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1Fを守る仲間たち

株式会社エイブル

2021年8月24日

INTERVIEW 63 排気筒解体という難しい工事をやり遂げ「廃炉貢献賞最優秀賞」を受賞

沢田充佳さん沢田さわだ 充佳みつよしさん
株式会社エイブル
工事技術開発ジョブ営業部

 2019年夏から始まった1・2号機の排気筒解体工事はいきとうかいたいこうじは、予定していた工程が2020年4月29日に完了かんりょうしました。そのむずかしい作業を成功させたことに対して、このたび日本原子力学会福島第一原子力発電所廃炉検討委員会はいろけんとういいんかいから「廃炉貢献賞はいろこうけんしょう 最優秀賞さいゆうしゅうしょう」を受賞しました。工事の方法や手順などについては、「INTERVIEW56 新しい工法で排気筒はいきとうの解体にいどむ」紹介しょうかいしたとおりです。今回は、実際の工事でのご苦労や受賞の感想を、現場の先頭に立って工事を進めた沢田さんにうかがいました。

前例がない工事だったので
何もかもがむずかしかった

排気筒解体工事はいきとうかいたいこうじでは、どのような役割やくわりをなさったのでしょうか。

沢田充佳さん

 解体するための装置そうちの設計から、製作、テストまで、あらゆる作業にかかわりました。ばくをけるために、装置そうち遠隔えんかく操作そうさしたのですが、そのためのソフトウェアの設定も行いました。もちろん、それぞれの分野には専門せんもんの方がいらっしゃるのですが、実際に機械を動かすときには、全体のバランスが大切になってきます。例えば、ソフトで完璧かんぺきに設定しても、機械にはそれぞれくせがありますから、期待したとおりに動くとは限りません。そこで、私がまとめ役となって調整をしていきました。

どんな点に苦労しましたか。

 すべてが苦労の連続でした。世の中に前例がないことですし、もちろん私自身にも経験がありません。しかも、機械の知識だけではなく、ソフトや電気の知識も必要で、それらを組み合わせることで初めて装置そうち全体が動くという具合です。それを短期間に進めなくてはならず、まさに1から100まで全力で取り組んでいたといっていいかもしれません。

風や雨などの自然現象をはじめ
予想外の出来事の連続だった

実際に工事をはじめて、思いがけないことはありましたか。

 120mある本物の排気筒はいきとうに対して、会社の敷地内(しきちない)に18mの排気筒はいきとうのモデルをつくってテストを重ねましたが、やはり現場に行ってみて初めてわかることは結構ありました。事前に想定したものとは、わずか数cmですがちがう部分があり、その場でカメラを見ながら装置そうち操作そうさを変えるということもしました。

作業をした2019年は、台風や大雨など天候不順な年でした。

 大きなクレーンを使って切断するので、風が強いと作業はできません。台風の時期になると本部内で風の予報とにらめっこで、社内では風を読むプロが増えたような気がします。また、ノートパソコンを現場に持っていって設定をしていたときのことですが、いきなりドカンとかみなりが鳴ったと思ったら、急な豪雨ごううでパソコンが水びたしになったのにはおどろきました。パソコンがこわれずにんだのは幸いでしたが。

解体作業をしているときの沢田さんの1日のスケジュールを教えてください。

 睡眠すいみん時間が朝の7時から13時でした。シャワーを浴びて歯をみがき、出勤しゅっきんのために車の運転をする時間以外は、作業着を着てひたすら仕事をしていましたね。原子炉建屋げんしろたてやとなりでノートパソコンをつないで具合をみたり、本部のモニターを見つめながらあれこれ指示を出したりしていました。モニターをチェックしているときは、口を動かすことで頭の血行がよくなるように、ずっとグミを食べていた覚えがあります。

 ろくに食事もとらないものだから、みるみるやせていって家族には心配をかけましたが、私自身は楽しくやっていました。

一人ひとりの仕事をこなすことが
一歩ずつ廃炉はいろにつながっていく

ところで、東日本震災しんさいが起きたときは、どちらにいらっしゃいましたか。

沢田充佳さん

 ちょうど学校を卒業する年で、東京にいました。楢葉町に住んでいる家族に電話をしてもつながらず、一時はとても心配しました。その後、東京で電気関係のメーカーに就職しゅうしょくをしたのですが、地元で働きたいという気持ちがつのり、2015年に福島にもどってエイブルに就職しゅうしょくしました。楢葉町の家は、ちょうど私がもどってくるころに避難指示ひなんしじ解除かいじょされました。

日本原子力学会福島第一原子力発電所廃炉検討委員会はいろけんとういいんかいより「廃炉貢献賞はいろこうけんしょう 最優秀賞さいゆうしゅうしょう」を受賞したときの感想を教えてください。

 正直なところ、ほとんど実感はありませんでした。一緒いっしょに取り組んだだれが受賞してもよかったのですが、私の担当たんとうがたまたま受賞の条件に合ったものだから、賞状に名前を入れてもらえたと思っています。それでも、社内で「こんな機会はなかなかないよ。喜ばしいことだ。おめでとう!」と言ってくれたのは、うれしかったですね。

 いろいろな方々に支えられて成り立つ仕事だと思っています。なによりも、安全でけがのないのが一番。一人ひとりがきちんと自分の仕事をこなすことで、結果的に廃炉はいろが進んでいくという気持ちが大事かなと思っています。

仕事のない休日はどのように過ごしていますか。

 自動車の運転が大好きで、後ろのトランクの上に羽が生えたようなリアウイング付きの車に乗っています。どこに行くというわけでもなく、ここがこう動いているんだろうなと想像しながら乗るのが好きなんです。休日はつかれてていることが多いのですが、たまにはりにも出かけています。

沢田充佳さん

沢田さわだ 充佳みつよしさん

楢葉町出身。入社2年目から今の仕事を続けてきた。家では犬とねこを飼っていて、時間があるときは犬をよく散歩に連れていく。また、手作りの料理が好きで、学生時代のアルバイトで身につけたうでで、短時間でできるパスタやチャーハンなどを作って楽しんでいる。

作業員の皆様みなさまのおかげで、ここまでくることができました。私や会社だけでは、あのような仕事は決してできません。これからもお世話になります。

プロフィール
沢田さわだ 充佳みつよしさん

楢葉町出身。入社2年目から今の仕事を続けてきた。家では犬とねこを飼っていて、時間があるときは犬をよく散歩に連れていく。また、手作りの料理が好きで、学生時代のアルバイトで身につけたうでで、短時間でできるパスタやチャーハンなどを作って楽しんでいる。

つとめ先

株式会社エイブル

1992年設立。97年本社を福島県双葉郡大熊町に移転。震災しんさいにより本社機能を広野町に移している。火力・原子力発電を中心に各種プラント設備の建設、設計・開発を主に行う。

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