1 FOR ALL JAPAN 廃炉のいま、あした

1Fを守る仲間たち

2016年12月14日

INTERVIEW 21 「できないことはない」試行錯誤を繰り返したロボット開発

横山 昌幸さん 横山よこやま 昌幸まさゆきさん
株式会社エイブル 第二事業本部
福島第一グループ 主任
佐藤 哲男さん 佐藤さとう 哲男てつおさん
株式会社エイブル 第二事業本部
福島第一グループ 課長
赤城 竜一さん 赤城あかぎ 竜一りゅういちさん
株式会社エイブル 第二事業本部
設計グループ 主任
齋藤 晴美さん 齋藤さいとう 晴美はるみさん
株式会社エイブル 第二事業本部
福島第一グループ

 1Fの廃炉はいろ作業を進めるに当たって、1、2号機の排気筒はいきとうから入り、地下槽ちかそう(ドレンサンプピット)にたまる雨水をいかに排水はいすいするかが大きな課題となります。エイブルのみなさんは、ロボットを使ってこの排水はいすい作業を行う仕事にたずさわりました。現場の図面がなく、手さぐりの状態で作業に適したロボットを開発し、仕事を成しげました。今回はロボット開発のスタートから排水作業完了はいすいさぎょうかんりょういたるまでのエピソードを、実際に中心となってたずさわった同社のみなさんにうかがいました。

どういうお仕事をされているのか教えてください。
横山 昌幸さん

横山さん:

 今回は、総勢10人強のプロジェクトチームを結成して、ロボット開発と排水はいすい作業に取り組みました。チームとして動きだしたのは2016年2月です。佐藤と私がメインとなり、齋藤も加えて、基本きほん設計をもとに詳細設計を進めていきました。当社は震災前から1Fでメンテナンスや改造工事、定期点検などにたずさわっていましたが、ロボットで排水はいすい作業を行うのは今回が初めてで、その意味ではチャレンジでした。

「どうしたらできるか」を考え試行錯誤さくごした

どのようなロボットを開発したのですか。

佐藤さん:

 じくが6つあるアームロボットです。アームの先端せんたんに、モノをつかんだり、切ったり、はさんだりといった作業を行う部品を付けえて作業します。
 ロボットは単純たんじゅんな作業は得意なのですが、今回は地下槽ちかそうのカバーを切ったり、さまざまなモノをはさむ、運ぶといった作業が必要になります。人間の手なら1日でできることですが、ロボットにとっては難しく、1週間や10日かかる場合もあります。そのため、工事計画をいただいた段階だんかいでは、ロボットを使ってこのような作業ができるのかという点で課題を感じていました。ですが、社長が常々「できないことはない、最初からあきらめるな」と言っているので、「どうしたらできるのか」を考えました。

ロボットの開発期間はどれくらいでしたか。

佐藤さん:

 2月に設計を始めて、外部の製造業者の協力も得ながらロボットを造り始めたのが5月のことです。実際に現場へ搬入はんにゅうしたのが7月ですね。その間の2カ月は、実物大の模型もけいをつくって現場を再現し、ロボット開発と並行へいこうして現場を想定した動作のトレーニングをり返しました。

赤城 竜一さん

赤城さん:

 私は1Fでさまざまな設計関係の仕事をしています。今回は地下槽ちかそうにロボットを入れて排水はいすいするわけですが、私は現場の内部構造を調査し、そのデータをもとに立体の図面をえがいて、ロボットが入るかどうか、作業に支障ししょうがないかといった検証作業を行いました。

齋藤さん:

 現場では、地下槽ちかそうのカバーなどを切断しなければなりません。カバーの周囲には配管などの設備があるので、研究開発の立場としては、とにかく現場を知らないと何もできない状況じょうきょうですが、実際に現場へ入るわけにはいきません。そこで、横山、佐藤など現場を知る人の意見を参考に、赤城に検証を依頼いらいしたり、みんなで考え、造っては試してをり返しました。だれが、ではなく、担当部署たんとうぶしょ垣根かきねえ、外部業者もふくめて、みんなで意見を出し合い、協力して造り上げていったという実感が強くありますね。

赤城さん:

ロボットはさまざまな機械を組み合わせて造るのですが、現場の図面もない状態で開発しなければならないので、齋藤も言うように現場を知る人の意見を聞きながら、試行錯誤さくごの連続で造っていきました。私たちはメーカーではなく、工事屋ですから、外部業者の方々の理解と協力も大きかったと思います。

ロボット開発ではどういう点を工夫しましたか。

佐藤さん:

 クレーン車の先端せんたんにロボットを付けて出し入れしたのですが、クレーン車で現場まで運んだロボットを、人間が入れない場所でどうやって下ろすのかという点をみんなで考えて、クリアしました。
 また、実物大の現場模型もけいで試した段階だんかいでも、ロボットが内部のモノと当たったりぶつかったりしていました。そういう場面では形を変えながら改良していったので、工夫のしがいがありましたね。それでも難易度なんいどの高い工事でしたので、うまく進めるには運を味方につけようということになり、社長がロボットに「女神」という名前をつけました。うまくいかないときは、私も思わず壁に「女神」と書いていのっていました(笑)。

「絶対安全」を心がけ達成できたことが満足

現場では想定通りにいきましたか。
佐藤 哲男さん

佐藤さん:

 単純たんじゅん動作自体はうまくいったのですが、実際にはいかに寸法すんぽう通り設計してもうまくいかない部分が出てきます。ロボットを操作そうさするのは人間ですから現場では緊張きんちょうすることもありますし、現場の配線が引っかかるなど想定外の部分もありました。その中でも地下槽ちかそうのカバーを切るのがもっともむずかしいところでした。

横山さん:

 作業現場がとてもせまく、しかも目視もくしではなくカメラで見ながらロボットを操作そうさしなければならなかったので、そこもむずかしい部分でした。クレーンの先端せんたんにカメラを付け、映像えいぞうを見ながら操作そうさしました。クレーン車に取り付けたのは、上下左右に視点してんを動かせるからです。

作業が終了しゅうりょうしたのはいつごろですか。
齋藤 晴美さん

横山さん:

 9月末です。いまは後片付あとかたづけをしているところです。7月の現場入りから期間としては2カ月ですが、2年くらいに感じましたね。最初は正直こんなことができるのかと思いましたが、何度も言うように、みんなで協力したことで達成できました。

齋藤さん:

 当社は、単なる「安全」ではなく、「絶対安全」が身上です。今回の作業でも、だれひとりかすりきずひとつせず、暑い夏の作業にもかかわらず熱中症ねっちゅうしょうも出ませんでした。その意味で、作業を完了かんりょうしたことはもちろん、「絶対安全」を達成できたことにも満足しています。毎日、朝の打ち合わせと作業後の反省をり返し、現場ではみんなに聞こえる声で、とにかく「絶対安全」を第一に心がけました。

今後に向けての意気みをお願いします。

佐藤さん:

 私たちは全員、地元浜通りの人間です。震災しんさい前から地元で仕事をしていましたし、地震じしんのときも1Fにいました。震災しんさい直後からずっとこの現場を見続けてきましたから、1Fは安全になってきているということを、いま声を大にして言いたいですね。そして、廃炉はいろを達成するという最終目標に向けて、私たちの役割やくわりを果たしていきたいと考えています。

横山 昌幸さん

横山よこやま 昌幸まさゆきさん

福島県双葉郡浪江町ふたばぐんなみえまち出身。趣味しゅみは、大きい球から小さい球まで、とにかく球を打つのが大好き

佐藤 哲男さん

佐藤さとう 哲男てつおさん

福島県双葉郡浪江町ふたばぐんなみえまち出身。果物、とくにももなしが好き。休日はイクメンとしてがんばる。子供こどもと遊ぶのが楽しくてしかたない

赤城 竜一さん

赤城あかぎ 竜一りゅういちさん

福島県双葉郡富岡町ふたばぐんとみおかまち出身。お酒と魚が好き。休日は海釣りに出かけることが多い。冬はスノーボードも楽しむ

齋藤 晴美さん

齋藤さいとう 晴美はるみさん

福島県いわき市出身。好きな食べ物は妻の手料理。子育てが終わったので、休日は妻と気の向くままドライブに出かける

私たちは地元・浜通りに本社を置く企業きぎょうです。社員は各担当たんとう分野の垣根かきねえ、1Fの廃炉はいろに向けた作業に日々協力して取り組んでいます。

プロフィール
横山よこやま 昌幸まさゆきさん

福島県双葉郡浪江町ふたばぐんなみえまち出身。趣味しゅみは、大きい球から小さい球まで、とにかく球を打つのが大好き

佐藤さとう 哲男てつおさん

福島県双葉郡浪江町ふたばぐんなみえまち出身。果物、とくにももなしが好き。休日はイクメンとしてがんばる。子供こどもと遊ぶのが楽しくてしかたない

赤城あかぎ 竜一りゅういちさん

福島県双葉郡富岡町ふたばぐんとみおかまち出身。お酒と魚が好き。休日は海釣りに出かけることが多い。冬はスノーボードも楽しむ

齋藤さいとう 晴美はるみさん

福島県いわき市出身。好きな食べ物は妻の手料理。子育てが終わったので、休日は妻と気の向くままドライブに出かける

つとめ先

株式会社エイブル

1992年設立。95年に社名を株式会社エイブルに変更へんこうし、97年本社を福島県双葉郡大熊町ふたばぐんおおくままちに移転。火力・原子力発電を中心に各種プラント設備の建設やメンテナンス、設計・開発を主に行う。

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