2017年3月14日
- 大野 均 さん
- ラグビー選手
東芝ブレイブルーパス所属
日本代表
2015年に開かれたラグビーワールドカップイングランド大会で、日本代表チームは強豪南アフリカを初戦で破るなど、予選リーグで3勝という成績を収め、多くの人々に自信と勇気を与えてくれました。その代表チームのフォワードとして闘志あふれるプレーを見せてくれたのが福島県郡山市出身の大野均さんです。大野さんは、震災で避難された方々や廃炉作業を進める作業員の方々を応援するとともに、「Jヴィレッジ復興プロジェクト」に参加して福島の復興を支援しています。
大野均さんからの応援メッセージ
仲間を信じて勇気を持つことはラグビーでも廃炉作業でも大切
大野さん:
2019年には、いよいよラグビーワールドカップ日本大会が開かれます。オリンピック・パラリンピック、サッカーワールドカップと並んで、世界3大スポーツの祭典の一つ。試合は全世界に放映されますから、この大会を成功させることが、世界に日本の復興をアピールする絶好の機会だと思っています。
日本での開催は2009年に決定しましたが、自国でラグビーワールドカップが開かれるのに、代表チームがふがいない成績を続けるわけにはいけません。私たちは必死で練習をして国際試合に臨みました。その結果が2015年のワールドカップイングランド大会に表れたと思います。
9月19日(現地時間夜)の南アフリカ戦勝利の歴史的瞬間は、日本では未明の時間帯。でも、ちょうど仕事がある作業員の方々は宿舎で起きる時間だったそうです。私たちが勝ったのを見届けて、「やればできるんだ。自分たちもがんばろう!」という自信と勇気をもって仕事に向かったと聞きました。私たちがラグビーをすることでみなさんを元気づけることができ、福島や日本の復興に少しでも役立っていると考えると、本当にスポーツをやっていてよかったと思います。帰国後は、福島県の内堀雅雄知事にお会いして、「県民に元気と勇気を与えてくれた」という言葉をいただきました。
2016年10月9日には、いわきグリーンフィールドにおいて、私が所属する東芝ブレイブルーパスとHONDA HEATの対戦がありました。震災後初めて福島県内で行われたトップリーグの公式戦ということで、数多くの方に見ていただき、私たちにも励みになるとともに、福島の復興の一助としてアピールできたと感じています。
地道に努力を重ねることで困難な目標も達成できる
大野さん:
私の現在の目標は、あと2試合と迫った日本代表としての通算出場試合を100にすること。そして、もちろん2019年のワールドカップ日本大会に出場して勝つことです。そのとき、私は40代になっていますが、地道に練習を重ねること以外に目標を達成する方法はないと思っています。
勝利には、目の前の一つひとつの練習、一つひとつのプレーをおろそかにしないこと。そして何よりも、勇気を持つことが大切です。大柄な外国人のタックルを受けるのは恐くないかとよく聞かれますが、恐がって弱い気持ちになっていては絶対に勝てません。自分を信じて必死にやるだけです。もう一つ、ラグビーで大切なのは仲間。グラウンドにいる15人、そしてベンチやスタンドにいる仲間やスタッフが、力と呼吸を合わせることで初めて勝利を得ることができるのです。
こうした点は、廃炉作業を行っている作業員のみなさんと共通するのではないでしょうか。やることは違っていても、仲間とともに勇気をもって一つの目標に向かって進む点は同じ。大変なことも多いでしょうし、地道な作業の繰り返しも多いと思いますが、ぜひとも頑張っていただきたいと願っています。
東日本大震災から6年、福島県はいまだにマイナスのイメージがつきまとっています。しかし、同時に福島第一原子力発電所の廃炉に向けて、作業員のみなさんをはじめとして、多くの方々が力を合わせて努力しています。そうした頑張りもまた福島の魅力になると私は思っています。そんな姿を内外の多くの人に、もっと見てもらいたいですね。これまでは事故というマイナス面ばかりが注目されましたが、それを乗り越えようとする力がプラスとなって、逆に人々を引きつける要素になるのではないでしょうか。
大野均さんの被災地支援活動
Jヴィレッジの再開が世界に向けて復興のアピールになる
大野さん:
私の実家は郡山市なので、家族や親戚には震災による大きな被害はありませんでしたが、福島第一原子力発電所の事故によって、東京都調布市にある味の素スタジアムに多くの県民の方々が避難していると聞いて、居ても立ってもいられず、震災直後に会いに行ったことがあります。なかなか被災者の方とお話しする機会はないのですが、このときはお互いに福島弁で語り合うことができ、2011年のワールドカップニュージーランド大会を前にして、むしろ元気をもらった気がします。その後、味の素スタジアムでは、福島県にゆかりのある西田敏行さん、秋吉久美子さん、中畑清さんらと一緒に炊き出しのお手伝いもしました。
現在は、2016年に立ち上げられた「Jヴィレッジ復興プロジェクト」に参加しています。Jヴィレッジは、私が2004年に初の日本代表として合宿に参加した思い出深い場所です。設備もよく食事もおいしいかったのが印象に残っていますね。ところが、福島第一原子力発電所の事故が起きてからは廃炉作業の拠点となり、青々とした芝のグラウンドが駐車場になった様子をニュースで目にしました。ですがその後、2018年夏にJヴィレッジが一部再開、2019年4月に全面再開となることが決定しました。これも廃炉作業の作業員のみなさんの奮闘のおかげだと思います。ありがとうございます。
県をあげて、そしてラグビー、サッカー協会をあげてJヴィレッジを盛り上げる計画が進められています。まだまだ福島に対する風評被害が多いなか、2019年のラグビーワールドカップでは、すでにJヴィレッジを合宿地に決めた国があると聞いてうれしくなりました。Jヴィレッジの再開が、ワールドカップの成功と合わせて復興への大きなアピールとなるに違いありません。それと同時に、福島県人の心の暖かさやホスピタリティも世界に発信できたらいいと思っています。
- プロフィール
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ラグビー選手
大野均さん福島県出身。高校卒業後、日本大学に入学。そのたくましい体にラグビー部の先輩が注目し、入学時に熱烈な勧誘を受けてラグビーを始める。現在は、トップリーグの東芝ブレイブルーパスに所属し、ポジションはフォワードの第2列でラグビーの花形でもあるロック。日本代表、そしてラグビーの国際リーグであるスーパーラグビーの日本代表チーム「サンウルブズ」のメンバーに選出されて活躍。日本代表としての出場試合数(キャップ数)98は、2017年3月現在で歴代トップを誇る。
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