2017年5月15日
- 関根 義昭さん
- 大成建設株式会社 東北支店
東電福一関連工事作業所 工事課長
- 内山 善浩さん
- 株式会社新建設
工事部 部長
- 上野 明伸さん
- 南信重機興業株式会社
- 藤田 広さん
- 真和建設株式会社
- 福士 勇さん
- 高橋建設株式会社
1F構内の除染作業が進んだことによって、放射線量が大きく下がり、1F構内の多くの場所では軽装で作業ができるようになりました。しかし、除染作業によって削り取った地表の土は、線量が高いために取り扱いが難しいのです。今回ご紹介するチームは、そうした汚染土を移動させるとともに、現在汚染土を保管しているH4エリアの角形タンクを撤去するという重要な仕事を担当しています。
タンクに収めた汚染土が
予想外に水分を多く含んでいた
どういう仕事をされているのですか。
内山さん:
これまで汚染土はそのまま、1F構内にある42㎥の角形タンク12基に詰められてきました。このタンクを解体させるには、汚染土をどこかに持っていかなくてはなりません。ですが、土を入れたタンクは、1基当たり50~60トンにもなるので、タンクごと移動させることができません。そこで、まずはフレコンバッグ(フレキシブルコンテナバッグ)と呼ばれる化学繊維製の丈夫な袋に、汚染土を詰める作業をしています。
関根さん:
汚染土を詰めたフレコンバッグは、ひとまず角形タンクの中に保管します。袋に詰めておけば、いつでも汚染土を容易に運ぶことができますからね。ただ問題なのは、汚染土の放射線量が高いために、作業員が角型タンク内に入り、スコップなどで汚染土を袋詰めできない点です。
藤田さん:
そこで、重機の操作員である私と上野さんが、油圧ショベルを使って土を袋に詰めているのです。線量の高い場所で作業をするので、防護服を着て全面マスクをしながらの操作になります。
福士さん:
私の仕事は、職人さんと話し合って角形タンクを解体する手順を考えることです。H4エリアでは、上空に高圧線があったり、周囲に重要配管類など様々なものがあるので、大きな機械が入らないのが難しいですね。もちろん、安全に作業することを第一に、計画を立てています。
仕事はスムーズに進みましたか。
関根さん:
いいえ、簡単にはいきませんでした。最初、タンクの上に穴を空けて中を見たところ、かなりの水分を含んでいることがわかりました。もし、この水が地面に落ちたら、周囲が汚染されてしまうことになります。
そこで、いろいろな方法を考えた結果、土壌改良材を使って水分を減らすことにしました。かといって、カチカチに固めてしまったら、今度は土を取り出すことができません。どんな改良材をどの程度を使えばよいか、試行錯誤してようやくいい配合を見つけました。
2016年11月初めから作業を開始して、1カ月ほどで終わる予定だったのですが、このような予想外のことが出てきたために、想定より時間がかかってしまったのです。
内山さん:
その改良剤を入れるのが私たちの仕事です。それと同時に、上野さんや藤田さんに重機でかきまぜてもらいます。そして、粘土状になったところで、水滴が垂れないように袋詰めしてもらいます。
全面マスクを使用しての作業なので
KYやコミュニケーションが大切
ほかの現場とはどのような点が違いますか。
上野さん:
1Fは、ほかとは装備がまったく違います。全面マスクなので、視界が限られるのが一番難しいところですね。クレーンの場合、ブーム(クレーンの腕の部分)が左側にあるので、とくに左側が見づらいのです。逆に、油圧ショベルの場合は右側にあるので、右側の視界が悪くなります。
藤田さん:
よその現場にくらべると神経を使いますね。何か作業をする前には、しつこいくらいに、よくまわりを確認する必要があります。また、機械の近くに人がうっかりと入ってこないように、常に監視している人もいます。全面マスクをしているうえに、重機の騒音があるため、現場ではほとんど声が伝わらないというのも1Fの難しいところです。
難しい仕事をやり遂げるために、どのような工夫をしていますか。
内山さん:
今、藤田さんが言ったように、現場では声が届きません。そこで、5m程度の距離でも無線機を使って、確実に連絡することにしています。
また、汚染土を詰めた袋がよじれてしまうと、中身が出て汚染が広がってしまいます。そこで、みんなの知恵を集めて考えた結果、袋をしっかりとした台に取り付けて、さらにその下にブルーシートを敷いて作業をするという工夫をしました。袋を立てかければ土は落ちにくいですし、落ちてもブルーシートの上だけです。
福士さん:
やはり、じっくりと打ち合わせをすることが大切ですね。毎日、仕事が終わると宿舎に帰ってから、このメンバーで次の日の作業の打ち合わせをします。翌日は朝6時半からの朝礼のあとに、決められた手順書に従って、作業員を含めて15人の一人ひとりに作業の内容と配置をていねいに伝えます。
狭い場所で作業をすることが多いので、けがをしないように位置取りはとくに大切。「この動きをしたときには、みんなはこちらに移動する」というように、KY(危険予知活動)も細かく行います。
全員がけがなく仕事を終えて
無事に宿舎に帰ることが一番の喜び
これまで1Fでやってきた仕事で、どんなときに一番やりがいを感じましたか。
内山さん:
作業員をまとめる立場ですから、全員けがなく作業を終え、無事に宿舎に帰ったときですね。重機のまわりの安全確認も私の会社の担当ですから、重機の操作員さんと仲良く仕事が進められたときは、よかったなと思います。
福士さん:
私は、震災直後の2011年6月に初めて1Fに来たのですが、当時は汚染水を入れるためにフランジタンク(継ぎ目のあるタンク)を急いで作らなくてはなりませんでした。そのときに、タンクを無事に建てられたときは、やりがいを感じましたね。自分で作業の手順を決めて、それが形になるというのは、すばらしい体験でした。その後、2014年6月に再び1Fに戻って、今度はタンクの解体を行ったのですが、それもまた得がたい体験でした。
上野さん:
そのとき、私はフランジタンクを解体するクレーンの操作員として1Fに来たのです。解体するタンクには汚染水が残っているので、組み立てよりも神経を使います。無事にそのエリアの解体が終わったときは、みんなで喜びを分かち合いました。
仕事が終わったあとや、休日はどのようなことをして過ごしていますか。
このメンバーで協力し、汚染土の移動作業に取り組んでいる
上野さん:
20年前からサーフィンをやっていて、今でもJビレッジ近くの海で楽しんでいます。1Fで仕事をしている人でも、サーフィン仲間がいますし、いわきの海が安全だということを示すことで、これも風評被害を取り除く一つの行動にもなっているかなと思っています。
福士さん:
私は、自宅のある東京に1340ccの大型バイクを置いているので、休日に自宅に帰ったときは、それに乗ってあちこちに遊びにいってきます。バイクは一人で走るのが好きなのですが、ときには友人と一緒にツーリングをしてキャンプをすることもあります。
関根 義昭さん
施工計画を行い、作業全体の管理をするのが仕事。自宅のある福岡県にゴルフの道具をおいてきてしまったが、最近は月に1、2回ゴルフを行うようになった。
内山 善浩さん
東京都江戸川区出身。初めて1Fに来たのは2012年夏ごろ。現在は月に1回、仲間や協力会社の人たちとゴルフに行くのが楽しみ。
上野 明伸さん
千葉県船橋市出身。重機の操作員。以前はプロのサーファーになることも考えていたほどの腕前。今でもJビレッジ近くの海でサーフィンを楽しんでいる。
藤田 広さん
神奈川県川崎市出身。重機の操作員。休日はたまにいわきまで買い物に出るほかは、テレビを見ながらのんびりしていることが多い。
福士 勇さん
東京都出身。角形タンクを解体する手順を職人さんと話し合って計画を立てたり、現場でみんなが安全に作業するように指導するのが仕事。バイクのツーリングが好き。
ここでは、地元の出身者もよそから来た人も、みんな仲良く仕事をやっています。おかげで、ここ1、2年で目に見えて放射線量も下がってきて、安心して働きやすい環境になってきました。今後も、廃炉に向けてさらに努力していきます。
- プロフィール
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関根 義昭さん
施工計画を行い、作業全体の管理をするのが仕事。自宅のある福岡県にゴルフの道具をおいてきてしまったが、最近は月に1、2回ゴルフを行うようになった。
内山 善浩さん東京都江戸川区出身。初めて1Fに来たのは2012年夏ごろ。現在は月に1回、仲間や協力会社の人たちとゴルフに行くのが楽しみ。
上野 明伸さん千葉県船橋市出身。重機の操作員。以前はプロのサーファーになることも考えていたほどの腕前。今でもJビレッジ近くの海でサーフィンを楽しんでいる。
藤田 広さん神奈川県川崎市出身。重機の操作員。休日はたまにいわきまで買い物に出るほかは、テレビを見ながらのんびりしていることが多い。
福士 勇さん東京都出身。角形タンクを解体する手順を職人さんと話し合って計画を立てたり、現場でみんなが安全に作業するように指導するのが仕事。バイクのツーリングが好き。
- お仕事内容
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H4エリアの角形タンクに保管された汚染土を移動させることを目的として、2016年11月から作業を実施。大成建設と協力企業が、第一段階として汚染土を袋詰めにする作業を行った。