東日本大震災しんさい後、1Fの廃炉はいろ作業の拠点きょてんとして使用されていたJヴィレッジですが、2018年7月28日、7年ぶりにトレーニングセンターとしての活動を再開しました。今回は、地元出身でJヴィレッジ再開の仕事に携たずさわった猪狩さんに、これまでの取り組みや廃炉はいろ・復興に対する思いなどをうかがいました。

地元の復興に役立つだけでなく
好きなサッカーに関わることができた

どのようなお仕事をなさっているのですか。

震災しんさいが起きたときは何をしていましたか。

　私は、いわき生まれのいわき育ちで、当時は、運送会社で事務の仕事をしていました。地震じしんが発生したときは、打ち合わせの最中でした。みんなで建物の外に逃にげたところ、駐車場ちゅうしゃじょうに停めているトラック同士がぶつかるくらいの勢いで、地面が揺ゆれていたのを覚えています。
　地震じしんの直後に1Fの事故が起きたのですが、私はそれまで仕事で1Fに行ったことがあって、その場所があんなことになってショックを受けました。

どういうきっかけで、現在の仕事に就ついたのですか。

思っていた以上の1Fの廃炉進捗はいろしんちょくに
作業員の方々の苦労と努力を感じた

2016年にJヴィレッジに来て、どんなことを感じましたか。

　運送会社にいた時代、広野町や楢葉町も担当地域たんとうちいきだったので、事故直後のJヴィレッジにも来たことがあります。当時は事故の対応拠点きょてんとして使われており、警備けいびが厳重げんじゅうで、近づくだけでも緊張きんちょうしたものです。その頃ころと比べると、作業員の方々の表情にもゆとりが見られて、だいぶ落ち着いてきたなと感じました。

最近になって1Fにはいらっしゃいましたか。

　はい。久しぶりに1Fを訪おとずれたのですが、思っていた以上に廃炉はいろ作業が進み、作業環境かんきょうが改善かいぜんしていたので驚おどろきました。正直いって、今でも構内に入るのには全面マスクが必要だと思っていたのです。ところが、構内のほとんどの場所では、みなさんが普通ふつうの作業着で歩いていました。日本の技術はすごいなと感じるとともに、作業員の方々のご苦労と努力は、並大抵なみたいていのものではなかっただろうなと感じました。

Jヴィレッジが再開したときは、どんなお気持ちでしたか。

　再開の少し前から、新聞やテレビでJヴィレッジのことがよく取り上げられるようになり、それを見るたびに「みんなに期待されているんだな」と感じてドキドキしていました。7月28日のイベントでは、記念試合のキックオフの時刻じこくを地震じしん発生の午後2時46分に決め、10秒前から出席者全員でカウントダウンをしたのですが、その最中に思わずぽろぽろと涙なみだが出てきました。

Jヴィレッジや福島の安全を
もっと広く伝えていく

ほかに、この仕事をやっていて印象に残ったことはありますか。

新しくなったJヴィレッジについて教えてください。

　新しく、全天候練習場がオープンしました。これは、サッカー練習場としては日本初です。また、一般いっぱんのグラウンドについても、小学生や草の根レベルのクラブからトップアスリートまで、広く使っていただけます。日本代表やプロのJリーガーが練習するのと同じグラウンドを、誰だれもが使えるというのが大きな特徴とくちょうです。
　ホテルは一般いっぱんの方々もご利用いただけます。レストランやフィットネスジムも完備しており、合宿や団体での利用が中心のこれまでの宿泊棟しゅくはくとうに加えて、新しい宿泊棟しゅくはくとうはすべてシングルルームとなっているので、出張や一般いっぱんのご利用にも便利です。

これから、どのようなことをしていきたいと考えていますか。

　Jヴィレッジが再始動することで、双葉郡やいわき市にどんどん人が集まって、以前の賑にぎわいを取り戻もどしていければいいなと思っています。県外では、放射線ほうしゃせん量が高くて心配だと思っている方がまだまだ多くいらっしゃるようで、イベントやサッカーの合宿があると、ご本人だけでなくご家族からの問い合わせもよくあります。
　線量のデータを公開して安全であることをお伝えするとともに、Jヴィレッジを利用していただいている様子をもっと広報していく必要があると感じています。

ところで、休日はどんなことをしていますか。

　好きなサッカーをやっているといいたいのですが、実際には年に1回、いわき市内のサッカーチームで市民リーグの試合に出るくらいですね。普段ふだんの休日は、小学生の子ども2人と近くの公園で遊んでいます。