2018年8月20日
- 須山 温人さん
- SBドライブ株式会社
CTO
共同創業者
- 齋藤 広治さん
- 三井物産プラントシステム株式会社
交通システム本部
交通第二営業部 部長
- 吉川 安博さん
- 三井物産プラントシステム株式会社
交通システム本部 交通第二営業部
グループリーダー
今年の4月18日から、運転手が必要ない自動運転のEVバス(電気で動くバス)3両が、1F構内で走り始めました。実用的な目的で使われるものとしては日本で初めてです。今回は、そのバスの導入や運行に携わってきた2社、3人の方々にお話をうかがいました。
フランスから輸入したEVバスを
1Fに合わせて調整・設定する
どういう経緯で、自動運転のEVバスを走らせることになったのですか。
須山さん:
SBドライブでは、自動運転のバスを世の中に広めようという仕事をしています。車両は自分たちで改造したり輸入をしたりして、東京や北海道をはじめとして全国で実証実験をしてきました。実際にお客様を乗せて走らせたいと思っていたところ、1Fで必要とされていることを知ったのです。
齋藤さん:
そこで三井物産プラントシステムでは、須山さんの会社と協力して、フランスのナビヤ社の車両を輸入するということでコンペ(競争入札)に参加しました。私たちの会社は、交通関係の車両および関連部材などの輸入販売をしていますが、実は自動運転EVバスの取り扱いは今回が初めてで、ナビヤ社との仕事も初めてでした。それでも、ナビヤ社はフランスの発電所で使用されている実績もあり、組もうと考えたのです。
それぞれ、仕事をどう分担しているのですか。
須山さん:
輸入した車両に対して、電波が入るようにしたりGPSを設定したりする作業を、東京の倉庫で行いました。そして、どういうコースを走るのか、どこにバス停を置くかなどは、実際に1Fに来てフランスのエンジニアと話しながら決めました。
実際に走り出しても、問題が出るとすぐに対応しなくてはなりません。そこで、4月初めから5月半ばまで、1カ月半ほど当社のメンバーが1Fに張りつき、私自身も1カ月ほど1Fに通いました。
齋藤さん:
私たちは、ナビヤ社と1Fの担当者との間に入って、それぞれの要望や意見を受けて橋渡しをするのが主な業務です。その中で、契約を結んだり重要事項を確認したりという仕事を行います。当社では、営業担当として吉川とこの仕事にあたりました。
吉川さん:
実は、私がこの仕事にかかわるようになったのは4月からで、それ以前は鉄道の保守機械を輸入する部署にいました。車両を輸入するという点では同じですが、限られた時間の中で、初めて扱う車両を初めての取引先と交渉するという点は大きく違いました。
日仏の企業文化の違いにとまどいつつ
朝4時まで電話会議を続けた日も
初めてのことばかりで、大変だったと思いますが。
須山さん:
何よりも、これまで実証実験していた場所とくらべて、環境が特殊だという点でした。手袋やヘルメットなどの装備が必要ですし、限られた滞在時間の中で、すべてを終わらせなくてはなりません。
また、1Fの担当者、フランスのエンジニア、電子部品の会社の方、現場の作業員の方々、バス会社の方々、数多くの関係者がいる中でベストな回答を出さないといけません。現場でのコミュニケーションにも気を使いました。
齋藤さん:
ナビヤ社は2014年に設立したばかりの新しい会社です。しかも、フランス人と日本人とではものの考え方も企業文化も違います。そのすり合わせには苦労しました。でも、契約を結ばないことには車両の製造がはじまりません。昨年末から今年初めまで、電話会議などを重ねながら、なんとか1月末に契約にこぎつけました。
時差があるので、毎日残業して昼夜を問わず、朝9時すぎから翌朝4時までぶっ続けで電話会議をした日もありました。
吉川さん:
特に、日本ならではのスピードや精度を、ナビヤ社に理解してもらうのが難しかったですね。でも、ナビヤ社も日本市場を重要視しており、懸命に対応してくれました。
とはいえ、日本人が求める水準がなかなか理解できないようでした。しかも、急がせてしまったこともあり、届いた車両には初期不良があったり、必要な部品が付いていなかったりということがあり、ずいぶん焦りました。
実際に運転が始まったときは、どう感じましたか。
須山さんのオペレーター研修の様子(EVバス車内)
須山さん:
動くのは当然のことだとはいえ、こうした厳しい環境で動いたのを見て、苦労をした分だけ感動が大きかったですね。
齋藤さん:
何もかも初めてで、確かに大変でしたが、逆にそれだからこそやりがいがあって、うまくいったときは、苦労が報われたという気持ちになりました。
そして、日本から約1万キロ離れたフランスでつくられたEVバスが福島で使われて、たくさんの人を運んで廃炉に少しでも貢献できると考えると、喜びもひとしおでした。
1Fで働くたくさんの人を見て
貢献したいという気持ちが強くなった
みなさんが初めて1F構内に入ったときには、どのような印象を受けましたか。
1Fに導入されるEVバスの外観
齋藤さん:
セキュリティーが万全だなというのが第一印象でした。また、安全にも細かく気を配られていることが、あちこちから伝わってきました。
吉川さん:
何千人という人が構内で働いているのを見て驚きました。同時に、そんなことも知らなかった自分が恥ずかしいという気持ちにもなりました。もっと多くの方に知ってほしいですね。また、ほかに少しでもお手伝いできることがないのか考えるようになりました。
須山さん:
入る前は、中で何が起こっているかよくわからず、安全なのか不安でした。ですが、いざ入ってみると、多くの人たちが全力で一つのことに向かって頑張っている場所だとわかりました。そういう場所で少しでもみなさんの力になることができて、誇らしい気持ちになりました。
それまではどこか人ごとのように思えた廃炉作業でしたが、現場を見ることによって自分ごととして少しでも貢献できればと思うようになりましたね。
今後、1Fの自動運転EVバスはどのように変わっていきますか。
日本初!実用化でのオペレーター研修1期生のみなさん
齋藤さん:
問題点は残っていますので、一つずつ解決しながら、みなさんの役に立つ移動手段にしたいと思っています。
須山さん:
まだ安定運行できていないところもあって、ご迷惑をかけていると思います。今後とも努力を重ねていきますのでご理解ください。近い将来、台数を増やしたり、走れるエリアを増やしたいですね。
利用した方からは、走りがスムーズだねという声もいただきましたが、スピードが遅い、運転手が乗っていないので心配だという声もありました。そうした声をまとめて改善していきたいと思います。
ところで、休日はどんなことをしていますか。
須山さん:
休日は、もっぱら3人の子どもと遊んでいます。あとは、週に1、2回、ジムで泳いだりしています。
齋藤さん:
旅行が好きです。また、せっかちなタイプなので、それを和らげることができるかと思ってヨガを始めました。インストラクターの資格も取り、週に1回ほどヨガスタジオに通ったり、自宅で一人でヨガをしたりしています。
吉川さん:
小学校5年生の息子が野球をするようになり、私もコーチをしているので、週末はそれに付きっ切りです。朝7時からグラウンドに出ているので、会社に行くときよりもずっと早起きしています。
須山 温人さん
SBドライブ株式会社
CTO 共同創業者
齋藤 広治さん
三井物産プラントシステム株式会社
交通システム本部
交通第二営業部 部長
吉川 安博さん
三井物産プラントシステム株式会社
交通システム本部 交通第二営業部
グループリーダー
私たちが廃炉や復興に貢献できることは限られているかもしれませんが、今後もEVバスなどいろいろな形で、1Fで働くみなさんに少しでも協力、支援できることがないか探していきたいと思っています。
- プロフィール
-
須山 温人さん
静岡県浜松市出身。仕事場の東京まで新幹線で通勤している。好きな食べものは、地元浜松市名物の餃子。
齋藤 広治さん大阪府八尾市出身。転職組で2002年入社。ドイツに2年間駐在したことがあり、趣味は海外旅行。とくに自然遺産が好き。
吉川 安博さん大阪府松原市出身。齋藤さんと同じく転職組で2004年入社。学生時代からスキーが好きで、インストラクターもしていた。
- お勤め先
-
SBドライブ/三井物産プラントシステム
SBドライブは、主に自動運転を行うためのソフトウエアの設定やオペレーターの育成支援を実施。三井物産プラントシステムは、電力・交通・製鉄・化学などのインフラや産業向けに設備機器などを主に取り扱っている。