凍土壁とうどへきの点検や修理、設備の改善かいぜんなどとともに、1Fの土木工事を担当たんとうしています。1～4号機それぞれの建屋部分に関しては、建築のチームが担当たんとうしているのですが、建屋周辺の土木工事は私たちのチームが担にないます。例えば、雨水が地下に浸透しんとうしないよう、コンクリートやアスファルトで覆おおうフェ－シングなどの工事があります。建築と土木で重なる部分もあるので、チーム間の協力は欠かせません。

　凍土壁とうどへきの役割やくわりは建屋のあるエリアへの地下水の流入を防ぎ、汚染水おせんすいの発生を抑制よくせいすることです。凍土壁とうどへきは1Fの1～4号機を囲む形で設置されており、壁かべの延長えんちょうは約1500メートル。壁かべの深さは約30メートルです。交換こうかん可能な1568本の凍結管とうけつかんなどで構成される凍土壁とうどへきは、冷凍機れいとうきなどが並ならぶ凍結とうけつプラントとつながっており、氷が膨張ぼうちょうしすぎないよう、常に一定の温度幅おんどはばを維持いじしています。

　凍土壁とうどへきは2016年から稼働かどうしており、設備の劣化れっかも見られ始めています。1つの設備が故障こしょうしてすぐに冷却れいきゃく機能が失われるというわけではありませんが、点検や交換こうかんなどには細心の注意が必要です。こうしたメンテナンスを続けながら、さらに運用のノウハウを高めていきたいと考えています。

　特に難むずかしさを感じるのは、季節などにより大きく変動する地表面の温度です。温度変化が周囲の設備に影響えいきょうを与あたえる場合もあるので、地表面温度をコントロールするための施策しさくを新たに考える必要があるかもしれません。

　実は、福島に赴任ふにんしたのは2012年です。富岡町で1年半ほど除染じょせんに関わり、その後、凍土壁とうどへきの現場に入りました。大震災だいしんさいから1年ほど経っていましたが、津波つなみの被害ひがいの様子を見て自分に何ができるだろうと考えました。今は、廃炉はいろというプロジェクトに、少しでも貢献こうけんしたいという気持ちで仕事に向き合っています。ただ、廃炉はいろにはとても長い時間がかかります。私が引退いんたいした後、子どもや孫からいい報告が聞けたらうれしいですね。

　今、私たちが取り組んでいるのは、凍土壁とうどへきという世界に1つしかない施設しせつです。私は全国の様々な現場に携たずさわってきましたが、凍土壁とうどへきには6年以上、福島には8年ほど関わっています。建築や土木のすべての現場にそれぞれの魅力みりょくがありますが、私にとって福島は間違まちがいなく特別な場所になりました。

　2014年から15年に凍土壁とうどへきをつくっていたころと比べると、チームの人数は10分の1、あるいはそれ以下に減っています。とはいえ、部下を持つことの難むずかしさを実感する毎日です。私が心がけているのは、自分から積極的にコミュニケーションを図ること。作業員との個別面談などにも、できるだけ時間をとりたいと考えています。

　沖縄生まれで、幼少ようしょうのころに東京に移りました。結婚後けっこんごは千葉に住んでいますが、単身赴任ふにんが多いですね。変わったところでは、硫黄島いおうじまの自衛隊基地での工事に1年半ほど携たずさわったこともあります。北から南まで、様々な現場を経験してきました。

　凍土壁とうどへきの工事がひと段落だんらくしてからは、祭りにハマりました。相馬野馬追や青森のねぶた祭りなど、あちこちの東北の祭りを追いかけて回りました。昨年1Fに戻もどってきて、また祭りを見ようと思っていたのですが、コロナ禍かとぶつかってしまいました。残念ですが、まだ東北の素晴らしい祭りを見られることを楽しみにしています。