2016年10月5日
- 米川 智之さん
- 東京パワーテクノロジー株式会社 原子力事業部 福島原子力事業所
環境化学部 環境化学第二グループマネージャー
- 安松 拓洋さん
- 東京パワーテクノロジー株式会社 原子力事業部 福島原子力事業所
環境化学部 環境化学第三グループマネージャー
- 柏谷 利浩さん
- 東京パワーテクノロジー株式会社 原子力事業部
福島原子力事業所 環境化学部長
- 池田 幹彦さん
- 東京パワーテクノロジー株式会社 原子力事業部
福島原子力事業所 環境化学部 環境化学第二グループ 副長
1Fの廃炉作業を安全に進めるため、欠かせないのが、放射性物質や化学物質の測定です。今回紹介する東京パワーテクノロジーの環境化学部では、国内外の皆様に今の状況を正しくお伝えし、安心していただけるよう、日々正確なデータを公表するための化学分析や放射能測定をしています。今年の6月、同社はISO/IEC 17025:2005という国際的な規格に適合した試験所として認められました。そこで、その規格はどういうものなのか、そして分析はどのようにして行うのか、お話をうかがいました。
環境化学部では、どういう仕事をなさっているのですか。
柏谷さん:
1Fの構内で化学分析や放射能測定などを行っています。構内に分析施設が3カ所あり、放射性物質濃度の高い試料は5、6号機のサービス建屋で、中レベルの試料は環境管理棟で、低い試料は化学分析棟で分析しています。
もちろん、どの分析も大切なのですが、低レベルの試料の分析は、雨水や排水、海水を対象にしている場合が多く、その結果が報道されることも多く社会的にも注目されていると強く感じています。
公正で正確な測定ができるよう強固なセキュリティーでデータを管理
ISO/IEC 17025:2005はどういう規格ですか。
柏谷さん:
国際的に権威のある機関が認めるもので、この規格の認定を受けた組織や試験所は、厳正な品質管理ができ、信頼できる試験結果を生み出す技術力があると国際的に認められるというものです。私たちは、3年前の2013年度から準備を進め、今年の6月13日付で認定されました。
大切な規格なんですね。
安松さん:
当社では、高性能で最新の機器を使用しており、経験豊富な“名人”も多く、以前から精度の高い測定が行われてきたと自負しています。
しかし、震災後、放射能の値は世の中から注目され、測定結果はネットを通じて世界中に配信されるようになりました。そこで、「公表した値はどこまで正確なのか」「測定した人や装置によって差はないのか」ということが問われるようになったのです。そこで、この規格を取得することによって、私たちの分析が公正で正確であることを、第三者の目で判断してもらおうと考えたのです。
米川さん:
ISO/IEC 17025:2005の規格に適合するには、外部からのどのような圧力に対しても測定結果を守らなくてはなりません。そこで、データを外から変えられたり、のぞき見されたりしないよう、独自のパスワードを設定し、強固なセキュリティーでデータ管理をしています。
柏谷さん:
この規格の認定を受けるために全部で16のマニュアルを新たに制定しました。仕事の方法がすべて細かく定められています。それに従うのは大変ですが、そのマニュアルを守ることで作業の流れが整理されるようになりました。結果的に、さらに正確で公正なデータが公表できるようになり、非常に役立っています。
公開された分析データを見て世の中に役立っていると実感
お話を聞いていると、チームワークのよさを感じます。
柏谷さん:
規格の認定を受けるために、私が全体の責任者となり、米川は実際の仕事の内容を審査、安松は部内の品質管理を担当しました。新潟原子力事業所から応援者に来てもらったり、事業所の品質管理部門や環境事業部からも協力をしてもらいました。そして、池田をはじめとする20数名のスタッフが、データに間違いがないか繰り返し確認したりと、それぞれ役割を分担しました。チームが総力を挙げて取り組んだ結果、認定機関からのお墨付きを受けることができました。
米川さん:
分析試料を採取する人、私たち分析員、データをまとめる人、最終確認をする人など、さまざまな人の手を経て正確なデータが世の中に出て行きます。一つひとつの作業は小さいものですが、「私たちだからこそできる」という意識は強くもっています。
仕事のやりがいはどんな時に感じますか?
池田さん:
自分たちが分析したデータを一般の方に直接見てもらうということはなかなかありませんが、1Fではメディアを通じて日々データが公開されています。そのため、ミスが一つも許されないという緊張感がある一方で、自分の分析したデータが紹介されるのを見ると、地元の方々や広く日本全体のために役に立っているんだなと思い、この仕事をやってよかったと感じます。
安松さん:
正直なところ、私たちの分析という仕事は、震災まではプラント運転の縁の下の力持ち的な存在で、それほど注目されていませんでした。しかし、廃炉作業においては、汚染水対策でも燃料取り出し作業でも、放射能分析は欠かせない技術になっています。まさに、世の中のためになるやりがいのある仕事だと思っています。
ご家族は、仕事に対して何か言ってらっしゃいますか。
池田さん:
私が携わっている放射能分析の仕事は、1年365日対応しなければなりません。そのために、休日が家族と合わない場合が多く、不便をかけています。でも、そんな私の仕事を理解してくれていて、本当に感謝しています。「いつもありがとう」と言いたいですね。
廃炉作業に注目している福島や全国のみなさんへ、ひと言お願いします。
チーム力を結集して困難を乗り越え、厳しい規格の認定を受けることができました
柏谷さん:
当社の社員のうち、福島の1Fと2Fで512名が働いており、その約9割が福島県在住者です。地元の住民が中心となって、社会に貢献できるよう努力しています。
また、分析の仕事は、24時間体制で行っています。安心できる正確な分析データをみなさんのもとへ届けられるよう、お盆も正月も業務を休まずに頑張っています。そんな仕事をしている人もいるんだなと、頭の片隅に入れていただければ幸いです。
- プロフィール
-
柏谷 利浩さん
新潟県柏崎市出身。入社直後は1Fに勤務しており、2年前に久しぶりに1Fに戻ってきた。趣味はロードバイク。食べ物はなんでも好き
米川 智之さん福島県南相馬市出身。入社当初から18年間、1Fで化学分析の仕事に従事。趣味はジェットスキー。肉も魚もお酒も好きで、好き嫌いは特になし
安松 拓洋さん京都府京都市出身。2年前から1Fで勤務。週末は東京の自宅に帰って、愛犬(ボストンテリア)と遊んだり熱帯魚の世話をするのが楽しみ。焼き鶏とビールがあれば言うことなし
池田 幹彦さん福島県双葉郡広野町出身。4年前から1Fで分析の仕事に従事。休日は、社会人サッカーのいわきFCの試合を見に行くのが楽しみ。お酒はいつも麦焼酎の水割り
柏谷 利浩さん
新潟県柏崎市出身。入社直後は1Fに勤務しており、2年前に久しぶりに1Fに戻ってきた。趣味はロードバイク。食べ物はなんでも好き
米川 智之さん
福島県南相馬市出身。入社当初から18年間、1Fで化学分析の仕事に従事。趣味はジェットスキー。肉も魚もお酒も好きで、好き嫌いは特になし
安松 拓洋さん
京都府京都市出身。2年前から1Fで勤務。週末は東京の自宅に帰って、愛犬(ボストンテリア)と遊んだり熱帯魚の世話をするのが楽しみ。焼き鶏とビールがあれば言うことなし
池田 幹彦さん
福島県双葉郡広野町出身。4年前から1Fで分析の仕事に従事。休日は、社会人サッカーのいわきFCの試合を見に行くのが楽しみ。お酒はいつも麦焼酎の水割り
- お勤め先
-
東京パワーテクノロジー株式会社
発電に関連する設備の工事、運転、メンテナンス、化学分析などを主な業務として、震災後の1Fにおいては原子炉の安定化工事も行っている。尾瀬林業株式会社(1951年発足)、東電工業株式会社(1954年発足)、東電環境エンジニアリング株式会社(1955年発足)の3社を統合して、2013年に発足した。