2016年12月14日
- 横山 昌幸さん
- 株式会社エイブル 第二事業本部
福島第一グループ 主任
- 佐藤 哲男さん
- 株式会社エイブル 第二事業本部
福島第一グループ 課長
- 赤城 竜一さん
- 株式会社エイブル 第二事業本部
設計グループ 主任
- 齋藤 晴美さん
- 株式会社エイブル 第二事業本部
福島第一グループ
1Fの廃炉作業を進めるに当たって、1、2号機の排気筒から入り、地下槽(ドレンサンプピット)にたまる雨水をいかに排水するかが大きな課題となります。エイブルのみなさんは、ロボットを使ってこの排水作業を行う仕事に携わりました。現場の図面がなく、手探りの状態で作業に適したロボットを開発し、仕事を成し遂げました。今回はロボット開発のスタートから排水作業完了に至るまでのエピソードを、実際に中心となって携わった同社のみなさんにうかがいました。
どういうお仕事をされているのか教えてください。
横山さん:
今回は、総勢10人強のプロジェクトチームを結成して、ロボット開発と排水作業に取り組みました。チームとして動きだしたのは2016年2月です。佐藤と私がメインとなり、齋藤も加えて、基本設計をもとに詳細設計を進めていきました。当社は震災前から1Fでメンテナンスや改造工事、定期点検などに携わっていましたが、ロボットで排水作業を行うのは今回が初めてで、その意味ではチャレンジでした。
「どうしたらできるか」を考え試行錯誤した
どのようなロボットを開発したのですか。
佐藤さん:
軸が6つあるアームロボットです。アームの先端に、モノをつかんだり、切ったり、挟んだりといった作業を行う部品を付け替えて作業します。
ロボットは単純な作業は得意なのですが、今回は地下槽のカバーを切ったり、さまざまなモノを挟む、運ぶといった作業が必要になります。人間の手なら1日でできることですが、ロボットにとっては難しく、1週間や10日かかる場合もあります。そのため、工事計画をいただいた段階では、ロボットを使ってこのような作業ができるのかという点で課題を感じていました。ですが、社長が常々「できないことはない、最初からあきらめるな」と言っているので、「どうしたらできるのか」を考えました。
ロボットの開発期間はどれくらいでしたか。
佐藤さん:
2月に設計を始めて、外部の製造業者の協力も得ながらロボットを造り始めたのが5月のことです。実際に現場へ搬入したのが7月ですね。その間の2カ月は、実物大の模型をつくって現場を再現し、ロボット開発と並行して現場を想定した動作のトレーニングを繰り返しました。
赤城さん:
私は1Fでさまざまな設計関係の仕事をしています。今回は地下槽にロボットを入れて排水するわけですが、私は現場の内部構造を調査し、そのデータをもとに立体の図面を描いて、ロボットが入るかどうか、作業に支障がないかといった検証作業を行いました。
齋藤さん:
現場では、地下槽のカバーなどを切断しなければなりません。カバーの周囲には配管などの設備があるので、研究開発の立場としては、とにかく現場を知らないと何もできない状況ですが、実際に現場へ入るわけにはいきません。そこで、横山、佐藤など現場を知る人の意見を参考に、赤城に検証を依頼したり、みんなで考え、造っては試してを繰り返しました。誰が、ではなく、担当部署の垣根を越え、外部業者も含めて、みんなで意見を出し合い、協力して造り上げていったという実感が強くありますね。
赤城さん:
ロボットはさまざまな機械を組み合わせて造るのですが、現場の図面もない状態で開発しなければならないので、齋藤も言うように現場を知る人の意見を聞きながら、試行錯誤の連続で造っていきました。私たちはメーカーではなく、工事屋ですから、外部業者の方々の理解と協力も大きかったと思います。
ロボット開発ではどういう点を工夫しましたか。
佐藤さん:
クレーン車の先端にロボットを付けて出し入れしたのですが、クレーン車で現場まで運んだロボットを、人間が入れない場所でどうやって下ろすのかという点をみんなで考えて、クリアしました。
また、実物大の現場模型で試した段階でも、ロボットが内部のモノと当たったりぶつかったりしていました。そういう場面では形を変えながら改良していったので、工夫のしがいがありましたね。それでも難易度の高い工事でしたので、うまく進めるには運を味方につけようということになり、社長がロボットに「女神」という名前をつけました。うまくいかないときは、私も思わず壁に「女神」と書いて祈っていました(笑)。
「絶対安全」を心がけ達成できたことが満足
現場では想定通りにいきましたか。
佐藤さん:
単純動作自体はうまくいったのですが、実際にはいかに寸法通り設計してもうまくいかない部分が出てきます。ロボットを操作するのは人間ですから現場では緊張することもありますし、現場の配線が引っかかるなど想定外の部分もありました。その中でも地下槽のカバーを切るのがもっとも難しいところでした。
横山さん:
作業現場がとても狭く、しかも目視ではなくカメラで見ながらロボットを操作しなければならなかったので、そこも難しい部分でした。クレーンの先端にカメラを付け、映像を見ながら操作しました。クレーン車に取り付けたのは、上下左右に視点を動かせるからです。
作業が終了したのはいつ頃ですか。
横山さん:
9月末です。いまは後片付けをしているところです。7月の現場入りから期間としては2カ月ですが、2年くらいに感じましたね。最初は正直こんなことができるのかと思いましたが、何度も言うように、みんなで協力したことで達成できました。
齋藤さん:
当社は、単なる「安全」ではなく、「絶対安全」が身上です。今回の作業でも、誰ひとりかすり傷ひとつせず、暑い夏の作業にもかかわらず熱中症も出ませんでした。その意味で、作業を完了したことはもちろん、「絶対安全」を達成できたことにも満足しています。毎日、朝の打ち合わせと作業後の反省を繰り返し、現場ではみんなに聞こえる声で、とにかく「絶対安全」を第一に心がけました。
今後に向けての意気込みをお願いします。
佐藤さん:
私たちは全員、地元浜通りの人間です。震災前から地元で仕事をしていましたし、地震のときも1Fにいました。震災直後からずっとこの現場を見続けてきましたから、1Fは安全になってきているということを、いま声を大にして言いたいですね。そして、廃炉を達成するという最終目標に向けて、私たちの役割を果たしていきたいと考えています。
横山 昌幸さん
福島県双葉郡浪江町出身。趣味は、大きい球から小さい球まで、とにかく球を打つのが大好き
佐藤 哲男さん
福島県双葉郡浪江町出身。果物、とくに桃や梨が好き。休日はイクメンとしてがんばる。子供と遊ぶのが楽しくてしかたない
赤城 竜一さん
福島県双葉郡富岡町出身。お酒と魚が好き。休日は海釣りに出かけることが多い。冬はスノーボードも楽しむ
齋藤 晴美さん
福島県いわき市出身。好きな食べ物は妻の手料理。子育てが終わったので、休日は妻と気の向くままドライブに出かける
私たちは地元・浜通りに本社を置く企業です。社員は各担当分野の垣根を越え、1Fの廃炉に向けた作業に日々協力して取り組んでいます。
- プロフィール
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横山 昌幸さん
福島県双葉郡浪江町出身。趣味は、大きい球から小さい球まで、とにかく球を打つのが大好き
佐藤 哲男さん福島県双葉郡浪江町出身。果物、とくに桃や梨が好き。休日はイクメンとしてがんばる。子供と遊ぶのが楽しくてしかたない
赤城 竜一さん福島県双葉郡富岡町出身。お酒と魚が好き。休日は海釣りに出かけることが多い。冬はスノーボードも楽しむ
齋藤 晴美さん福島県いわき市出身。好きな食べ物は妻の手料理。子育てが終わったので、休日は妻と気の向くままドライブに出かける
- お勤め先
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株式会社エイブル
1992年設立。95年に社名を株式会社エイブルに変更し、97年本社を福島県双葉郡大熊町に移転。火力・原子力発電を中心に各種プラント設備の建設やメンテナンス、設計・開発を主に行う。