はいろみちTOPICS 廃炉の現場

2025年10月10日

Vol.4 固体廃棄物貯蔵庫の現場

福島第一原子力発電所では、一日に数千人の作業員による数百件におよぶ作業が日々行われています。廃炉作業の最前線をシリーズで紹介していきます。

廃炉の現場Vol.1 溶接型タンクの解体

固体廃棄物貯蔵庫第10棟は10-A棟からC棟まであります。当面10年間程度の固体廃棄物の発生予測を踏まえ、遮へい、飛散抑制機能を備えた設備となっています。

福島第一原子力発電所

廃棄物対策プログラム部

廃棄物保管・高度化プロジェクトグループ

込山こみやま 有人すみと

仕事概要
廃炉作業の中で発生する放射性固体廃棄物等を、限られた敷地の中で安全に、安定的に保管していくことが私たちの役割です。主に、ガレキ類を詰めたコンテナを放射線量に応じて固体廃棄物貯蔵庫内に段積みしています。最上段にはコンクリート製の遮へい蓋を設置し、放射線の影響をできる限り敷地外に及ぼさないようにしています。

廃炉を進めるため、積み上げるのは安全と信頼。固体廃棄物と向き合う、現場の力。

線量の高い廃棄物の入ったコンテナは内側、低いコンテナは外側に積む

固体廃棄物の保管作業は高所での作業になるので、人身災害を起こさないため、重機の動線を調整して、人が不用意に近づかないように安全確保を徹底しています。特にコンクリート製の遮へい蓋は1枚で50センチの厚みがあるため、作業計画の段階から人が近づかないよう配慮し、現場でも区画を設けるなどの対策を講じています。廃棄物を積む際には線量の高いものを中央に配置して、その周りを低いもので囲うように配置していきます。これにより遮へい効果を高めています。後半になると高線量・低線量のバランスが崩れ、計画通りに配置するのが難しくなりますが、事前に調整を重ねることで、安全に積み上げることができています。

クレーン上部にはカメラがあるが、それでも見えない高所への積み込みは難易度の高い作業
クレーン上部にはカメラがあるが、それでも見えない高所への積み込みは難易度の高い作業

現場は一見変わらない作業の連続に見えますが、実際には小さな工夫や気づきの積み重ねが欠かせません。現場に足を運び、作業員の声を直接聞くことで、気づいたことや、改善案などの意見を共有し、安全で確実な作業につなげています。開始当初は1基あたり560秒かかっていたコンテナ積み上げ作業は、ツイストロックの取り付け方法や重機でのコンテナ受け渡しを見直すことで175秒にまで短縮できました。時間の短縮は効率化だけでなく、作業員が重機に近づく場面を減らし、安全性の向上にもつながっています。

立場を超えた声を重ね、その先への歩みにつなぐ。

廃棄物保管・高度化プロジェクトグループでは、人数が多いため、共通認識を持ちコミュニケーションの充実を図れるよう、週に1回ミーティングを開いています。ここでは年齢や立場に関係なく何でも言い合える場にしていて、現場で困っていることや改善の提案を気軽に出せるようにしています。実際に出た意見をその場で検討し改善していくことで、安全や効率の向上にも役立っています。

廃炉の作業が進む中で廃棄物は必ず発生するため、効率よく収納し続ける工夫が欠かせません。廃棄物管理は決して目立つ仕事ではありません。しかし、この部門が止まってしまえば、廃炉作業全体も前に進めなくなります。いわば縁の下の力持ちのような存在であり、その地道な作業の積み重ねこそが廃炉を支えています。屋外にあるガレキを屋内に移すことで、放射線の影響を減らし、地域の方々の安心につなげたいと思っています。そして仲間と知恵を出し合いながら、安全で安定した保管を続け、確実に廃炉の歩みを前に進めていきたいと思います。

10-C棟でのコンテナ積み上げ

福島第一原子力発電所

廃棄物対策プログラム部

廃棄物保管・高度化プロジェクトグループ

刑部おさかべ 康介こうすけ

コンテナ組み上げ時、つなぎ目のパーツの取り付け方や重機での受け渡し方を工夫することで、当初560秒かかっていた作業を175秒まで短縮。カイゼンすることができました。

福島第一原子力発電所

廃棄物対策プログラム部

廃棄物保管・高度化プロジェクトグループ

西山にしやま 千晴ちはる

この作業の内容

発電所敷地外への放射線の影響をより一層低減させるため、現在屋外に保管されているガレキ類を屋内(固体廃棄物貯蔵庫第10棟)に保管する作業です。

【ツイストロック】とは
コンテナの四隅にある回転式固定装置のこと。金具に差し込んで、レバー操作などで回転させてロックする、コンテナ積み上げ時には不可欠な仕組み。

この作業の実施メンバー

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