2017年8月8日
- 高森 清人さん
- 前田建設工業株式会社
東北支店 福島第一原子力伐木処理作業所
所長
- 鈴木 律征さん
- 日起建設株式会社
東日本事業部 第3工事部
- 藍原 浩介さん
- 東京鋪装工業株式会社
関東第二支店 茨城営業所
工事長
- 山口 洋さん
- サンエス株式会社
放射線管理部
- 東海林 一之さん
- 株式会社 丹野林業建設
2017年3月、1Fの入り口近くの敷地内にヘリポートが完成し、5月から運用できるようになりました。負傷者や急病人を運ぶことを目的としたもので、双葉町郡山海岸にあるヘリポートの利用にくらべて、病院まで10分ほど早く運ぶことができます。短期間でこの工事を無事に完成させた前田建設工業とその協力会社の方々に、お話をうかがいました。
ケープルを間違って切らないように
人力で穴を掘る必要があった
どのようにお仕事を分担したのですか。
高森さん:
仕事をお受けしたのが2016年7月です。私は所長として全体のまとめ役となり、計画を立てたり、関係する部署との調整などを進めました。また、協力会社の方々に工事を分担してもらい、全体の工事の管理も行いました。
鈴木さん:
私たちの会社は、工事の準備から完成まで、ヘリポートとなる場所の埋設管移設工事、地盤改良工事、盛土工事などを担当しました。
藍原さん:
私たちは、東京鋪装工業という名前のとおり道路や駐車場の鋪装を行う会社です。今回は、ヘリポート着陸帯と呼ばれる、ヘリコプターが発着する部分の本体工事を2017年1月から2月にかけて行いました。
山口さん:
私は放射線管理の担当です。ヘリポートとなる前の駐車場は砕石敷でしたが、表面の砕石と盛り土を取り除くと、その下は震災当時の土壌が残ったままなので、作業員に対して装備の指示をしたり、作業環境の管理などを行いました。
東海林さん:
ヘリコプターが発着するためには、その飛行の妨げになる周辺の木を切らなければなりません。そのために、1F構内や構外の木を切る作業を行いました。
1Fにヘリポートを造るというのは初めてですよね。
高森さん:
どんな工事にもあることですが、実際に現地で調べてみると、設計図面からは分からない問題点がいくつも出てきました。すぐ横が崖だと分かり、そこにある擁壁への影響を考慮して配置の変更を行ったり、地中に埋まっているものを念入りに調べたり、信号柱を移動させたりと、関係部署との調整を何回も行いました。
鈴木さん:
地中のどこに何が埋まっているのか、はっきりとした位置を確かめるために、本工事前に全面的に穴を掘って調査することになりました。ケーブルなどを誤って切断してはいけないので、表面の路盤砕石部分を重機で撤去したあとは人の力で掘ったのです。こうした調査に1カ月ほどかけました。
藍原さん:
ヘリポートは形として残るものです。安全性ももちろんですが、最新のコンクリート鋪装の機械を使い、見た目もきれいになるように気を使いました。今回の工事では排水を考えて、ヘリポートの中央部を高く、周辺部を低くして水を流す形にしてあります。これはあまり経験のない工事でしたが、なんとかうまくいきました。これまでかなりの大雨もありましたが、まったく問題は起きていません。
急ぎの仕事だからこそ
安全を管理することが大切
本体工事以外に難しい点はありましたか。
東海林さん:
飛行の邪魔になる木を切ることは先ほども言いましたが、発電所の敷地内だけでなく敷地外にも切らなくてはならない木がありました。地主さんから「この木は残しておいてほしい」という要望もあったので、調整が難しかったですね。安全に差し支えないように一部を残す方法もありますが、それで木が生き残れなくては意味がありません。対象となる木1本ごとに状況を見極め、関係者の方々と確認を取りながら伐採をしてきました。
山口さん:
また、木を切るために林の中で作業をしてもらうときは、線量当量率を適時確認し被ばく線量に気をつかいました。林の中は除染が終わっていないので、毎時10~13マイクロシーベルトほどあり、防護服を着用してもらいました。たった15メートルしか離れていないのに、ヘリポートで働く人は普通の作業着でもよく、木を伐採する人は防護服ということもありました。規則に従って、いろいろと難しい要望を度々お願いしましたが、みなさんに理由を説明しますと、快く遵守事項を守ってもらえたので、ありがたいと思っています。
高森さん:
ヘリポートは駐車場跡地に造ることになったので、発電所構外という扱いでした。ですから、それまで仕事をしてきた構内とは適用されるルールが違っていて、仕事の進め方が必ずしも同じではありません。私たちは少しでも早く仕事を進めたかったのですが、そこに山口さんのようにしっかりブレーキをかけてくれる人がいたので、安全が守られたのだと感じます。
仕事を進めるうえで工夫した点はありますか。
東海林さん:
私の会社は林業が主な仕事なので、防護服や全面マスクを付けて作業をしたのは初めてです。慣れないものですから、視界が狭いし、すぐには距離感がつかめませんでした。一番困ったのは、寒暖差と汗により眼鏡と全面マスクがくもることでした。そこで同じチームの仲間に教えてもらったのですが、全面マスクの内側に台所用洗剤を塗ってからティッシュでぬぐい、それを乾かすとくもらないのです。マスクのメーカーからくもり止めも売られていますが、洗剤のほうが効果がありましたね。
高森さん:
1Fは誰もが知っている有名な現場ですし、テレビにも出るので何をするにしても目立ちます。しかも、その入り口近くで作業をするのですから、目立たないわけがありません。1Fで仕事をする仲間はもちろん、視察や見学に来る方々も、みなさんこの前を通るため、常に作業を見られているという緊張感がありました。そこで、工夫というわけではありませんが、チームのみんなには「とことん見られながら安全に施工をしよう」と声をかけることにしたのです。結果的に、仲間意識がとても強くなり、かえって良いムードがつくれたと思います。
そして、2017年3月にヘリポートが完成しました。
鈴木さん:
まさに1Fの顔ともいえる場所に、形としても残る仕事をしたことは感無量です。これまでの仕事とは違って短期集中の大変な工事でしたが、人と手間をかけてやったかいがあり、工期に間に合ったのはよかったですね。そんな工事に、チームの一員として協力できたということにやりがいを感じます。いつもは、お互いに照れくさくて口にしませんが、お酒が入るとそうしたことをしみじみと話し合うこともよくあります。
ところで、休日はどのようなことをなさっていますか。
高森さん:
前田建設の関係者には、ゴルフ、登山、マラソン、釣り、温泉に出かけるといった行動派の人たちがたくさんいて、よく私も誘われますが、私は動くのが苦手なんです。でも、今年から前田建設のIF土木工事は完全週休2日制になりましたので、これからはあちこち足を伸ばしてみようかと考えています。
山口さん:
私が今住んでいるのは、いわき市の北部にあって広野町と接する末続というところです。宿舎にインターネットは整備されていますので、休日はもっぱらネットを楽しんでいます。
高森 清人さん
兵庫県出身で、現在は大阪府吹田市に自宅がある。休日は、広野町にある前田建設宿舎で、静かに読書をするかテレビを見ていることが多いが、たまにいわき市内に「探検」に行く。
鈴木 律征さん
埼玉県草加市出身で、現在は広野町の宿舎にいる。1Fは4年目で、構内ではこれまでさまざまな工事をしてきた。週末は奥さんの食事を楽しみに自宅に帰る。
藍原 浩介さん
福島県二本松市出身で、入社後は全国各地で仕事をして、現在は広野町内のホテルから通っている。地元福島の復興のため、早く収束することを願っている。
山口 洋さん
宮崎県出身。現在は静岡県掛川市に自宅がある。1Fに最初に来たのは震災半年後の2011年秋。当初は1F構内に出入りする車の汚染検査も行った。
東海林 一之さん
仙台市泉区に自宅があり、広野の事務所から通っている。週末は金曜日の夜に仙台に帰り、体調を崩している母親の面倒を見て日曜日の夜に戻ってくる。
この6年間で1Fは様変わりをして、仕事の環境は格段によくなっていると実感しています。長い廃炉作業の中では職員や作業員も入れ替わっていきますが、これまでに得た教訓や情報を生かして、仲間をいたわり教え合いながら取り組んでいきましょう。
- プロフィール
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高森 清人さん
兵庫県出身で、現在は大阪府吹田市に自宅がある。休日は、広野町にある前田建設宿舎で、静かに読書をするかテレビを見ていることが多いが、たまにいわき市内に「探検」に行く。
鈴木 律征さん埼玉県草加市出身で、現在は広野町の宿舎にいる。1Fは4年目で、構内ではこれまでさまざまな工事をしてきた。週末は奥さんの食事を楽しみに自宅に帰る。
藍原 浩介さん福島県二本松市出身で、入社後は全国各地で仕事をして、現在は広野町内のホテルから通っている。地元福島の復興のため、早く収束することを願っている。
山口 洋さん宮崎県出身。現在は静岡県掛川市に自宅がある。1Fに最初に来たのは震災半年後の2011年秋。当初は1F構内に出入りする車の汚染検査も行った。
東海林 一之さん仙台市泉区に自宅があり、広野の事務所から通っている。週末は金曜日の夜に仙台に帰り、体調を崩している母親の面倒を見て日曜日の夜に戻ってくる。
- お仕事内容
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救急搬送用ヘリポート建設
前田建設とその協力会社が、1Fの門を入ってすぐの新事務本館脇に、救急患者を搬送するヘリポートを建設。2016年7月に設計・計画が始まり、2017年3月に竣工した。