2025年8月12日
Vol.3 水処理計装設備保守の現場
福島第一原子力発電所では、一日に数千人の作業員による数百件におよぶ作業が日々行われています。廃炉作業の最前線をシリーズで紹介していきます。


福島第一原子力発電所
建設・運用・保守センター
電気・計装部水処理計装設備グループ
笠間 賢治
- 仕事概要
- 多核種除去設備(ALPS)やサブドレン設備(地下水くみ上げ井戸)など、様々な水処理設備に関わる計装設備の保守を担当しています。主に水位計などの計装品を扱いますが、監視・制御するために欠かせない機器であり、その数は非常に多く、管理する範囲も膨大です。点検頻度や設置環境も設備ごとに異なるため、現場では常に臨機応変な対応が求められます。これらの計装品の健全性を保つことは、汚染水処理をはじめとした重要な設備の安定運用を支える基盤であり、廃炉を進める上でも欠かせない役割です。

人の意思を設備に、設備の声を人に届ける仕組みを構築し、維持し続ける。
安定的な水処理を支える、計装設備のプロフェッショナルチーム。
設備に異常が発生した際には、関連部署と連携しながら、状況に応じた調査を迅速に進めることが私の役割です。計装設備の故障などが起きた場合でも冷静で的確な初動により他への波及を防ぐことが大切になるため、常に状況判断への備えを意識しています。
水処理計装設備グループは汚染水対策の3つの基本方針「汚染源に水を近づけない」「汚染水を漏らさない」「汚染源を取り除く」に沿って、計装設備の点検・保守を4つのチームで担っています。「移送チーム」は、「汚染源に水を近づけない」「汚染水を漏らさない」ことを目的としたサブドレンや陸側遮水壁などの設備を扱っています。「浄化チーム」は、ALPSなどを担当し、「汚染源を取り除く」ために用いられる薬品の注入量を管理するpH計などの点検・保守を行っています。その他、「タンクチーム」は、約1,000基あるALPS処理水等貯留タンクの水位計や、希釈・放出設備の制御装置を管理し、処理水の管理を支えています。「廃棄物チーム」は、焼却炉、大型保管庫などの廃棄物処理設備を担当しています。このように作業現場は広範囲にわたり、高所や暗所、酸素濃度の確認が必要なエリアも多いため、作業前には必ず、作業責任者とともにリスクを共有したうえで安全対策を検討しています。図面や事前情報だけでは把握しきれないこともあるため、実際に現場に足を運んで状況を直接確認することが重要です。特に作業員とは「face to face」のコミュニケーションを大切にし、作業後にも改善点を気軽に言い合える関係づくりを心がけています。

作業担当者とともにリスクを減らすための対策を講じている
水処理設備の遠隔監視を現場から支え続ける、計装の使命。
当直員は、免震棟にある遠隔監視システムにより各設備の運転状況を把握していますが、その基盤となるのが、各所に設置された15,000台以上の計装品です。ポンプの運転状態やバルブの開閉状態、水位、流量、圧力など多様な項目を常時監視する大変重要な設備ですので、定期点検はもちろん、設備を二重化して1系統が故障しても監視が継続できるような対策を講じています。
ALPSにおけるpH計の管理は、特に重要な業務のひとつです。この設備は、汚染水から放射性物質を除去するために薬品を注入して処理を行うもので、pH計は薬品の量が適切な量であることを確認するための非常に重要な役割を担っています。pHの値が適切でないと放射性物質除去に影響を与えてしまう恐れがあるため、2ヶ月に1回の頻度で点検を行い、計装品の健全性を確認しています。
今後、廃炉を進める中で、さらに多数の設備・計装品を設置していくことになります。計装品の故障が設備の停止につながるため、廃炉への進捗に影響を与えないよう「計装品なくして、廃炉なし」を胸に刻み、「設備の構成に問題はないか」「どこかに脆弱性はないか」と、現状に満足することなくリスク低減に取り組み続けることで、今日より明日、今年より来年と、一歩一歩、確実に廃炉作業を進めていきたいと思います。
ALPSのpH校正の現場

手にしているのは、センサー部の先端へ注入する内部液で、測定中は徐々に減少するため、定期的な補充が必要となっています。元々は海外から輸入していて、コストや納期に課題がありましたが、国内メーカー製を使用できるようカイゼンを行いコストや納期の課題を解消しました。
福島第一原子力発電所
建設・運用・保守センター
電気・計装部水処理計装設備グループ
高原 彪
この作業のポイント
熱中症対策のため、全身を覆うアノラック(防水カッパ)について装備特例申請により、前掛けタイプの防水装備としています。
また、作業エリアが狭隘部、段差が多数ある為、周囲状況の確認、ヘッドライトでの照度の確保に配慮して作業しています。
この作業の実施メンバー






センサーのメンテナンスを行い、センサーを測定場所へ戻して、バルブを開放し作業完了
滞留水移送装置の点検の現場

福島第一原子力発電所
建設・運用・保守センター
電気・計装部水処理計装設備グループ
竹島 大智
この作業のポイント
建屋滞留水移送装置は汚染された滞留水の建屋外漏えいを防止するために、常に建屋水位の監視が要求されています。そのため計器電源を二重化するなど、1系統が故障しても残る1系統で計器の動作が継続出来るようにしていますが、経年劣化を考慮し、万全を期するため定期的に交換を行っています。
この作業の実施メンバー

制御システムの電源ユニットの交換作業

さらに、養生して事故を防止する
