1 FOR ALL JAPAN 廃炉のいま、あした

1Fを守る仲間たち

2017年5月15日

INTERVIEW 28 みんなの知恵を集め、汚染土をうまく取り扱う工夫ができました

関根 義昭さん 関根せきね 義昭よしあきさん
大成建設株式会社 東北支店
東電福一関連工事作業所 工事課長
内山 善浩さん 内山うちやま 善浩よしひろさん
株式会社新建設
工事部 部長
上野 明伸さん 上野うえの 明伸あきのぶさん
南信重機興業株式会社
藤田 広さん 藤田ふじた ひろしさん
真和建設株式会社
福士 勇さん 福士ふくし いさむさん
高橋建設株式会社

 1F構内の除染じょせん作業が進んだことによって、放射線ほうしゃせん量が大きく下がり、1F構内の多くの場所では軽装けいそうで作業ができるようになりました。しかし、除染じょせん作業によってけずり取った地表の土は、線量が高いために取りあつかいがむずかしいのです。今回ご紹介しょうかいするチームは、そうした汚染土おせんどを移動させるとともに、現在汚染土おせんどを保管しているH4エリアの角形タンクを撤去てっきょするという重要な仕事を担当たんとうしています。

タンクにおさめた汚染土おせんど
予想外に水分を多くふくんでいた

どういう仕事をされているのですか。
関根 義昭さん

内山さん:

 これまで汚染土おせんどはそのまま、1F構内にある42㎥の角形タンク12基にめられてきました。このタンクを解体させるには、汚染土おせんどをどこかに持っていかなくてはなりません。ですが、土を入れたタンクは、1基当たり50~60トンにもなるので、タンクごと移動させることができません。そこで、まずはフレコンバッグ(フレキシブルコンテナバッグ)とばれる化学繊維製かがくせんいせい丈夫じょうぶふくろに、汚染土おせんどめる作業をしています。

関根さん:

 汚染土おせんどめたフレコンバッグは、ひとまず角形タンクの中に保管します。ふくろめておけば、いつでも汚染土おせんどを容易に運ぶことができますからね。ただ問題なのは、汚染土おせんど放射線ほうしゃせん量が高いために、作業員が角型タンク内に入り、スコップなどで汚染土おせんど袋詰ふくろづめできない点です。

藤田さん:

 そこで、重機の操作員そうさいんである私と上野さんが、油圧ショベルを使って土をふくろめているのです。線量の高い場所で作業をするので、防護服を着て全面マスクをしながらの操作そうさになります。

福士さん:

 私の仕事は、職人さんと話し合って角形タンクを解体する手順を考えることです。H4エリアでは、上空に高圧線があったり、周囲に重要配管類など様々なものがあるので、大きな機械が入らないのがむずかしいですね。もちろん、安全に作業することを第一に、計画を立てています。

仕事はスムーズに進みましたか。
内山 善浩さん

関根さん:

 いいえ、簡単かんたんにはいきませんでした。最初、タンクの上にあなを空けて中を見たところ、かなりの水分をふくんでいることがわかりました。もし、この水が地面に落ちたら、周囲が汚染おせんされてしまうことになります。

 そこで、いろいろな方法を考えた結果、土壌どじょう改良材を使って水分を減らすことにしました。かといって、カチカチに固めてしまったら、今度は土を取り出すことができません。どんな改良材をどの程度を使えばよいか、試行錯誤さくごしてようやくいい配合を見つけました。

 2016年11月初めから作業を開始して、1カ月ほどで終わる予定だったのですが、このような予想外のことが出てきたために、想定より時間がかかってしまったのです。

内山さん:

 その改良剤かいりょうざいを入れるのが私たちの仕事です。それと同時に、上野さんや藤田さんに重機でかきまぜてもらいます。そして、粘土状ねんどじょうになったところで、水滴すいてきれないように袋詰ふくろづめしてもらいます。

全面マスクを使用しての作業なので
KYやコミュニケーションが大切

ほかの現場とはどのような点がちがいますか。
藤田 広さん

上野さん:

 1Fは、ほかとは装備そうびがまったくちがいます。全面マスクなので、視界しかいが限られるのが一番むずかしいところですね。クレーンの場合、ブーム(クレーンのうでの部分)が左側にあるので、とくに左側が見づらいのです。逆に、油圧ショベルの場合は右側にあるので、右側の視界しかいが悪くなります。

藤田さん:

 よその現場にくらべると神経を使いますね。何か作業をする前には、しつこいくらいに、よくまわりを確認かくにんする必要があります。また、機械の近くに人がうっかりと入ってこないように、常に監視かんししている人もいます。全面マスクをしているうえに、重機の騒音そうおんがあるため、現場ではほとんど声が伝わらないというのも1Fのむずかしいところです。

むずかしい仕事をやりげるために、どのような工夫をしていますか。
福士 勇さん

内山さん:

 今、藤田さんが言ったように、現場では声がとどきません。そこで、5m程度の距離きょりでも無線機を使って、確実に連絡れんらくすることにしています。

 また、汚染土おせんどめたふくろがよじれてしまうと、中身が出て汚染おせんが広がってしまいます。そこで、みんなの知恵ちえを集めて考えた結果、ふくろをしっかりとした台に取り付けて、さらにその下にブルーシートをいて作業をするという工夫をしました。ふくろを立てかければ土は落ちにくいですし、落ちてもブルーシートの上だけです。

福士さん:

 やはり、じっくりと打ち合わせをすることが大切ですね。毎日、仕事が終わると宿舎に帰ってから、このメンバーで次の日の作業の打ち合わせをします。翌日よくじつは朝6時半からの朝礼のあとに、決められた手順書にしたがって、作業員をふくめて15人の一人ひとりに作業の内容と配置をていねいに伝えます。

 せまい場所で作業をすることが多いので、けがをしないように位置取りはとくに大切。「この動きをしたときには、みんなはこちらに移動する」というように、KY(危険きけん予知活動)も細かく行います。

全員がけがなく仕事を終えて
無事に宿舎に帰ることが一番の喜び

これまで1Fでやってきた仕事で、どんなときに一番やりがいを感じましたか。
上野 明伸さん

内山さん:

 作業員をまとめる立場ですから、全員けがなく作業を終え、無事に宿舎に帰ったときですね。重機のまわりの安全確認かくにんも私の会社の担当たんとうですから、重機の操作員そうさいんさんと仲良く仕事が進められたときは、よかったなと思います。

福士さん:

 私は、震災しんさい直後の2011年6月に初めて1Fに来たのですが、当時は汚染水おせんすいを入れるためにフランジタンク(ぎ目のあるタンク)を急いで作らなくてはなりませんでした。そのときに、タンクを無事に建てられたときは、やりがいを感じましたね。自分で作業の手順を決めて、それが形になるというのは、すばらしい体験でした。その後、2014年6月に再び1Fにもどって、今度はタンクの解体を行ったのですが、それもまた得がたい体験でした。

上野さん:

 そのとき、私はフランジタンクを解体するクレーンの操作員そうさいんとして1Fに来たのです。解体するタンクには汚染水おせんすいが残っているので、組み立てよりも神経を使います。無事にそのエリアの解体が終わったときは、みんなで喜びを分かち合いました。

仕事が終わったあとや、休日はどのようなことをして過ごしていますか。

このメンバーで協力し、汚染土の移動作業に取り組んでいる このメンバーで協力し、汚染土の移動作業に取り組んでいる

上野さん:

 20年前からサーフィンをやっていて、今でもJビレッジ近くの海で楽しんでいます。1Fで仕事をしている人でも、サーフィン仲間がいますし、いわきの海が安全だということを示すことで、これも風評被害ふうひょうひがいを取りのぞく一つの行動にもなっているかなと思っています。

福士さん:

 私は、自宅じたくのある東京に1340ccの大型バイクを置いているので、休日に自宅じたくに帰ったときは、それに乗ってあちこちに遊びにいってきます。バイクは一人で走るのが好きなのですが、ときには友人と一緒いっしょにツーリングをしてキャンプをすることもあります。

関根 義昭さん

関根せきね 義昭よしあきさん

施工計画を行い、作業全体の管理をするのが仕事。自宅じたくのある福岡県にゴルフの道具をおいてきてしまったが、最近は月に1、2回ゴルフを行うようになった。

内山 善浩さん

内山うちやま 善浩よしひろさん

東京都江戸川区出身。初めて1Fに来たのは2012年夏ごろ。現在は月に1回、仲間や協力会社の人たちとゴルフに行くのが楽しみ。

上野 明伸さん

上野うえの 明伸あきのぶさん

千葉県船橋市出身。重機の操作員そうさいん。以前はプロのサーファーになることも考えていたほどの腕前うでまえ。今でもJビレッジ近くの海でサーフィンを楽しんでいる。

藤田 広さん

藤田ふじた ひろしさん

神奈川県川崎市出身。重機の操作員そうさいん。休日はたまにいわきまで買い物に出るほかは、テレビを見ながらのんびりしていることが多い。

福士 勇さん

福士ふくし いさむさん

東京都出身。角形タンクを解体する手順を職人さんと話し合って計画を立てたり、現場でみんなが安全に作業するように指導するのが仕事。バイクのツーリングが好き。

ここでは、地元の出身者もよそから来た人も、みんな仲良く仕事をやっています。おかげで、ここ1、2年で目に見えて放射線ほうしゃせん量も下がってきて、安心して働きやすい環境かんきょうになってきました。今後も、廃炉はいろに向けてさらに努力していきます。

プロフィール
関根せきね 義昭よしあきさん

施工計画を行い、作業全体の管理をするのが仕事。自宅じたくのある福岡県にゴルフの道具をおいてきてしまったが、最近は月に1、2回ゴルフを行うようになった。

内山うちやま 善浩よしひろさん

東京都江戸川区出身。初めて1Fに来たのは2012年夏ごろ。現在は月に1回、仲間や協力会社の人たちとゴルフに行くのが楽しみ。

上野うえの 明伸あきのぶさん

千葉県船橋市出身。重機の操作員そうさいん。以前はプロのサーファーになることも考えていたほどの腕前うでまえ。今でもJビレッジ近くの海でサーフィンを楽しんでいる。

藤田ふじた ひろしさん

神奈川県川崎市出身。重機の操作員そうさいん。休日はたまにいわきまで買い物に出るほかは、テレビを見ながらのんびりしていることが多い。

福士ふくし いさむさん

東京都出身。角形タンクを解体する手順を職人さんと話し合って計画を立てたり、現場でみんなが安全に作業するように指導するのが仕事。バイクのツーリングが好き。

お仕事内容

H4エリアの角形タンクに保管された汚染土おせんどを移動させることを目的として、2016年11月から作業を実施じっし。大成建設と協力企業が、第一段階だんかいとして汚染土おせんど袋詰ふくろづめにする作業を行った。

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