2018年9月20日
- 猪狩 安博さん
- 株式会社Jヴィレッジ
営業グループ 第一課 主任
東日本大震災後、1Fの廃炉作業の拠点として使用されていたJヴィレッジですが、2018年7月28日、7年ぶりにトレーニングセンターとしての活動を再開しました。今回は、地元出身でJヴィレッジ再開の仕事に携わった猪狩さんに、これまでの取り組みや廃炉・復興に対する思いなどをうかがいました。
地元の復興に役立つだけでなく
好きなサッカーに関わることができた
どのようなお仕事をなさっているのですか。
再オープン後、多くの方々に活用されているJヴィレッジ
現在は、主に広報を担当しており、生まれ変わったJヴィレッジのことを広く世の中にお知らせし、利用していただけるように努力しています。最近では、7月28、29日のオープニングイベントが大きな仕事でした。当日は、サッカー関係者をはじめとして約1000人の方々に出席いただき、盛大な催しとなりました。
震災が起きたときは何をしていましたか。
私は、いわき生まれのいわき育ちで、当時は、運送会社で事務の仕事をしていました。地震が発生したときは、打ち合わせの最中でした。みんなで建物の外に逃げたところ、駐車場に停めているトラック同士がぶつかるくらいの勢いで、地面が揺れていたのを覚えています。
地震の直後に1Fの事故が起きたのですが、私はそれまで仕事で1Fに行ったことがあって、その場所があんなことになってショックを受けました。
どういうきっかけで、現在の仕事に就いたのですか。
この会社に入ったのは2016年です。大学時代にはサッカーをしていたので、Jヴィレッジがサッカーやラグビーのナショナルトレーニングセンターだったことは知っていました。また、1Fの事故のあとは、廃炉作業の拠点になったことも、もちろんよく知っています。廃炉や復興に必要なこととはいえ、緑の芝生のグラウンドが駐車場になってしまったのを見て、とても残念に思っていたのです。
そんな折、2020年に向けて、Jヴィレッジが以前の姿に戻るという報道を耳にしました。そして、職員を一般募集すると知り、ぜひ力になりたいと思って応募したのです。地元のためにもなり、好きなサッカーに関する仕事ができて、願いがかなった思いです。
思っていた以上の1Fの廃炉進捗に
作業員の方々の苦労と努力を感じた
2016年にJヴィレッジに来て、どんなことを感じましたか。
運送会社にいた時代、広野町や楢葉町も担当地域だったので、事故直後のJヴィレッジにも来たことがあります。当時は事故の対応拠点として使われており、警備が厳重で、近づくだけでも緊張したものです。その頃と比べると、作業員の方々の表情にもゆとりが見られて、だいぶ落ち着いてきたなと感じました。
最近になって1Fにはいらっしゃいましたか。
はい。久しぶりに1Fを訪れたのですが、思っていた以上に廃炉作業が進み、作業環境が改善していたので驚きました。正直いって、今でも構内に入るのには全面マスクが必要だと思っていたのです。ところが、構内のほとんどの場所では、みなさんが普通の作業着で歩いていました。日本の技術はすごいなと感じるとともに、作業員の方々のご苦労と努力は、並大抵のものではなかっただろうなと感じました。
Jヴィレッジが再開したときは、どんなお気持ちでしたか。
再開の少し前から、新聞やテレビでJヴィレッジのことがよく取り上げられるようになり、それを見るたびに「みんなに期待されているんだな」と感じてドキドキしていました。7月28日のイベントでは、記念試合のキックオフの時刻を地震発生の午後2時46分に決め、10秒前から出席者全員でカウントダウンをしたのですが、その最中に思わずぽろぽろと涙が出てきました。
Jヴィレッジや福島の安全を
もっと広く伝えていく
ほかに、この仕事をやっていて印象に残ったことはありますか。
サッカー、ラグビーなど様々な競技のトレーニングが可能な全天候型練習場をバックに撮影
福島県が中心となって進めている「Jヴィレッジ復興サポーター基金」の事務局が、Jヴィレッジ内に置かれ、私は寄付金を募集する担当をしていました。そのとき、寄付と同時にメッセージもいただいたのですが、「震災前にJヴィレッジに行ったことがあり、再開したらぜひまた行きたい」など、Jヴィレッジの復活を応援するメッセージをたくさんいただき、自分も頑張らなくてはいけないと身が引き締まりました。
新しくなったJヴィレッジについて教えてください。
新しく、全天候練習場がオープンしました。これは、サッカー練習場としては日本初です。また、一般のグラウンドについても、小学生や草の根レベルのクラブからトップアスリートまで、広く使っていただけます。日本代表やプロのJリーガーが練習するのと同じグラウンドを、誰もが使えるというのが大きな特徴です。
ホテルは一般の方々もご利用いただけます。レストランやフィットネスジムも完備しており、合宿や団体での利用が中心のこれまでの宿泊棟に加えて、新しい宿泊棟はすべてシングルルームとなっているので、出張や一般のご利用にも便利です。
これから、どのようなことをしていきたいと考えていますか。
Jヴィレッジが再始動することで、双葉郡やいわき市にどんどん人が集まって、以前の賑わいを取り戻していければいいなと思っています。県外では、放射線量が高くて心配だと思っている方がまだまだ多くいらっしゃるようで、イベントやサッカーの合宿があると、ご本人だけでなくご家族からの問い合わせもよくあります。
線量のデータを公開して安全であることをお伝えするとともに、Jヴィレッジを利用していただいている様子をもっと広報していく必要があると感じています。
ところで、休日はどんなことをしていますか。
好きなサッカーをやっているといいたいのですが、実際には年に1回、いわき市内のサッカーチームで市民リーグの試合に出るくらいですね。普段の休日は、小学生の子ども2人と近くの公園で遊んでいます。
猪狩 安博さん
株式会社Jヴィレッジ
営業グループ 第一課 主任
1Fの廃炉が進んだのは作業員のみなさんのおかげです。ありがとうございます。ぜひJヴィレッジにも遊びに来てください。
- プロフィール
-
猪狩 安博さん
いわき市出身。1979年生まれ。大学時代にはサッカー部員として活躍。ポジションはディフェンダー。甘いものが好きで、お酒は飲めない。
- Jヴィレッジ アクセス・宿泊料金
-
●アクセス
JR常磐線広野駅から車で約10分
●通常料金(シングル)
1泊朝食付き 8,600円(税別)
1泊夕・朝食付き 10,600円(税別)※以前の客室は2名用ツインと合宿用の4名部屋の2種類でしたが、シングル(エキストラベッドを入れてツインとしてのご利用も可能)を加えることで、出張時の滞在用としてもご利用しやすくなりました
- お勤め先
-
株式会社Jヴィレッジ
サッカーやラグビーのナショナルトレーニングセンターであるJヴィレッジを管理・運営する会社。本社はJヴィレッジ内にある。2019年4月には、Jヴィレッジの海側を走る常磐線に新駅が開業する予定。