2019年8月2日
- 渡邉 雄二さん
- 東京パワーテクノロジー株式会社
原子力事業部 福島原子力事業所
施設管理部 発電運営グループ
副長
- 原田 滉大さん
- 株式会社 宇徳
重電機工部 福島チーム
フィールドエンジニア
福島第一原子力発電所3号機の使用済燃料プールには、566体の燃料(使用済燃料514体、新燃料52体)が保管されており、廃炉を進めるためには、この燃料を取り出し、より安全に管理できる共用プールに移送する必要があります。そのため、3号機の原子炉建屋では、ガレキ撤去や遮へい体の設置などの放射線量低減策をすすめるとともに、長期間の作業による作業員の被ばくを抑えるため、遠隔操作による燃料取り出し方法が導入されました。建屋をまたぐドーム型のカバーが設けられ、その内部に燃料取扱設備が設置されました。そして、2019年4月15日、3号機の使用済燃料プールからの燃料取り出し作業が始まり、廃炉に向けて大きな一歩を踏み出しました。今回は、燃料取り出し作業に携わる2つの会社の方にお話をうかがいました。
3号機の現場から離れた場所で
遠隔操作で燃料を取り出す
まず、お仕事の内容を教えてください。
渡邉さん:
3号機のドーム内に設置した燃料取扱設備は、主に燃料取り出し機とクレーンで構成されています。燃料取り出し機の先端はロボットアームになっており、先端部分を交換することによって、ガレキの切断、燃料をつかむなど、さまざまな作業に対応させることができます。私の会社では、燃料取り出し機を遠隔操作し、ガレキ撤去から始まり、燃料を取り出してキャスクと呼ばれる容器に収納するまでを担当しています。担当者は、4人で1班をつくり、全部で6班が、交代で作業にあたっています。
原田さん:
私の会社は、燃料が収納されたキャスクを共用プールまで運ぶことを担当しています。キャスクの内部は水で満たされていて、キャスクの重量は、内部の水と燃料を合わせて約50トンになります。これを200トン自走車という特殊な大型トラックに積載して、共用プールまで輸送します。
キャスクというのは、どういうものなのですか。
原田さん:
キャスクは金属(炭素鋼)でできた円筒状の容器で、高さが約5.6メートル、直径が約1.4メートルあり、二重構造になっています。内側は、放射線の吸収材料や金属が使われており、さらに、水で満たされているため、近くに人がいても大丈夫なレベルまで遮へいすることができます。
いくつものカメラの平面的な画像をもとに
現場の様子を頭の中で立体的にとらえる
遠隔操作をすることで難しい点はありますか。
渡邉さん:
ロボットを遠隔で操作するための
操作卓
現場の映像を見るためのモニター
遠隔操作なので、カメラで現場を写して、その映像を画面で見ることになります。しかし、カメラの映像は平面画像ですから、奥行きがわかりにくいのです。そこで、複数のカメラの映像を見ながら、頭の中で現場を立体的に認識しなければならないのが難しいところです。そのため訓練を長期間実施してきました。
また、ロボットアームの操作は、クレーンを動かすよりも難しいですね。自分の手ではない手を動かすようで、頭で思ったようには自由に動かせません。もどかしく感じることもあります。
原田さん:
私は、ほかの原子力発電所でも、取り出した燃料を運ぶ作業をしてきました。そこでは、現場に入って実際に燃料プールの内部を目で見ながら操作することができます。ですが、3号機は遠隔操作のため、そうしたことができません。遠隔操作は、目で直接見ながら操作する場合に比べて難しいですね。
どういう点に注意して操作をしていますか。
渡邉さん:
大切な作業ですので、工場でしっかり訓練を受けてきましたが、実際の3号機では、内部の明るさ、カメラの設置角度、ガレキの状況などが、訓練のときと異なっています。そのため、作業中に少しでもおかしいなと感じたときには、作業を止め、確認するということを心がけています。「あわてず、あせらず、冷静に」をモットーにしています。
また、班の引き継ぎも大切です。少しでも注意すべき箇所が見つかったり、機械の動きの癖を感じたりしたときなどは、ささいなことでも次の班に伝えるようにしています。
原田さん:
何よりもチームの協力が大切ですね。遠隔操作では数多くの手順があるため、1人ですべてを判断して操作しようとすると、どこかで見落としが起きるおそれがあります。そこで、5人で1チームを組み、一つひとつの手順を確認しながら進めるようにしています。
無事に最初の取り出しが終了したが
これからが作業の本番
4月に最初の燃料が無事に取り出されましたが、どのようなお気持ちでしたか。
渡邉さん:
燃料プール内のガレキの撤去作業はしていますが、隙間に小さなガレキが残っている可能性があります。燃料を取り出すときに、そんなガレキがひっかかったら作業は持ち越しになると思ったのですが、順調に燃料を取り出すことができて、ほっとしました。
原田さん:
これまで訓練をしてきたとはいえ、さすがに最初の作業は緊張しました。作業が終わったときよりも、テレビのニュースを見て実感が沸いてきました。
今後もまだ取り出し作業は続きますね。
燃料取り出し作業が行われる3号機
渡邉さん:
今回は最初の一歩にすぎません。3号機の燃料取り出し作業は、2020年度まで続く予定です。今回取り出したのは、比較的取り出しやすい新燃料です。まだたくさんの燃料が残っていますので、まずは第一歩、ここからが本番だと気を引き締めて、安全第一で確実に進めていきたいと思います。
ところで、休日はどんなことをしていますか。
渡邉さん:
休日は、もっぱら子どもの部活の送迎をしていますが、まとまって休みがとれたときは、家族とキャンプに行くこともあります。先日は安達太良山のあたりに行ってきました。
原田さん:
休みのときは、よくゴルフをやっています。もともとゴルフに興味があったのですが、福島に着任してみて周囲にゴルフ場が多く、会社の同僚にもゴルフをしている人が多かったのではじめました。
渡邉 雄二さん
地元の双葉郡楢葉町出身。震災前から、1F、2F、柏崎原子力発電所で燃料取り出し作業に従事してきた。アウトドアの趣味が多く、キャンプや釣りのほか、奥さんと温泉めぐりをしたり、おいしいものを食べたりするのが楽しみ。
原田 滉大さん
横浜市出身。現在は、いわき市内でアパート住まい。2018年に福島に異動した。1F4号機の燃料取り出し作業も担当した。自身でゴルフをするほか、ボクシングや総合格闘技などのスポーツを見るのも好き。テレビ観戦だけでなく、実際に会場に見に行くこともある。
廃炉に向けて進むことは大切ですが、けがをしないことはもっと大切です。けがなく仕事が進むことで、はじめて全員で喜びを分かち合うことができます。安全第一、健康第一で取り組みましょう。
- プロフィール
- 渡邉 雄二さん
地元の双葉郡楢葉町出身。震災前から、1F、2F、柏崎原子力発電所で燃料取り出し作業に従事してきた。アウトドアの趣味が多く、キャンプや釣りのほか、奥さんと温泉めぐりをしたり、おいしいものを食べたりするのが楽しみ。
- 原田 滉大さん
横浜市出身。現在は、いわき市内でアパート住まい。2018年に福島に異動した。1F4号機の燃料取り出し作業も担当した。自身でゴルフをするほか、ボクシングや総合格闘技などのスポーツを見るのも好き。テレビ観戦だけでなく、実際に会場に見に行くこともある。
- お勤め先
-
東京パワーテクノロジー株式会社
火力、原子力発電所関係の設計や管理、放射性物質の取り扱いや管理などの業務を行っている。
株式会社宇徳
1915年設立。港湾荷役・陸上輸送の業務を行っている。