がある
この日の作業に参加したメンバー
- 今回の作業において安全面で気をつけていたことは?
- 電動機の取外し・取付け時は吊り作業となるので、事前に現物を前にして作業手順・役割分担・作業ストップ時の声掛け等を作業員全員で周知・確認し合い、手の挟まれや機器の損傷防止を行っています。
- 東京電力とはどのような打合せを行っていますか?
- 現場総点検を行い、あらかじめ作業環境を確認し、危険箇所を洗い出したうえで点検エリアを設定しています。また、分解・手入れ・組立て時に想定外の事象が発生した場合の対応策を、東京電力の工事監理員と事前に取り決め確認してから作業を開始しています。
