2018年5月17日
- 猪狩 実さん
- 株式会社アトックス
福島復興支社 環境施設部 環境運営一課 係長
- 渡邉 高志さん
- 株式会社アトックス
福島復興支社 環境施設部 環境運営一課 主任
- 髙村 幸生さん
- 株式会社アトックス
福島復興支社 環境施設部 環境運営一課 主任
- 林 大幹さん
- 株式会社アトックス
福島復興支社 環境施設部 環境運営一課 班長
- 小森 和幸さん
- 株式会社アトックス
福島復興支社 環境施設部 環境運営一課 班長
- 若松 伸吾さん
- 株式会社アトックス
福島復興支社 環境施設部 環境運営一課 班長
- 三好 健介さん
- 株式会社アトックス
福島復興支社 環境施設部 環境運営一課
今回ご紹介するのは、1Fの廃炉事業や福島の復興事業に力を注いでいるアトックスの方々のうちで、1F構内の放射線測定や放射線管理を担当しているみなさんです。2016年8月に富岡町に開設された同社の福島復興支社でお話をうかがいました。
線量を測定したい地点に出かけて
持ち帰った試料を測定器にかける
どのようなお仕事をなさっているのですか。
猪狩さん:
当社は、震災前から原子炉建屋・タービン建屋など建屋内に設定された管理区域の放射線管理を東京電力さんから委託を受けて実施していました。震災後は1F構内全体で放射線管理が必要になったので、以前からこの業務をしていた当社が構内の管理を受け持つことになりました。私自身は、全体のまとめ役の仕事をしています。
渡邉さん:
私は、作業開始前にメンバーの作業予定の確認や災害防止のためのR-KYの取りまとめを行っています。また、作業中はメンバーの作業状況を把握し、必要に応じ指導・助言を行っています。
髙村さん:
渡邉の補佐的な役割を担当しています。現場に出て作業班長さんたちを取りまとめたり、人が足りないときは現場で手伝ったりと、作業に抜けが出ないようにやっています。
小森さん:
私は、実際に現場に出かけて測定の仕事をしています。一定の面積あたりにどれだけの放射性物質が付着しているかを測定したり、作業員さんが働く場所の線量率の測定をして、それらのデータをまとめる仕事をしています。
三好さん:
私は、以前は伊方原子力発電所内にある当社の四国事業所にいましたが、2016年8月に福島復興支社が開設されると同時に、こちらに転勤になりました。ここでは、現場での測定作業や書類提出の仕事などをしています。
震災直後は測定をする自分たちの
放射線量管理も大変だった
お仕事では大変なこともあると思います。
林さん:
私は現場で作業班長をしていますが、通常の放射線測定に加えて、ときどき臨時の測定業務も入ってきます。例えば、新しく休憩所を建てたので、そこの線量を測ってほしいという話があるのです。仕事の内容は変わらないのですが、普段の仕事に加えて、期限が決まっている仕事を同時に行うのは、神経を使いますね。
若松さん:
私は、震災前には当社の工事課にいましたが、震災後には放射線管理のための人員が必要になり、今の職場に異動してきました。そのため、最初は測定の方法が分からず、すべてを一から覚えるのが大変でした。
小森さん:
仕事の内容ではないのですが、家が富岡町の避難指示区域にあったため、震災直後に家族がばらばらになってしまったのが大変でした。妻は会津若松に避難していたので、週末、車で2~3時間かけて帰っていましたので、家族とゆっくり出来る時間が限られていましたが、今ではいわきに家を買ったので、それも昔話になりました。
震災直後はどんな様子でしたか。
髙村さん:
当初は、私たち自身の線量管理が大変でした。指定された測定地点に行くだけで、もう線量が限界近くになってしまうので、すぐに戻らなくてはなりませんでした。
猪狩さん:
なによりも測定器の数が足りませんでしたし、測定器を動かすための電源を確保するのも難しかったですね。最近は小型でバッテリー内臓の測定器が使用できますので楽になりましたが、100V電源として使用していた車用充電池や発電機は大きくて重かったため、測定しに行くのか、荷物を運びに行くのか分からないような気分でした。
渡邉さん:
震災直後、湯本にある旅館をアトックスの宿舎として借り上げたのですが、そこから満員のバスでJヴィレッジに行くまでが一苦労でした。ご存じのように、さらにJヴィレッジから防護服に全面マスクの装備で1Fまで行っていたので、宿舎と1Fの往復だけでも大変なものでした。
重くて持ち運びにくい鉛の円筒を
みんなの知恵を合わせて使いやすく工夫した
毎日のお仕事で心がけていることはありますか。
三好さん:
毎日、ほぼ同じ作業の繰り返しなのですが、だからこそ現場の変化がないかどうかを確認しながら続けることが大事だと思っています。見た目は変わらないのに、線量が大きく変化していくこともあります。そんなときは、周辺の測定結果と合わせて、しっかりと原因を調査しなくてはなりません。
また、周辺の工事の進み具合を考えながら、測定場所を変えていくということも必要です。作業員の方がたくさん集まるようになった場所には、新しく測定地点を加えようといったことも、関係部署の方と議論しながら決めていきます。
小森さん:
少しでも効率的に作業が進められないか、常にみんなで考えるようにしています。ある仕事と別の仕事を組み合わせたり、4人でやっているものを2人でできないかという工夫をして、これまでもいろいろと提案してきました。
例えば、これまでの仕事でどんな工夫してきましたか。
鉛マットと鉛板を敷き、
鉛の筒を使用している状態
コリメータを使用した測定
林さん:
私たちの業務では、特定の地点での放射線を測定するときに、そのままの状態で測った値と、放射線を通さない鉛で周囲を覆って測った値をくらべるということをします。これによって、地面や周囲からの影響を差し引いた、正確な値が測れるわけです。
このときに使うのが、鉛でできた高さ30cmほどの円筒形をしたコリメータという器具ですが、これが非常に重いのです。災害を発生させずに効率よく運ぶことができないかを私なりに考えて、取っ手をつけたらどうかなど、いくつか提案してみました。
コリメータ用運搬台車
スミアろ紙で汚染を採取しているところ
渡邉さん:
かつては、地表からの放射線の影響がないように、「サイズが畳半分ほどの鉛マット(20kg)」と「影響の度合いを確認するために小さめの鉛板を数枚」を2~3人で運んでいたこともありました。さらに円筒形の鉛です。重くて使いにくかったので、取っ手をつけたり、筒に蓋をつけたり、運ぶための専用の台車をつくったりと、林が中心になって提案をしてくれました。今ではかなり完成度が高くなり、東京電力さんが測定する際に貸してほしいという話があるほどです。
1Fで働く人を守るためのデータだと思うと
責任とともにやりがいを感じる
この仕事をやってよかったと感じるのはどういうときですか。
髙村さん:
私たちの取るデータは、公表されて多くの人が見るものですから、間違えるわけにはいきません。また、万一、どこかで作業中に放射能に汚染されたという事態が起きたときには、私たちのとったデータを参考にして原因を調べることになります。そう考えると、まさに、1Fで作業する人たちを守るためのデータでもあるわけですから、責任を感じると同時に、やりがいも感じます。
若松さん:
私がこの課に異動して放射線について知識が増えたことで、テレビや新聞で放射線量の数字が出てくると、家族に分かりやすく解説できるようになりました。その点は、家族にも感謝されています。
仕事がない日はどのようなことをしていますか。
三好さん:
単身赴任なので、同じような転勤組の同僚とあちこちに出かけています。福島に来て驚いたのは、初めてカツオの刺身を見たときのことです。四国ではカツオのたたきしか食べたことがなかったので、刺身で出てきたのでビックリ。そのおいしさにも感動しました。
若松さん:
小学生の子どもが3人いるので、休日は広野町にある二ツ沼総合公園によく遊びに行きます。震災後に改装された公園で、広々としていて立派な遊具もたくさんあるので賑わっています。また、私自身は野球少年として育ち、今も楢葉町のクラブチームに所属して練習や試合をしています。
渡邉さん:
私は運動が好きで毎日ランニングをしています。今年2月、45チームが参加して富岡町で開かれた第2回企業対抗駅伝大会では、アトックスのキャプテンでアンカーを務め、第1回に続いて見事優勝を果たしました。また、自分で出汁をとったスープで、いろいろなラーメンをつくるのも楽しみの一つ。先日は、鳥ベースのスープで子どもに食べてもらったところ大好評でした。
猪狩 実さん
株式会社アトックス
福島復興支社 環境施設部 環境運営一課 係長
渡邉 高志さん
株式会社アトックス
福島復興支社 環境施設部 環境運営一課 主任
髙村 幸生さん
株式会社アトックス
福島復興支社 環境施設部 環境運営一課 主任
林 大幹さん
株式会社アトックス
福島復興支社 環境施設部 環境運営一課 班長
小森 和幸さん
株式会社アトックス
福島復興支社 環境施設部 環境運営一課 班長
若松 伸吾さん
株式会社アトックス
福島復興支社 環境施設部 環境運営一課 班長
三好 健介さん
株式会社アトックス
福島復興支社 環境施設部 環境運営一課
放射線の測定や管理を通じて、作業員のみなさんが安心して仕事ができるよう、お手伝いをしています。まだまだ廃炉までは時間はかかりますが、力を合わせて頑張りましょう。
- プロフィール
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猪狩 実さん
大熊町出身。家族は郡山に住んでおり、いわき市内に単身赴任。家族は犬と猫を飼っているので、ペットに顔を忘れられないよう、こまめに帰るようにしている。
渡邉 高志さん楢葉町出身。現在はいわき市の泉に住んでいる。高校時代はサッカー部の選手で、卒業後はフットサルをして県大会3位となった。出汁から自分でとったスープでラーメンをつくのも得意技の一つ。
髙村 幸生さん浪江町出身。現在は家族といわき市に住んでいる。冬は、会社の先輩や同僚たちとスノーボードに出かけるのが楽しみ。次のシーズンからは子どもにもやらせたいと思っている。
林 大幹さん富岡町出身。現在は家族といわき市に住んでいる。休日は近所で子どもと遊ぶことが多いが、ときには喜多方にラーメンを食べに行ったり、東京ディズニーランドに遊びに行ったりしている。
小森 和幸さん富岡町出身。震災後にいわき市内に家を建てて住んでいる。休日は家族と買い物に出たり、子どもたちと公園で遊んだりしている。
若松 伸吾さん楢葉町出身。震災後はいわき市内に住んでいたが、今年の4月に楢葉町に帰還できて、家族と過ごす時間が増えた。少年時代から続けている野球では、楢葉町のクラブチームのメンバーとして全国大会にも出場している。
三好 健介さん愛媛県八幡浜市出身。単身赴任でいわき市四ツ倉に住んでおり、休日は同僚と地元の温泉に行ったり、好きなラーメンの食べ歩きをしたりしている。
- お勤め先
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株式会社アトックス
1980年設立。原子力発電所のメンテナンスや放射性物質に関わる業務が中心。震災後の1Fでは、放射線管理業務のほか、汚染水処理装置の運転、周辺地域の除染にも取り組んでいる。