2021年8月24日
- 沢田 充佳さん
- 株式会社エイブル
工事技術開発ジョブ営業部
2019年夏から始まった1・2号機の排気筒解体工事は、予定していた工程が2020年4月29日に完了しました。その難しい作業を成功させたことに対して、このたび日本原子力学会福島第一原子力発電所廃炉検討委員会から「廃炉貢献賞 最優秀賞」を受賞しました。工事の方法や手順などについては、「INTERVIEW56 新しい工法で排気筒の解体に挑む」で紹介したとおりです。今回は、実際の工事でのご苦労や受賞の感想を、現場の先頭に立って工事を進めた沢田さんにうかがいました。
前例がない工事だったので
何もかもが難しかった
排気筒解体工事では、どのような役割をなさったのでしょうか。
解体するための装置の設計から、製作、テストまで、あらゆる作業にかかわりました。被ばくを避けるために、装置は遠隔で操作したのですが、そのためのソフトウェアの設定も行いました。もちろん、それぞれの分野には専門の方がいらっしゃるのですが、実際に機械を動かすときには、全体のバランスが大切になってきます。例えば、ソフトで完璧に設定しても、機械にはそれぞれ癖がありますから、期待したとおりに動くとは限りません。そこで、私がまとめ役となって調整をしていきました。
どんな点に苦労しましたか。
すべてが苦労の連続でした。世の中に前例がないことですし、もちろん私自身にも経験がありません。しかも、機械の知識だけではなく、ソフトや電気の知識も必要で、それらを組み合わせることで初めて装置全体が動くという具合です。それを短期間に進めなくてはならず、まさに1から100まで全力で取り組んでいたといっていいかもしれません。
風や雨などの自然現象をはじめ
予想外の出来事の連続だった
実際に工事をはじめて、思いがけないことはありましたか。
120mある本物の排気筒に対して、会社の敷地内(しきちない)に18mの排気筒のモデルをつくってテストを重ねましたが、やはり現場に行ってみて初めてわかることは結構ありました。事前に想定したものとは、わずか数cmですが違う部分があり、その場でカメラを見ながら装置の操作を変えるということもしました。
作業をした2019年は、台風や大雨など天候不順な年でした。
大きなクレーンを使って切断するので、風が強いと作業はできません。台風の時期になると本部内で風の予報とにらめっこで、社内では風を読むプロが増えたような気がします。また、ノートパソコンを現場に持っていって設定をしていたときのことですが、いきなりドカンと雷が鳴ったと思ったら、急な豪雨でパソコンが水びたしになったのには驚きました。パソコンが壊れずに済んだのは幸いでしたが。
解体作業をしているときの沢田さんの1日のスケジュールを教えてください。
睡眠時間が朝の7時から13時でした。シャワーを浴びて歯を磨き、出勤のために車の運転をする時間以外は、作業着を着てひたすら仕事をしていましたね。原子炉建屋の隣でノートパソコンをつないで具合をみたり、本部のモニターを見つめながらあれこれ指示を出したりしていました。モニターをチェックしているときは、口を動かすことで頭の血行がよくなるように、ずっとグミを食べていた覚えがあります。
ろくに食事もとらないものだから、みるみるやせていって家族には心配をかけましたが、私自身は楽しくやっていました。
一人ひとりの仕事をこなすことが
一歩ずつ廃炉につながっていく
ところで、東日本震災が起きたときは、どちらにいらっしゃいましたか。
ちょうど学校を卒業する年で、東京にいました。楢葉町に住んでいる家族に電話をしてもつながらず、一時はとても心配しました。その後、東京で電気関係のメーカーに就職をしたのですが、地元で働きたいという気持ちがつのり、2015年に福島に戻ってエイブルに就職しました。楢葉町の家は、ちょうど私が戻ってくるころに避難指示が解除されました。
日本原子力学会福島第一原子力発電所廃炉検討委員会より「廃炉貢献賞 最優秀賞」を受賞したときの感想を教えてください。
正直なところ、ほとんど実感はありませんでした。一緒に取り組んだ誰が受賞してもよかったのですが、私の担当がたまたま受賞の条件に合ったものだから、賞状に名前を入れてもらえたと思っています。それでも、社内で「こんな機会はなかなかないよ。喜ばしいことだ。おめでとう!」と言ってくれたのは、うれしかったですね。
いろいろな方々に支えられて成り立つ仕事だと思っています。なによりも、安全でけがのないのが一番。一人ひとりがきちんと自分の仕事をこなすことで、結果的に廃炉が進んでいくという気持ちが大事かなと思っています。
仕事のない休日はどのように過ごしていますか。
自動車の運転が大好きで、後ろのトランクの上に羽が生えたようなリアウイング付きの車に乗っています。どこに行くというわけでもなく、ここがこう動いているんだろうなと想像しながら乗るのが好きなんです。休日は疲れて寝ていることが多いのですが、たまには釣りにも出かけています。
沢田 充佳さん
楢葉町出身。入社2年目から今の仕事を続けてきた。家では犬と猫を飼っていて、時間があるときは犬をよく散歩に連れていく。また、手作りの料理が好きで、学生時代のアルバイトで身につけた腕で、短時間でできるパスタやチャーハンなどを作って楽しんでいる。
作業員の皆様のおかげで、ここまでくることができました。私や会社だけでは、あのような仕事は決してできません。これからもお世話になります。
- プロフィール
- 沢田 充佳さん
楢葉町出身。入社2年目から今の仕事を続けてきた。家では犬と猫を飼っていて、時間があるときは犬をよく散歩に連れていく。また、手作りの料理が好きで、学生時代のアルバイトで身につけた腕で、短時間でできるパスタやチャーハンなどを作って楽しんでいる。
- お勤め先
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株式会社エイブル
1992年設立。97年本社を福島県双葉郡大熊町に移転。震災により本社機能を広野町に移している。火力・原子力発電を中心に各種プラント設備の建設、設計・開発を主に行う。