2016年11月10日
- 三浦 大典さん
- 有限会社前枝建設
舗装工事部 部長
1Fの構内では「フェーシング」と呼ばれる舗装工事が進んでいます。フェーシングは、放射性物質の広がりを防ぐ、地元の復興や1F構内の廃炉作業を進めるうえで大事な仕事です。今回は、そのフェーシングを担当している前枝建設の三浦大典さんにお話をうかがいました。
フェーシング工事とはどういうものなのですか。
1F構内には数多くの木が植えられていましたが、土がむき出しになっていると、風が吹いたときに放射性物質を含むチリやホコリが舞い上がる恐れがあります。そこで、木を伐採して汚染された表面の土を削り取り、アスファルトやコンクリートをかぶせて舗装していくのです。
1Fでフェーシングを始めたのは2015年6月からです。社員13人が2班に分かれて作業をしており、現在は正門を入ってすぐの構内道路のフェーシングをしています。また、構外でも8名が働いています。
好きな仕事をして感謝されるのは幸せ
東日本大震災で大きな被害を受けた南三陸町のご出身と聞きました。
はい。実家が津波で流されてしまい、当時勤めていた道路工事の会社もなくなってしまいました。私自身はそのとき仙台で仕事をしていたのですが、地元に戻っても何の手助けもできそうにありませんでした。まずは、自分の住んでいる仙台の復興に力を貸したいと考えたのです。
ちょうど、前枝建設が復興工事のために東北支社をつくり、道づくりをする社員を募集していると聞き、何かの役に立てればと思って就職しました。
母は南三陸町の仮設住宅で独り暮らしですが、「私のことは心配しないで頑張ってこい」と言ってくれました。
大阪に本社がある会社なんですね。
社長は1985年の阪神淡路大震災で被害を受け、自分たちの力で復興しようという気持ちで会社を設立したと聞いています。そんなことから、東日本大震災で大きな被害を受けた地域に、何か貢献ができないかと考えて東北支店を立ち上げたのだそうです。
社長は、「復興を考えない社員はいらない」とまで公言しているほどですから、社員はみな復興に強い気持ちを持っています。東北支社に勤める社員は30名。うち、6、7割が関西出身で、残りの大半は私を含めて東北出身者です。
関西と東北では、性格や気質がずいぶん違うところもありますが、てきぱきと明るく物事を進める関西のやり方と、腰を据えて地道に仕事をする東北のやり方が、うまく融合していい雰囲気の会社です。
どういうことにやりがいを感じますか。
私たちがつくった桜並木の歩道を、毎日、作業員のみなさんが歩いてくれるのを見るのは大きな楽しみです。しかも、構内の舗装が進んだことで、作業員のみなさんも私たち自身も軽装備で済むようなりました。自分の仕事が、誰かの役に立っていると思うと本当にやりがいを感じます。
私自身、道をつくるという仕事が好きなんです。1Fに来る前は石巻や仙台でも工事をしましたが、崩れた道を直して通れるようになると、地元の人が「ありがとう」といってくれます。このときほど、この仕事をやってよかったと思ったことはありません。自分の好きな仕事ができて、しかも感謝されるというのは本当に幸せだと感じています。
家族的な雰囲気とよい緊張感がある職場
ずっと屋外での仕事なので大変ではありませんか。
夏場の熱中症対策には気を使っています。去年までは全面マスクを着けて作業をしていたので、さすがに肉体的にきつかったですね。クーラーで体を冷やしたり、クールベストを着けたりということはもちろん、生活のリズムを守ることを心がけました。夏に限らず睡眠時間は重要ですから、夜遊びもしないで毎日必ず6時間から7時間は寝るようにしています。
しかも、自宅や支店がある仙台から1Fまで車で1時間半以上かかりますから、お弁当をつくって6時のミーティングに間に合うようにするには、朝の3時ごろに起きなくてはなりません。普通の仕事をしている友人とは時間がずれてしまい、なかなか会えないのは残念ですが、これが仕事ですからつらいと思ったことはありません。
若い職長として年上の方々とどう接していらっしゃいますか。
家族的でいい雰囲気の会社ですが、仕事の場では職長として妥協するわけにはいきません。班のメンバーは私より年上の人がほとんどなのですが、気兼ねすることなく、はっきりと指示するように心がけています。
ただ、ちょっと言い過ぎたかなと思ったときは、仕事が終わってからコーヒーをおごったりして、気まずくならないように気を使うことはありますね。
1Fでの仕事の特徴は、安全に非常に気を使っていることにあると思います。私を含め、作業員一人ひとりがそれを肌で感じているので、ほかの現場とは違った、よい意味での緊張感があります。
休日はどう過ごしていますか。
ゴルフが趣味の三浦さん。会社の同僚たちとプレーをすることもよくあるという
同僚には釣りのグループもありますが、私はもっぱらゴルフです。支店の仲間やジョイントベンチャー(共同企業体)の方々と、いわきでゴルフをすることもよくあります。今年の9月から完全週休2日制になりましたので、ゴルフの回数が増えるかもしれません。
また、バーベキュー大会やいわきでの飲み会といった交流もあります。独身ですから、気兼ねなく参加しています。
仲間とはどのようなことを話していますか。
飲み会でよく盛り上がるのが、「東北の復興は、1F構内の舗装から始まる。自分たちが復興を支えているんだ」という話題です。普通の現場なら、照れくさくて言えないようなことでも、ここでは真顔で言えるくらい、熱い思いの人間が集まっています。また、そのくらいの気持ちがないと、ここでは働けません。今後も無事故、無災害を続けて、復興に役立っていきたいと思います。
2012年入社。石巻市の三陸道拡幅工事や仙台での復興工事に携わったのち、2015年2月から工事の準備で1Fへ。6月から本格的な工事を始める。「ほかの仕事もやったことがありますが、今は道づくりが自分に一番合った仕事だと感じています」。
1Fの作業員は、福島や日本のためを思う人の集まりだと思います。協力しながら、1日でも早い終結に向けて頑張りましょう。
- プロフィール
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三浦 大典さん
- 【出身地】宮城県南三陸町
- 【趣味】海育ちなので魚や貝類が好き
- 【好物】休日は同僚とゴルフ
- お勤め先
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有限会社前枝建設
1993年に大阪で創業。建設工事業、土木工事業、舗装工事業など、町づくりや復興のための事業を中心に展開。2012年に東北支店を設立。いわき市内にも営業所がある。