1 FOR ALL JAPAN 廃炉のいま、あした

1Fを守る仲間たち

2017年6月12日

INTERVIEW 30 タンクが1つできるたびに仕事が形になったと実感します

豊川 正修さん 豊川とよかわ 正修まさのぶさん
株式会社日向工業所
タンク組立班長はんちょう
藤縄 勉さん 藤縄ふじなわ つとむさん
株式会社ジャスコ
タンク検査班長はんちょう
鈴木 聡さん 鈴木すずき さとしさん
株式会社協栄工業
仮設電気班長はんちょう
中村 修さん 中村なかむら おさむさん
東京動力株式会社
付帯作業班長はんちょう

 地下水バイパス、サブドレン、陸側遮水壁しゃすいへきなどの整備によって、新たな汚染おせん水の発生は減ってきましたが、それでも汚染おせん水をどうするかは、廃炉はいろに向けてむずかしい作業の一つです。H2エリアでは、そうした汚染おせん水を一時的に貯めておくために、IHIプラント建設とその協力会社によるチームが力を合わせてタンク44基の建設を進めています。今回は、そのタンク建設工事を、さまざまな面から支える4人の班長はんちょうの方々にお話をうかがいました。

わかい人たちにこれまでの経験を伝えながら仕事を進めている

みなさんは、どんな仕事をしているのですか。
豊川 正修さん

豊川さん:

 私たちタンク組立はんは、タンクをつくるための資材をトラックから下ろして、それを組み立てるまでを担当しています。つまり、溶接ようせつの手前までが私たちの仕事です。日向工業所全体で120人が1Fで仕事をしていますが、そのうちの18人がこの仕事をしており、あと1グループの10人と協力して作業を進めています。

藤縄さん:

 豊川さんたちが組み立てたタンクは、専門の溶接ようせつ士の方が溶接ようせつして完成しますが、そこできちんと溶接ようせつできているのかを検査するのが、私たちタンク検査はん約30人の仕事です。主に「非破壊検査ひはかいけんさ」という方法を使い、本体にれることなく検査をします。

鈴木さん:

 溶接機ようせつきや照明など、工事に使う機械を動かすには電気が必要ですが、作業をするのは屋外なのでコンセントがありません。そこで、屋外でも電気を使えるようにするのが私たち仮設電気はんの仕事です。発電機から分電盤でんばんまで配線をして、仮に設けたコンセントから電気をとれるようにします。

中村さん:

 私たち付帯作業はんは、工事に使う資材を小名浜にある資材ヤードから運び入れたり、1Fで使わなくなった資材や廃棄物はいきぶつを運び出したりするのが主な仕事です。また、資材にきずがつかないように保護するのも大切な仕事です。

これまでも1F構内でタンクの建設をしていたのですか。
藤縄 勉さん

豊川さん:

 2014年7月から2015年9月にかけて、J2、J3エリアで、ほぼ同じような規模きぼでタンクの建設をしました。今回の工事では、20代のわかい人たちも新たに加わっているので、前回の経験を伝えながら仕事を進めています。それでも、すでに開始から1年近く経ったので、かなりたのもしく成長していますね。現在、55日でタンク1基を建設するペースですが、それをどうやれば短くできるかを検討けんとうしています。

藤縄さん:

 私は、今回の工事のために2016年5月に初めて1Fに来ました。作業の時間が限られていて装備そうびも特別ですから、最初のうちはここでの作業に慣れるまで時間がかかりました。それでも同じチームのみなさんと、どうやったら安全に仕事ができて、しかも早く作業が終わるのかを話し合ってきました。

みんなの意見を取り入れて仕事をするうち現場にいる300人の名前をほとんど覚えた

この作業でむずかしいのはどういう点ですか。また、それに対してどんな工夫をしていますか。
鈴木 聡さん

豊川さん:

 タンクの溶接ようせつ作業があるので、現場では燃えにくい綿でできた防燃服を着て作業をしています。ところが、この防燃服は夏になると暑くて大変なんです。そこで、熱中症対策ねっちゅうしょうたいさくとして、朝は飲みすぎない程度にたっぷりと水を飲むようにしています。また、防燃服の上から、ファン(小型扇風機こがたせんぷうき)が付いたジャンパーを着て、少しでもすずしくする工夫をしています。

中村さん:

 完成したタンクの数が増えてくると、資材の上げ下ろしをする場所が減ってくるのがむずかしい点ですね。私たちはクレーンを搭載とうさいした中型のトラックで資材や廃棄はいき物を運んでいるのですが、現場ではタンクの部材を運ぶ大型トレーラーを優先ゆうせんしなくてはいけません。そこで、不要になったものは速やかに外に運び出したり、仮置き場を整理したりして、私たちが作業する場所を確保しています。

藤縄さん:

 作業時間と私たち検査の時間をうまく調整する工夫をしています。例えば、タンクの溶接ようせつには火を使いますが、塗装は溶剤を使うので火気厳禁げんきんです。そこで、溶接ようせつ塗装とそうが重ならないよう、組み立て作業の間に休憩きゅうけい時間をとって、その間に検査や塗装とそうの作業をするという手順を組んでいます。

1Fで作業をするうえで大切なことは?

鈴木さん:

 電気の仮設という私の仕事は、タンクそのものをつくるのではなく、使う人が安全でスムーズに仕事できるように支えるのが目的です。ですから、現場でのコミュニケーションが非常に大切です。「これはうまく使えるね」「これでは使いにくいなあ」「こうしたらいいのでは」というみなさんの意見を取り入れることで、少しずつ改善かいぜんできるのです。そんなやりとりをしていくうちに、現場にいる約300人の名前のほとんどを覚えることができました。

つくったタンクがテレビに映り家族に仕事を見てもらえたのがうれしい

この仕事をやってよかったと感じるのは、どういうときですか。
中村 修さん

藤縄さん:

 なんといっても、最終検査で合格をもらえたときですね。「これでひと安心。さあ次のタンクにとりかかろう」という意欲いよくがわいてきます。

豊川さん:

 新聞の航空写真で、私たちがつくったタンクが写っているのを見たときは、達成感を覚えました。私たちのチームのタンクは青いのですぐにわかるんです。J2、J3の前にも、H8、G3エリアで建設しましたから、「だいぶつくったんだな」と実感します。

中村さん:

 私は直接タンクをつくっているわけではありませんが、それでもテレビでタンクがうつった場面を見て、自分も少しはこれに関わっているんだなと、やりがいを感じました。家族にも見てもらえてうれしかったですね。

鈴木さん:

 私も同じです。私があつかう電気というのは目に見えないものですが、それがタンクという形になったと思うと感無量です。

ところで、休日はどのようにお過ごしですか。
集合

藤縄さん:

 体を動かすのが好きなので、仲間や協力会社の人たちと一緒いっしょに、勿来にあるグラウンドでフットサルを楽しんでいます。また、この冬は日帰りで5、6回ほど、会社の人たちと磐梯山に行ってスノーボードをしてきました。

鈴木さん:

 私もスポーツが好きで、冬はよくスキーをしていたのですが、福島の浜通りではあまり雪がらないので、休日はあまり運動しなくなってしまいました。その代わり、昔読んだマンガを、大人になった今、まとめて読み返すのを楽しみにしています。マンガ喫茶きっさやインターネットで何十冊も一気に読むのが楽しいですね。

今後に向けての意気みをお願いします。
豊川 正修さん

豊川とよかわ 正修まさのぶさん

青森県八戸市出身。会社のある神奈川県に出張に出ていたら、さらにそこから1Fに出張となった。仕事の後や休日は、テレビでテニス、野球、相撲すもうなど、スポーツ番組を観戦している。

藤縄 勉さん

藤縄ふじなわ つとむさん

東京都出身。H2エリアのタンク建設工事のために、2016年5月から1Fに派遣はけんされた。現在はいわき市内に住んでいる。

鈴木 聡さん

鈴木すずき さとしさん

新潟県十日町市出身。いわき市在住。震災しんさい前は柏崎原子力発電所で仕事をしていたが、震災しんさい直後に建屋の制御盤せいぎょばんに電気を送るため、緊急部隊のメンバーとして1Fに来た。

中村 修さん

中村なかむら おさむさん

いわき市四ツ倉出身。震災しんさい前は主に2Fが仕事場で、1Fには定期点検作業でおとずれていた。りが趣味しゅみで、とくにアイナメやソイのりが好き。

44基のタンク建設に向けて、チームIPC(IHIプラント建設)は一丸となって取り組んでいます。協力会社を合わせて33社。汚染おせん水タンクを一刻いっこくも早く建てて、少しでも廃炉はいろに役立てればと思います。

プロフィール
豊川とよかわ 正修まさのぶさん

青森県八戸市出身。会社のある神奈川県に出張に出ていたら、さらにそこから1Fに出張となった。仕事の後や休日は、テレビでテニス、野球、相撲すもうなど、スポーツ番組を観戦している。

藤縄ふじなわ つとむさん

東京都出身。H2エリアのタンク建設工事のために、2016年5月から1Fに派遣はけんされた。現在はいわき市内に住んでいる。

鈴木すずき さとしさん

新潟県十日町市出身。いわき市在住。震災しんさい前は柏崎原子力発電所で仕事をしていたが、震災しんさい直後に建屋の制御盤せいぎょばんに電気を送るため、緊急部隊のメンバーとして1Fに来た。

中村なかむら おさむさん

いわき市四ツ倉出身。震災しんさい前は主に2Fが仕事場で、1Fには定期点検作業でおとずれていた。りが趣味しゅみで、とくにアイナメやソイのりが好き。

お仕事内容

H2エリア(地区)のタンク設置工事

H2エリアでは、2016年6月から、IHIプラント建設とその協力会社によって、汚染おせん水タンク44基の建設が進められている。2017年3月28日現在で16基が完成し、11月までにすべての建設が完了かんりょうする予定。

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