2017年9月15日
- 田保 翔伍さん
- 関電プラント株式会社
福島事務所 工事担当
- 上野 政之さん
- 岬工業株式会社
取締役
- 藤本 和彦さん
- 岬工業株式会社
福島営業所 係長
- 岸下 克己さん
- 岬工業株式会社
福島営業所 放射線管理担当者
- 岸 信幸さん
- 株式会社 岸組
取締役部長
1Fの構内には汚染水をためるタンクが数多く建っています。そして、放射線量が高いタンクの敷地内に雨水がたまると、それがまた汚染水となる恐れがあります。そんな雨水をポンプでくみ出し、PE管(ポリエチレン製の排水管)を通して別の場所に移送する設備を設置する工事が、構内のさまざまな箇所で進められています。今回は、関電プラントとその協力会社の方々にお話をうかがいました。
安全で効率的な作業ができるよう
排水管の経路を決めていく
お仕事をどう分担されているのですか。
田保さん:
私は作業全体を管理する立場です。雨水移送設備の工事は以前から続いて行われていて、私が所属する関電プラントは2016年6月から始まった第3期工事-1から参入させていただいております。現在、第3期工事-1はほぼ終了しており、まもなく第4期として別の場所で同じような工事にとりかかる予定です。
上野さん:
私たち岬工業は、実際に排水管を設置する作業のほか、仮設の排水ホースを取り付ける作業などを行っています。私は主に現場での総括をしており、藤本が排水管を通す経路を考えて図面を描く仕事、岸下が現場での放射線管理の仕事をしています。
岸さん:
私は、作業に必要な足場を組んだり、岬工業さんといっしょに排水管の支持台設置を行っています。排水管は地面に埋めるのではなく、足場に使われる鉄製のパイプを組んで下で支えるかたちになっているのです。また、排水管の継ぎ目をつないでいく「融着」という作業もしています。
お仕事を進めるうえで、どういうところに気をつけていますか。
藤本さん:
排水管の経路を決定する際には、許される範囲内で、現場の人ができるだけ作業をしやすい道筋にするように心がけています。経路は、必ずしも短ければいいわけではありません。たとえば途中に草むらがあると、放射線量が高い可能性があるために、全面マスクや防護服などの装備が必要になってしまいます。また、すでにある配管との兼ね合いも大切です。そうしたことをすべて考えて、関係部署に相談しながら安全で効率的な工事ができるようにしなくてはなりません。
岸下さん:
1F構内は、レッド、イエロー、グリーンの3つのエリアに分けられて、それぞれ装備が決められています。しかし、同じグリーンエリアでも、装備を追加するかどうかの判断は企業に任せられています。そこで、作業場所や作業内容を考えて、関電プラントの方と相談しながら装備を決めていくようにしています。
全国から優れた職人さんが集まるので
毎日がいい勉強になっている
これまでは関西でのお仕事だったとうかがいました。
田保さん:
私が所属する関電プラントは、社名でお分かりのように関西電力の関連会社で、1Fで仕事をするのは今回が初めてです。原子力発電所に携わる者として、少しでも役に立てればという気持ちで1Fにやってきました。ただ、来たばかりのころは、関西とはルールや作業の段取りが違うことにとまどいました。放射線管理の基準も違います。使用する機械や工具の段取りも違い、それらをそろえることから始まりました。まさにゼロからのスタートでした。
上野さん:
私たちも長く関西の原子力発電所のプラントで仕事をしてきたので、作業をしていくうえで体に染みついた習慣や考え方があります。そのため、とっさの場合にそうした反応が出てしまい、「これでいいのかな」と迷うことがありましたが、ようやく慣れてきました。
1Fには全国からプロフェッショナルが集まっています。
岸さん:
私は1Fに来て3年半近くになりますが、全国から優れた同業の人たちが集まっているので、勉強になることが多いですね。私の専門である足場の組み立て一つをとっても、見習うべきことがたくさんあります。私もみなさんと同じく、関西の発電所で仕事をしてきましたが、1Fでは装備としてゴム手袋を使う点が大きく違っています。ところが、ゴム手袋で足場に使う鋼管パイプを扱うと、すべりやすいのです。そこで、ほかの現場を見てみると、手すりのすべてにすべり止めが貼ってある現場を発見しました。これは、ほかの発電所では見たことがありません。装備や道具にしても、便利なものを見ることができました。毎日が勉強という感じです。
上野さん:
足もとは意外と注意が向くのですが、手すりに貼るという発想はありませんでした。岸さんがこうした細かいことに気づいてくれて、「手すりにすべり止めを貼りましょう」と提案してくれたのは、うれしい改善活動でした。
田保さん:
そうした意見を言い合えるのも、和気あいあいとした雰囲気があるからだと思います。先に1Fに来ていたみなさんが、来たばかりの私たちをいろいろと手助けしてくれて、非常にありがたく思っています。
同じ宿舎で夕食をいっしょに食べることで
コミュニケーションをとっている
これまでの仕事で難しかったことはありますか。
藤本さん:
ポリエチレン製の排水管をつなぐには、電気で熱を発生させ継ぎ目を溶かして「融着」するのですが、雨が降るとこの作業ができません。天気予報とにらめっこしながら予定を立てることになるのですが、「予報では晴れるはずだったのに、雨が降ってきてしまった!」ということもあり、なかなか思い通りにいきません。
岸下さん:
先ほども触れましたが、グリーンゾーンだから自分たちは軽い装備で作業をしているのに、近くで作業している企業は全面フル装備ということもありました。関西ではそういうことは経験してなかったので、心配になって関係者に相談したこともありました。放射線管理の考え方に違いがあるということが、ようやく分かってきましたが、慣れるまではとまどいましたね。
田保さん:
1Fでは全体的にエリアは決められていますが、そのなかでも作業によって装備をどうするかという細かいところは、各企業に任されています。そこで岸下たち放射線管理員の判断が重要になってきます。しっかりと判断してくれるので、工事担当者としても非常に助かっております。
とまどいを乗り越えるために、どのような工夫をしましたか。
上野さん:
やはり、コミュニケーションが大切ですね。工事担当者や作業班長を中心に、ここはこうしよう、こうしようとみんなで話し合って、みんなで認識を共有していくことを心がけました。仕事を離れても、コミュニケーションを大切にしています。岬工業では、岸さんも含めて広野の民宿を借りて住んでいます。せっかく一緒の場所で寝起きしているのですから、みんなで声をかけあって夕飯を食べることにしています。
休日はどのように過ごしていますか。
田保さん:
周囲にゴルフ好きの人が多いので、福島に来てからゴルフを始めました。
また、仙台や東京に一人で出かけたり、友人と一緒に野球観戦に行ったりしています。
ひいきのチームは東北楽天イーグルスです。今では地元ですからね。
上野さん:
私は、月の半分は福島、半分は福井という生活をしています。福井の自宅に帰ったときは、妻といっしょに畑作業をするのが楽しみですね。ジャガイモのような、あまり手がかからない作物を育てています。今年は孫がトマトを食べたいというので、トマトを育てました。
田保 翔伍さん
福井県敦賀市出身。大飯原子力発電所で5年間勤めたのち、出張という形で2017年3月から1Fに。現在はいわき市中心部の平に住んでいる。
上野 政之さん
福井県若狭町出身。趣味は散歩。ゴルフは10年ほど遠ざかっていたが、周囲に影響されてゴルフ熱が復活しつつある。
藤本 和彦さん
福井県小浜市出身。上野さん、岸下さんとともに2016年6月末から1F(いちえふ)に。福井ではサッカーを子どもたちに教えていたので、Jヴィレッジの復活が楽しみ。
岸下 克己さん
福井県美浜町出身。バイクが趣味で、福井にいたときはよくツーリングに出かけていた。福島に来てからは同僚にゴルフを教えてもらっている。
岸 信幸さん
福井県敦賀市出身。2012年3月から1Fに。仕事が終わるとよく仲間とゴルフ練習場に出かける。そして週に1回はコースに出るほどのゴルフ好き。
毎日5000人近い人が働く1Fでは私たちの仕事は小さなものですが、原子力発電所での作業経験を生かしたいという気持ちで、関西からやってきました。オールジャパンの一員として、ともに頑張っていきましょう。
- プロフィール
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田保 翔伍さん
福井県敦賀市出身。大飯原子力発電所で5年間勤めたのち、出張という形で2017年3月から1Fに。現在はいわき市中心部の平に住んでいる。
上野 政之さん福井県若狭町出身。趣味は散歩。ゴルフは10年ほど遠ざかっていたが、周囲に影響されてゴルフ熱が復活しつつある。
藤本 和彦さん福井県小浜市出身。上野さん、岸下さんとともに2016年6月末から1Fに。福井ではサッカーを子どもたちに教えていたので、Jヴィレッジの復活が楽しみ。
岸下 克己さん福井県美浜町出身。バイクが趣味で、福井にいたときはよくツーリングに出かけていた。福島に来てからは同僚にゴルフを教えてもらっている。
岸 信幸さん福井県敦賀市出身。2012年3月から1Fに。仕事が終わるとよく仲間とゴルフ練習場に出かける。そして週に1回はコースに出るほどのゴルフ好き。
- お仕事内容
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1〜4号機雨水移送設備PE管他設置工事
タンク敷地内にたまった雨水を移す配管工事。第3期工事-1から、関西電力の関連会社である関電プラント株式会社とその協力会社が担当している。