1 FOR ALL JAPAN 廃炉のいま、あした

1Fを守る仲間たち

小林 誠

2016年9月6日

INTERVIEW 16 全世界が注目していると思うと誇らしく感じながら仕事をしています

小林 誠 小林こばやし まことさん
有限会社飯島組
建設部長

 作業用の足場を組んだり、ガレキを取りのぞいたりと、えんの下の力持ちとしての役割やくわりになっている今回紹介しょうかいする飯島組は、大手総合建設会社の清水建設を中心に、共同企業体きぎょうたい(ジョイント・ベンチャー)の主力協力企業として、工事を進めています。現場で指揮しきをする建設部長の小林誠さんにお話をうかがいました。

どのような仕事をしているのですか。
小林 誠

 わたしが1Fに来たのは2013年11月で、工事の前にまずは、大型車両が入れるように道路に鉄板をいたり、クレーンを組み立てたりする作業をしました。

 現在は、1号機の原子炉げんしろ建屋で燃料取り出しに向けての準備作業をしています。ダスト飛散を防止する薬剤やくざいの散布作業が一段落いちだんらくしたので、これからは遠隔操作えんかくそうさの機械を使って小さなガレキをい取ったり、カッターで取りのぞいたりする作業が中心になります。

1Fの前はどちらにいらっしゃいましたか。

 18さいで入社してから今まで原子力発電所で仕事をしてきました。柏崎かしわざき、六ヶ所、東通、志賀、大間と、すべて清水建設さんとの共同企業体きぎょうたいでの仕事です。飯島組の本社は新潟にいがた市にあるのですが、ほとんどの社員はわたしのように県外に出て長期の出張をしています。

短時間で作業を終わらせられるよう徹底てってい的に練習をする

1Fは、他の現場とどこが大きくちがいますか。
小林 誠

 30年近く原子力発電所の仕事をしてきましたが、当然のことながら、廃炉はいろに向けての作業は初めてなので緊張きんちょう感はあります。また、作業員をとりまとめる立場の人間として、放射線ほうしゃせん量の管理や熱中症ねっちゅうしょう対策たいさくにも気を使わなくてはなりません。一つひとつが未体験のことばかりですが、全世界が注目していると思うと、ほこらしく感じながら仕事をしています。

社員はどういう方が中心になっていますか。

 現在、わたしふくめて飯島組は20人が1Fに入っています。2年前に、広野町との境に近い、いわき市末続すえつぐに地元業者経営の宿舎ができましたので、JVの職員の方々と一緒いっしょに全員がそこで寝泊ねとまりしています。ほとんどは、わたしと同じく40代から50代。1Fでの作業に向けて、経験豊かなベテランを集めた結果、このような年代の人が多くなりました。

 職人気質で仕事にプライドを持っている人ばかりですが、1Fでの作業は力を合わせなければやりげられない仕事だということはだれしも分かっています。他の現場以上にコミュニケーションをとって、うまくやっていると思います。

仕事をうまくこなすための工夫を教えてください。

 高線量区域くいきでの作業ですので、短時間で作業を終わらせなくてはなりません。安全に効率的に作業を進めるには、何よりも、しっかり事前の訓練をすることに限ります。

 取りあつかいのむずかしい機械になると、作業の手順や方法を確実に身につけるために、1カ月間訓練することもあります。例えば、小さいガレキを遠隔操作えんかくそうさで取りのぞく機械は、取り付けられた約10台のカメラの映像えいぞうを見ながらカッターを操作そうさするのですが、これが一番むずかしかったですね。「これならもう本番でも大丈夫だいじょうぶ」と思えるまでり返し練習をするのが大切です。

 本番では、40ミリほどの厚い鉄板でおおわれた大型車の中で遠隔操作えんかくそうさするのですが、その車内でもなるべく線量を低くおさえるために、さらに鉄板をくといった工夫もしています。

頑張がんばらなくちゃいけないよな」と口に出せるのが1Fの雰囲気ふんいき

他の会社の人たちとも交流があるのですか。
小林 誠

 同じ共同企業体きぎょうたいに参加している会社は、みな同じ宿舎で寝泊ねとまりしていて、ご飯もお風呂ふろ一緒いっしょ。みんな顔なじみで、コミュニケーションが取りやすいという利点があります。「何十年もかかる仕事だけど、日本だけでなく世界から注目されているから、頑張がんばらなくちゃいけないよな!」ということも、よく話しています。他の現場では気恥きはずかしくて、そうしたことはなかなか言えませんが、1Fでは自然に口から出てくるのが不思議です。

 3カ月に1回は、共同企業体きぎょうたいの人が集まるバーベキュー大会が開かれ、みんな和気あいあいでいい雰囲気ふんいき。次の仕事への元気が出てきますね。

ご家族はどちらにお住まいですか。

 新潟県長岡市にいがたけんながおかしに、妻と2人の子どもが住んでいます。自宅じたくに帰るのは年に3回、年末年始、5月の大型連休、おぼんのときくらいです。車だと3時間ほどで帰れるのですが、わたし緊急対策きんきゅうたいさく担当たんとうをしているので、なるべくいわき市内にいるようにしています。

仕事が終わってから、あるいは休日はどんなことをしていますか。

 平日はほとんど宿舎でのんびりしています。健康のために宿舎近くでウォーキングをしている人もいますが、わたしはテレビを見るくらいですね。宿舎からいわき市内までは30分以上かかるので、出るのはどうしても億劫おっくうになります。朝が早い仕事なので、宿舎で夕食をとったら、好きな芋焼酎いもじょうちゅうのウーロン茶割ちゃわりを飲んで、午後8時にるというのが日課です。

 休日は日曜日と第4土曜日です。連休になるときは、土曜日の朝から会社の仲間3、4人で、いわき市南部にある温泉おんせんや小名浜のいわき健康センターに、よくまりがけで出かけます。お酒を飲んで、みんなであれこれ語り合い、お湯につかって仕事のつかれをいやしています。

プロフィール
小林こばやし まことさん
  • 【出身地】新潟県長岡市にいがたけんながおかし
  • 【好物】芋焼酎いもじょうちゅう(黒霧島くろきりしま)、めん類
  • 趣味しゅみ温泉おんせん
小林 誠

1989年入社。おくさんと2人のお子さんは新潟県長岡市にいがたけんながおかしにお住まい。「雪が多い地域なので、年末年始に帰ってくつろごうと思っても、まず雪降ろしを手伝わされるので大変」と笑って語る。

つとめ先

有限会社飯島組

新潟市にいがたしに本社を置く建設関連企業きぎょう。社員には、建物をつくるときの足場の組み立てや解体をはじめ、高い所での作業をするとび職などの専門家せんもんかがそろっている。社内のほとんどの人は日本各地に出張して、大手ゼネコンの主力協力企業きぎょうとして大規模だいきぼな工事にたずさわっている

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