1 FOR ALL JAPAN 廃炉のいま、あした

1Fを守る仲間たち

阪和 福島営業所のみなさん

2017年7月14日

INTERVIEW 32 「なんとか地元の力になりたい」そう考えてこの仕事を選んだ

海津 博之さん 海津かいづ 博之ひろゆきさん
株式会社阪和
福島営業所 所長
石嶋 康二さん 石嶋いしじま 康二こうじさん
株式会社阪和
福島営業所 福島事業所 主任
鈴木 浩平さん 鈴木すずき 浩平こうへいさん
株式会社阪和
福島営業所 福島事業所 工事管理担当
遠藤 真弘さん 遠藤えんどう 真弘まさひろさん
株式会社阪和
福島営業所 福島事業所 工事管理担当

 1Fのある福島県浜通りは、内陸部にくらべると冬の冷えみはきびしくありませんが、それでも冬には気温が氷点下になります。そこで大切なのが、原子炉げんしろ冷却水れいきゃくすいや建屋に残っている滞留水たいりゅうすいこおらないように保温すること。廃炉はいろ作業を順調に進めるために欠かせない保温工事を担当している阪和の方々に、お話をうかがいました。

久しぶりに1Fにもどってみて
明るい雰囲気ふんいきになったことにおどろいた

みなさんは、1Fでどのような仕事をしているのですか。
海津 博之さん

海津さん:

 もともと、原子力発電所の保温工事というのは、高温の蒸気じょうきを冷やさないようにする工事が主です。ところが、1Fでは発電をしていませんので、そうした工事は必要ありません。その代わりに1Fで大切なのは、常温の水を保温する工事です。つまり、原子炉げんしろを冷やすための冷却水れいきゃくすいや、建屋に残った滞留水たいりゅうすいなどがこおらないようにするための工事なのです。そのほか、建物の保温工事や空調ダクトの結露けつろを防ぐ工事も行っています。1F構内では、協力会社を合わせて約70人が働いています。

石嶋さん:

 私は、私は、冷却水れいきゃくすい配管、滞留水移送配管たいりゅうすいいそうはいかん、地下水移送配管を通る水がこおらないように、凍結防止材とうけつぼうしざいばれる資材を取り付ける仕事を主にやっています。また、事務棟じむとうで空調ダクトの結露対策けつろたいさくをしたり、雑固体廃棄物焼却設備ざっこたいはいきぶつしょうきゃくせつびでは火傷やけど防止のための工事にも携わっています。

鈴木さん:

 私は2016年10月から、板金の技術を活用して汚染水おせんすいタンクに雨どいを取り付ける作業をしています。雨どいがないと、雨水がそのまま地面に落ちてしまい、汚染水おせんすいになるおそれがあるからです。そこで、タンクに屋根を付けて、汚染おせんされていない雨水を、排水管を通して外に流れるようにするわけです。

遠藤さん:

 私は、主に雨水を移送する配管の保温工事などを、石嶋さんとよく一緒いっしょに工事をしてきました。実は、以前は歯科技工士をしていたのですが、1年前からこの仕事を始めました。

遠藤さんが転職しようと決心したのはなぜですか。
遠藤 真弘さん

遠藤さん:

 私は富岡町出身で、自宅じたくも仕事場も避難区域ひなんくいき内にありました。しばらくしてから、いわき市内で仕事を始めましたが、帰れない自宅じたくを思ううちに「なんとか地元の力になりたい」と考えるようになったのです。そこで、たまたま知り合いがこの会社いたこともあって入社することになりました。1Fでの仕事には、すぐになじみました。それまでも近くの実家に何度か来ていたので、除染じょせんが進んで周辺が整備されてきたことも知っていました。1Fの仲間はみな明るく仕事をしていますし、食堂で和気あいあいと話しているのを見て、この仕事を選んでよかったと感じましたね。

鈴木さん:

 確かに、1Fの雰囲気ふんいきはずっと明るくなりました。私は震災直後しんさいちょくごにしばらく1Fで仕事をしたことがあるのですが、そのときはJビレッジで全面マスクの重装備じゅうそうびをつけて1Fにやってきました。久しぶりに来てみると、普通ふつうの作業着のまま構内に入れたので、その変化におどろいたものです。

家族に自慢じまんできる仕事をしていることが
大きなやりがいとなっている

今の仕事にやりがいを感じるのは、どういうときですか。
石嶋 康二さん

海津さん:

 保温の仕事というのは、廃炉はいろ作業にとって必要ではありますが、中心的な仕事というわけではありません。それでも、私たちが設備を取り付けて、それがきちんと動いたときはやりがいを感じますね。以前、発電所の建設にたずさわっていたときのことですが、すべての工事が終わり、最後に発電機がまわって電気がついたときには、「自分たちの仕事が少しでも役に立てた」という達成感を覚えました。

石嶋さん:

 1Fの工事はよくテレビに取り上げられます。このあいだも、私が手がけた建物がテレビで放映ほうえいされたのを見て、一部だけとはいえ「自分がこれにたずさわった」と思い、むねがいっぱいになりました。家族にも、この配管は自分がやったんだよと話せるのが、大きなやりがいです。

遠藤さん:

 毎日、「ここまでやろう」と思っていたことを、きっちり無事に終えることができたときに喜びを感じます。とくに、工事が無事に工期内に終わったときには、「よかった」という安心感と達成感がありますね。期間内に仕事を終える大切さは、以前やっていた歯科技工士でも同じですが、1Fの仕事は規模きぼが大きく、工期も長いので、終わったときの気分はまた格別です。

作業前、休憩時間、作業後と
3回の打ち合わせで万全を期す

仕事で工夫している点はありますか。

海津さん:

 まだまだ放射線量ほうしゃせんりょうが高い現場もありますので、現場での作業時間をなるべく少なくする工夫をしています。ほかの現場では、材料を持ちんでその場で加工するということが一般的いっぱんてきですが、1Fではそうした余裕よゆうはありません。工場の方で、可能な限り加工しておいて、現場では取り付けるだけといった最低限の仕事におさえるようにしています。

鈴木さん:

 全面マスクを付ける現場では、視界しかいが悪くて声も通りにくいので、コミュニケーションをとりにくいのがむずかしい点です。それをおぎなうために、前もって打ち合わせをしっかりしておくようにしています。朝のミーティングは毎日30分から40分くらい。途中とちゅう休憩時間きゅうけいじかんにも、10分ほど話し合います。そして、作業が終わった夕方には、翌日よくじつ役割分担やくわりぶんたんや作業の説明に、30分ほどのミーティングをしています。

仕事が終わった後や休日はどのように過ごしていますか。
鈴木浩平さん

遠藤さん:

 つかれたといってぐったりしていると、だるくなってしまうので、休日はつかれていても、あえて体を動かすようにしています。時間があればジョギングをしていますが、最近になって山登りも始めました。きっかけは、おととし友人にさそわれていきなり富士山に登ったこと。山の楽しさを知って、去年も富士山に行きました。それ以後、休日にはいわき周辺の山にも登っています。

鈴木さん:

 仕事が終わっていわき市内の自宅じたくに帰ると、早くても午後7時くらい。5さいの男の子と3さいの女の子がいるので、平日は子守りをしたりお風呂ふろに入れたりしているうちに、1日が終わってしまいます。休日ももっぱら子どもと遊んでいますね。あとは、会社でゴルフをしたり、飲み会に参加するくらいでしょうか。

石嶋さん:

 私の家は田村市にあるので、通勤つうきんは車で1時間ほど。2さいと1さいの子がいるので、鈴木さんと同じく、平日は帰宅きたくしたらもっぱら子守りです。また、小学生のときから野球をやっているので、今でも雪がない季節の休日には草野球を楽しんでいます。

海津さん:

 休日は子どもと遊んだり、ゴルフを楽しんだりしています。ゴルフには月に2回ほど行っているのですが、なかなか上達するのはむずかしいですね。

海津 博之さん

海津かいづ 博之ひろゆきさん

群馬県伊勢崎市出身。震災時は柏崎の原子力発電所に勤務きんむしていたが、震災しんさい直後から1Fに。お酒は好きだが強くないので、毎日ゆっくりと晩酌ばんしゃくを楽しんでいる。

石嶋 康二さん

石嶋いしじま 康二こうじさん

田村市出身。10年前の入社からずっと1Fで働く。震災しんさいが起きたときは構外の事務所にいた。野球部員だった高校時代には県大会のベスト4まで勝ち進んだ。守備位置はレフト。

鈴木 浩平さん

鈴木すずき 浩平こうへいさん

いわき市出身で、双葉郡で育ち、現在はいわき市内に住んでいる。震災しんさい直後にしばらく1Fで仕事をした後、広野火力発電所に。2016年10月に1Fにもどってきた。

遠藤 真弘さん

遠藤えんどう 真弘まさひろさん

富岡町出身で現在はいわき市在住。体を動かすのが好きで、平日も仕事が終わって時間があればジョギングをしている。会社に入ってからゴルフも始めた。

着実に廃炉はいろに向かっています。ときには作業が思うように進まないこともあるかもしれませんが、間違まちがいなく前に進んでいます。力を合わせて頑張がんばりましょう。

プロフィール
海津かいづ 博之ひろゆきさん

群馬県伊勢崎市出身。震災時は柏崎の原子力発電所に勤務きんむしていたが、震災しんさい直後から1Fに。お酒は好きだが強くないので、毎日ゆっくりと晩酌ばんしゃくを楽しんでいる。

石嶋いしじま 康二こうじさん

田村市出身。10年前の入社からずっと1Fで働く。震災しんさいが起きたときは構外の事務所にいた。野球部員だった高校時代には県大会のベスト4まで勝ち進んだ。守備位置はレフト。

鈴木すずき 浩平こうへいさん

いわき市出身で、双葉郡で育ち、現在はいわき市内に住んでいる。震災しんさい直後にしばらく1Fで仕事をした後、広野火力発電所に。2016年10月に1Fにもどってきた。

遠藤えんどう 真弘まさひろさん

富岡町出身で現在はいわき市在住。体を動かすのが好きで、平日も仕事が終わって時間があればジョギングをしている。会社に入ってからゴルフも始めた。

お仕事内容

株式会社阪和

1939年創業そうぎょう。1947年に阪和石綿工業株式会社として設立。以来、保温・保冷技術の専門家せんもんか集団として、火力・原子力発電所や石油化学施設しせつなどの大規模だいきぼ施設しせつにおいて、熱エネルギーの有効利用に取り組んでいる。

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