2017年5月16日
- 西村 務さん
- 株式会社東芝 電力システム社
福島第一原子力作業所 電気計装担当副所長
- 山田 一廣さん
- 東芝電気計装工事グループ
- 馬場 裕之さん
- 南総合開発
- 久保田 稔さん
- 大和工業
- 渡邉 恵一さん
- 協栄工業
原子炉が安全な状態に保たれているかどうかを確認するには、原子炉を収めている圧力容器や、それを覆う格納容器の温度を測ることが非常に重要です。放射線量が多い場所において、そうした温度計の設置作業のほか、電気系統の設備工事、圧力容器の内部調査など、廃炉作業の最前線で仕事をしているのが、今回ご紹介する東芝とその協力会社の方々です。
真夏にはクールベストの
保冷剤もすぐに溶けてしまう
お仕事の内容を教えてください。
西村さん:
私は現在、電気計装試験の取りまとめの仕事をしています。電気計装試験とは、さまざまな測定装置を使って、電気関係の設備がうまく動いているかを調べることです。温度計設置工事についても、東芝とこの3社でやってきました。その他、電気に関係する仕事について、それぞれ担当をお願いして進めています。平均して1つの仕事が半年続き、その後にまた新しい仕事にとりかかるという感じですね。
渡邉さん:
現在は、震災直後から使っていた使用済燃料プール冷却設備を解体する工事をしています。また、2、3号機原子炉圧力容器の制御盤が、より確実に作動するように、同じものを二系統つくる二重化という工事を行ってきました。
久保田さん:
私は、2016年12月からプロセス建屋(集中廃棄物処理施設プロセス建屋)の低圧電路接地工事という仕事をしています。また、震災直後から設置してきた仮設のケーブルを整理して、きれいにする工事も担当しています。
仕事上では、どのような点が難しいですか。
馬場さん:
私は、2号機の原子炉圧力容器の内部調査の準備段階として、電源ケーブルや調査ロボットを監視するモニタ関係のケーブルなどをつなぐ仕事をしてきました。格納容器に通じる穴を空けているので、そこで作業をするのですが、配管やホースでごちゃごちゃした足元に気をつけながら、防護服に全面マスクをつけて作業場所まで歩いていかなくてはなりません。また、放射線量が多いため長時間とどまることができませんから、効率的に仕事が進められないのが大変ですね。
山田さん:
私の会社も、馬場さんたちと一緒に、2号機原子炉圧力容器の内部調査を担当しています。私は工事管理をしていますが、難しいのは作業員の方々のやりくりですね。やはり現場は線量が高いので、交代メンバーもそろえなくてはなりません。ほかの現場ならば2人でいい場合でも、6人または8人とそろえなくてはならないこともあります。
渡邉さん:
重装備なので、季節を問わず作業は簡単ではないですね。とくに夏は熱中症対策に気を使っています。暑い時間帯を避けて、通常は5時半出勤のところを、3時半出勤にしたり、真夏にはスーパーサマータイムとして1時半出勤という日もあって、時間の感覚がずれてきますね。また、保冷剤を何個もいれたクールベストを着ることで涼しく作業はできるのですが、本当に暑いときは1時間もすると溶けてしまい、保冷剤の重さがずしりと感じられてきます。だからといって、線量の高い場所で脱ぐわけにもいかないのが大変です。
事前に納得できるまで
話し合うことが大切
大変な場所でのお仕事ですが、仕事をうまく進める工夫やコツはありますか。
山田さん:
これは、1Fのどこの現場でもやっていることだと思いますが、ミーティングのときに前もって現場の写真を確認したり、その場の様子の説明をしっかりすることですね。現場で作業できる時間が限られていますから、現場で迷っていたら時間がもったいない。その場に行ったら、迷うことなく作業にとりかかれることが何よりも大切だからです。
西村さん:
とくに、ミーティングで納得できるまでよく話し合うことが大切です。現場に着いたら、余計なことを考えずに、決まったことを速やかにやり遂げることが第一です。全面マスクをしていて声が通らないので、現場に行ってから、ああだこうだと話し合うことはできないからです。
これまでで印象に残っている仕事はありますか。
久保田さん:
このグループでの仕事ですが、原子炉建屋のTIP室という部屋に、放射線を通さない遮へい体を敷きつめる仕事がありました。遮へい体は、1枚当たり1メートル×25センチの大きさで約10kg。それが300枚近くありました。部屋の入口までは運んでもらえるのですが、そこからは6人がかりで敷きつめたのです。このときは、とくに重装備でした。防護服(タイベック)、合羽(アノラック)、手袋は通常2枚のところを3枚重ね、靴下も3枚重ねてはきました。しかも、段差があってつまずかないようにしなくてはなりません。
このときの仕事は、今でも仲間うちで「あのときは大変だったなあ」とよく話題にのぼります。
山田さん:
どの仕事も長く工程をとっているわけではありませんが、工程が守られなかったことはなないですね。これも現場で働く方々のおかげです。
地味な存在の仕事だが
やりがいを感じる
どんなときにやりがいを感じますか。
渡邉さん:
管路をつくってケーブルを引いて接続する、その結果、工事をしていた建屋が問題なく運用を開始するのを見ると、やり遂げたという気持ちになります。夏場の暑いときに溶接のような仕事をしていたときは、とくに達成感がありますね。
山田さん:
私たちのような仕事は、工事をうまく終わらせて当たり前。地味な存在ですが、無事に稼働 するのが喜びであり、達成感を覚えます。新しい施設の稼働が、テレビや新聞で報道されるのを見たときは、さらにやりがいを感じますね。
馬場さん:
現在は、2号機の内部調査を進めているところで、まだまだ達成感というものはありませんが、原子炉の中がどうなっているのかを知りたいという期待感は強いですね。
久保田さん:
私たちの会社は、震災前から原子炉下部の電気工事をしていたので、現在、原子炉格納容器下部がどのようになっているのか、見たいという気持ちをみな持っています。
ところで、休日はどのように過ごしていますか。
馬場さん:
このチームはみなさんゴルフが好きな人が多く、私も1Fで仕事をするようになってからゴルフを始めました。協力企業の方や仲間とは、多いときには月4回コースに出るときもあります。
久保田さん:
私が好きなのは車とバイクです。休日は栃木県の塩原にある自宅に帰り、妻と車に乗ってふらっと出かけることがよくあります。近くには温泉が多いので、足湯につかってのんびりすると仕事の疲れも吹っ飛びますね。夏はバイクで山を走るのも好きですね。
西村 務さん
出身は北海道。自宅は東京だが、広野の寮に単身赴任をしている。休日はゴルフを月に2回ほどしている。
山田 一廣さん
秋田県能代市出身。2014年から、小名浜で3号機原子炉建屋カバーの工事を行っていたが、それが一段落して1Fに来た。いわき市内のホテルに住み、休日は好きな競輪を見に行くことが多い。
馬場 裕之さん
神奈川県出身。いわき市内のアパートに住んでいる。2012年に1Fに来て、多核種除去装置「アルプス」のケーブル敷設や撤去作業などを行ったのが最初の仕事。1Fに来てからゴルフを始めた。
久保田 稔さん
大熊町出身。現在は栃木県の塩原に自宅があり、平日はいわき市内の会社の寮にいる。もともと、計装、配管が主な仕事だったが、2011年7月に1Fに来て以来、電気工事や配管工事を中心に行っている。
渡邉 恵一さん
浪江町出身で、現在はいわき市内に在住。1Fに来たのは2012年。休日は月に1、2回、ゴルフをするのが楽しみ。
燃料取り出しを1日でも早くしたいというのが、みんなの願いです。そうすれば、作業をしている人が放射線を受けなくて済みます。そして廃炉が1日でも早く来るように、安全にそつなくやっていきましょう。
- プロフィール
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西村 務さん
出身は北海道。自宅は東京だが、広野の寮に単身赴任をしている。休日はゴルフを月に2回ほどしている。
山田 一廣さん秋田県能代市出身。2014年から、小名浜で3号機原子炉建屋カバーの工事を行っていたが、それが一段落して1Fに来た。いわき市内のホテルに住み、休日は好きな競輪を見に行くことが多い。
馬場 裕之さん神奈川県出身。いわき市内のアパートに住んでいる。2012年に1Fに来て、多核種除去装置「アルプス」のケーブル敷設や撤去作業などを行ったのが最初の仕事。1Fに来てからゴルフを始めた。
久保田 稔さん大熊町出身。現在は栃木県の塩原に自宅があり、平日はいわき市内の会社の寮にいる。もともと、計装、配管が主な仕事だったが、2011年7月に1Fに来て以来、電気工事や配管工事を中心に行っている。
渡邉 恵一さん浪江町出身で、現在はいわき市内に在住。1Fに来たのは2012年。休日は月に1、2回、ゴルフをするのが楽しみ。
- お仕事内容
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原子炉圧力容器や格納容器に温度計を設置したり、設置済みの温度計の交換や管理をするほか、電気関係の設備の設置や管理など、東芝と協力企業が分担して作業に当たっている。