1 FOR ALL JAPAN 廃炉のいま、あした

1Fを守る仲間たち

佐々木勝治

2016年11月9日

INTERVIEW 18 一つひとつの作業を終えるたび仲間と喜びを分かち合います

佐々木勝治 佐々木ささき 勝治かつじさん
株式会社日立プラントコンストラクション
原子力プラントサービス部
技師

 廃炉はいろ作業を進めるうえで欠かせないのが、放射線ほうしゃせん量の高い場所が今どうなっているかを調べること。そのためには、遠隔操作えんかくそうさロボットや調査装置そうちを使います。ロボットや装置を動かすのは人間の仕事です。そんなむずかしい作業をこなしているのが、今回紹介する佐々木勝治さんとそのチームです。

どのような仕事をされているのですか。
佐々木勝治

 震災しんさい前まで、日本各地の原子力発電所で定期点検業務をしていました。震災しんさい発生後は、しばらく2Fで復旧作業をしていましたが、2012年12月から1Fの廃炉はいろ作業チームに合流することになったのです。

 1Fで最初に行った仕事は、1号機原子炉げんしろ建屋のゆかあなを開け、トーラス室とばれる地下室にまった水の放射線ほうしゃせん量、水温、水質を調べることでした。

 その後、1号機と2号機において、ロボットが高線量エリアで実際に使えるかどうかの調査を行い、手ごたえを得ることができました。2014年から新たな調査用ロボットを使い、人が入ることのできない場所の3D画像データを取ってきたり、その翌年よくねんからは、TIP室とばれる部屋のかべあなを開けて調査装置そうちを入れ、データを取ってきたりといった調査作業を中心に行っています。

仕事にやりがいを感じていますか。

 もちろんです。例えば、かべあなを開けることができた、ロボットを入れることができた、画像がれた、という一つひとつの段階だんかいごとに、チーム全員で喜びを分かち合います。それまで緊張きんちょうして作業をしていたメンバー同士が、防護服の上から手をにぎって喜び合うのはいい光景です。日本の将来しょうらいと地元のみなさんの将来しょうらい背負せおっているというほこりを持てる仕事なので、本当にやりがいがあります。

少しでも長く働けるように作業計画を立てることが大切

グループのリーダーというお立場はいかがですか。
佐々木勝治

 当社では8人から10人のはんを組んで作業にあたっており、班長はんちょうの私は現場の中隊長のような役割やくわりを負っています。むずかしい作業は、自分から率先してやるようにしています。

 リーダーとして大切なのは、それぞれの作業員のばく量を考えて、日々の作業計画を立てることですね。みなさんの生活を考えれば、ばく量をなるべく少なくおさえて、長く1Fで仕事できることが大切だからです。

 むずかしい立場ではありますが、作業員にはプレッシャーをあたえることなく、笑顔でいることが大事だと思っています。正直にいうと、たまには泣きたいことや怒鳴どなりたいこともあるのですが、我慢がまんが大切と自分に言い聞かせています。

さまざまな種類の調査装置そうちやロボットをあつかうのは大変でしょうね。

 そうですね。使用する機材は、作業ごとに新しく開発されたものばかりですから、事前にしっかりと訓練をしなくてはなりません。もちろん、「これで大丈夫だいじょうぶ」と自信がついてから本番で使用するのですが、それでも「本番では訓練通りにうまく事が運ぶだろうか」という不安とプレッシャーにおそわれて、つけない夜もあります。

 機材を設計する人とは、定期的に情報交換こうかんをしています。私たちのほうからは、実際に現場で使った際に、「こうしたらいい」と感じたことを伝えて、機材の改良に役立ててもらっています。

現場で大事にしているものはありますか。

 現場で重宝ちょうほうしているのは、意外かもしれませんが「レーザーポインター」です。人が立ち入れない高線量エリアにある機器や箇所かしょを、レーザーポインターを使って指し示すことができるため、打ち合わせには欠かせません。ずいぶん酷使こくししてきましたから、今使っているのは3台目になります。

 また、モノではありませんが、本当に一番大事に思い、信頼しんらいしているのは、現場でともに働く仲間であることは言うまでもありません。

支えてくれる妻には感謝の気持ちでいっぱい

休日はどのように過ごされていますか。

佐々木勝治現在はいわき市内にお住まいで、おくさんと一緒いっしょにそばの食べ歩きをするのが休日の楽しみ

 私の出身は北海道ですが、現在は妻といわき市内に住んでいます。休日の午前中はおそくまでていることが多いのですが、妻と一緒いっしょに大好きなそばの食べ歩きをするのが、休日の唯一ゆいいつの楽しみです。そばは10年前くらいから好きになりました。細めのそばが私の好みです。

 平日には毎朝4時に起きて朝食をつくってくれる妻には、感謝の気持ちでいっぱいです。いわきから1Fまで片道かたみち1時間をかけて通勤つうきんしていることや、高線量エリアで作業していることなど、心配をかけていることにも申しわけなく思っています。後輩こうはいたちに作業を引きぐまで、もうしばらく支えてほしいです。

佐々木勝治

1980年入社。震災しんさい前までは日本各地の原子力発電所で定期点検業務に従事じゅうじ。「日立グループは、会社がちがっていても家族的な雰囲気ふんいきがあり、横のつながりがしっかりしているので、ロボットの開発部隊ともコミュニケーションがよくとれています」。

作業で心身ともにつかれたときに、全国から寄せられた折りづるやメッセージカードを目にすると、本当に勇気づけられます。

プロフィール
佐々木ささき 勝治かつじさん
  • 【出身地】北海道
  • 趣味しゅみ】そばの食べ歩き
  • 【好物】メヒカリの唐揚からあげ。「メヒカリをかたどったチョコレートもお土産におすすめ」
つとめ先

株式会社日立プラントコンストラクション

国内外で、火力・原子力の発電設備、化学・鉄鋼てっこうプラント、交通システムなどの計画・建設をおもな業務としている会社で、1964年に設立。2013年に現在の社名となった。

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