2026年2月10日
Vol.6 3号機局所止水対策の現場(建屋間ギャップ端部止水)
福島第一原子力発電所では、一日に数千人の作業員による数百件におよぶ作業が日々行われています。廃炉作業の最前線をシリーズで紹介していきます。
福島第一原子力発電所
汚染水対策プログラム部 汚染水抑制PJグループ
兼 汚染把握・流出抑制グループ
岡部 幸司
- 仕事概要
- 私は、汚染水の発生量を抑えるプロジェクトを担当しています。汚染水対策というとALPSなどの処理設備のイメージが強いですが、私たちの役割は汚染水を増やさないことにあります。地下水や雨水が建屋内へ流れ込むことで新たな汚染水が増えるため、その流入を抑えることが重要です。現在、凍土壁やサブドレンなどの対策に加え、重点的に取り組んでいるのが「建屋間ギャップ端部止水対策」です。
地道な削孔の先へ――
幾多の壁を乗り越えて到達する、高精度の止水ミッション
建屋と建屋の間には隙間があり「建屋間ギャップ」と言いますが、そこにある配管貫通部などから雨水や地下水が流入している可能性があります。ギャップ止水対策は、この端部に建屋屋上から削孔ボーリングし、モルタルとゴム系素材などの止水材を充填して地下水の浸入を防ぐ工事です。建屋内部は今も放射線量が非常に高く人が入れない場所のため、外側から施工します。直接止水できない中で効果を出すため、非常に難易度の高い作業になります。この作業は、2021年から構外で模擬環境を使った試験を行いました。そこで得た知見から仮止水が必要なことがわかり、これにより基本的な削孔配置を決定しました。まずは、放射線量が低いエリアの5・6号機で実際と同じ規模で試験を行い、さらに防護服を着けた環境でも問題ないかを4号機の一部で確認し、そうした積み重ねを経て、3号機の作業に入りました。3号機は建屋流入量が最も多く、2024年度の実績では1日で発生する約60m³の汚染水のうち、約30m³を占めています。ギャップ止水を6か所中4か所終えた段階で、約10m³の削減効果が確認できており、ギャップ部が主要な流入経路であるのだろうと想定しています。
削孔は1か所あたり30~40m掘り進めるにあたり、100分の1程度の施工精度が必要で、最終到達点で30cmほどのずれに抑えなければ配管などに干渉してしまいます。さらに、コンクリートのような硬い部分と、発泡ポリエチレンのような柔らかい材料が混在しているため、先端部の削孔ビットは柔らかい方向に流れやすくなります。常にズレの方向を確認しながらの作業が必要で、熟練した技術が求められます。また、汚染水の発生を減らすことが目的なので、水を使った冷却ができず先端のビット部材の摩耗も激しく、これまでに施工精度が確保できるようビットの開発を行いながら、工事を進めてきました。施工期間は1か所あたり1~2か月、難しい場所によっては3か月以上かかることもあります。まず1m掘進して精度を確認し、次ステップは数mでも問題ないかを確認しながら進むという工程を、施工会社と相談しながら慎重に進めています。
声の重なりを礎に全員で成し遂げる目標達成
この作業には、現場管理、プロジェクトチーム、作業員という三者が関わります。認識のずれがあれば品質に直結しますので、多分こうだろうではなく、お互いが理解できていることを確認し続けることを大切にしています。積極的に声をかけることで、今では現場の方から相談や提案をもらえる関係になりました。後戻りのない施工を進めるためにも、 互いの認識を一つひとつ擦り合わせる対話の積み重ねが、揺るぎない品質を実現するための礎になります。
ギャップ止水により、3号機の建屋流入量は約30m³/日から半減以下になると想定しています。これは、2028年度に汚染水発生量を50~70m³/日まで抑制する次の目標達成に大きく寄与します。地道で時間のかかる仕事ですが、数字として成果が現れ、廃炉の前進を実感できる仕事です。現場の皆さんとともに、確実に一歩ずつ進めていきたいと思います。
3号機原子炉建屋と廃棄物処理建屋間のギャップを上部から掘り進める現場
狭い箇所での施工が多いので、工具・ロッド等の取り扱いには細心の注意を払って作業をすすめています。
福島第一原子力発電所
建設・運用・保守センター
土木部土木水対策設備グループ
小原 崇彰
この作業のポイント
今回の現場は、異なる高さの建屋間の隙間に対応するため、足場を組んでその最上部に掘削機を設置しています。
また、建屋間の既設配管等を避けるため斜めに掘り進め無ければいけないのも、今回の作業の重要なポイントです。
さらに、建屋間に施工されている柔らかい発泡ポリエチレンと硬い建屋壁面のコンクリートが混在しており、目的のルートで真っ直ぐ掘るには、高い技術力や経験が必要です。
- 建屋間ギャップとは
- 原子炉建屋周辺の建屋同士を隣接して建設する際に生じる外壁間の50~100㎜の隙間の事。先行建屋外壁に発泡ポリエチレンが設置されており、地下水が地盤側から建屋間ギャップに浸入すると配管等貫通部から建屋内に地下水が流入する可能性が考えられる。