2018年3月7日
- なすびさん
- 俳優・タレント
1998年に放映されたバラエティー番組『進ぬ!電波少年』の「電波少年的懸賞生活」で一躍時の人となったなすびさんは、その後も劇団「なす我儘」を主宰するなど、俳優やタレントとしてマルチな活動を続けています。そんななすびさんが2013年より挑戦を開始し、3度にわたる失敗・挫折を経て2016年についに成功したのが世界最高峰エベレストへの登頂です。背景にあったのは、震災に見舞われた故郷・福島そして東北復興への願いです。
なすびさんからの応援メッセージ
これからもさまざまな情報を発信していきたい
なすびさん:
福島復興を願って始めたエベレストへのチャレンジ。2016年、実に4度目の正直でついに登頂に成功することができました。また、環境省がテレビやインターネットを通じて、2013年から提供している除染情報サイト「なすびのギモン」でレポーターを務めさせていただいていることもあり、僕自身もこの5年間で除染や廃炉に関する取り組みにつぶさに目を向け、多くのことを学ばせていただきました。避難指示が解除となった地域に帰還された住民のみなさんの暮らし、本格的に始まった汚染土壌の中間貯蔵施設への輸送など、今後もさまざまな情報発信に尽力していきたいと考えています。
もちろん、福島第一原子力発電所の事故に関してはさまざまな考えを持つ人がいます。僕の活動に全員が賛成してくれているわけではありません。しかし、それもすべて覚悟の上です。僕自身福島の出身者であり、福島はどんなことがあっても守りたい特別なふるさとだからです。どうしても世の中に流れるのは誤解されている情報が多くなりがちですが、今の福島の現状を誤解なく理解していただき、みんなの元気や希望につながるように、僕の立場でできることをしっかりやっていきたいと考えています。
現場のみなさんの頑張りが自分自身の気持ちを奮い立たせてくれる
なすびさん:
そうした中で福島第一原子力発電所にも、2015年と2016年の2回にわたって訪問させてもらい、両方ともバスで現場を見学しました。驚いたのは、その1年の間にも状況がずいぶん改善されていたことです。初回の訪問時は1時間くらいかけて現場を見て回ったのですが、そのときの被ばく量は歯医者でレントゲンを1回受ける程度のものでした。それが2回目の訪問時には線量計の数値もまったく動かないほどで、施設内の除染は劇的に進んでいることを実感しました。それから2年が過ぎた現在、防護服なしで活動できる場所が増えたり、おいしい食事をとれる食堂や休憩所も充実したり、福島第一原子力発電所の環境改善はさらに前進していると聞いています。
廃炉作業は一朝一夕には終わらない長期にわたる大変な作業ですが、福島の復興の礎とすべく力を注いでくださっているみなさんの日々の取り組みに、本当に頭が下がる思いでいっぱいです。同時にみなさんの頑張りは、僕自身の「やるぞ」という気持ちを奮い立たせる力の源にもなっています。
一人ひとりにお声をかけられないのが悔しく残念なのですが、こうして僕自身が見てきたこと、経験してきたこと、学んだことを、さまざまなメディアやイベント、講演会などあらゆる機会を捉えてしっかり伝えることで、福島そして日本全国からみなさんに声援が集まる状況をつくっていきたいと考えています。
なすびさんの被災地支援活動
4回目の正直で登頂に成功したエベレストから福島の復興を訴えた
復興支援のためにエベレストに挑戦したなすびさん
なすびさん:
福島のみなさんの復興につながるなら、観光PRも喜んでやります。小さな物産展に呼ばれてもいないのに勝手に押しかけていきます(笑)。「客寄せパンダで大いにけっこう!」というのが僕の被災地支援活動の基本です。
20年近く前になりますが、『進ぬ!電波少年』というテレビ番組の「電波少年的懸賞生活」という企画に出演していたおかげで、多くの方が僕の顔を覚えてくださっていて、「観てたよ」と足を止めてもらえます。そんな小さなことでも被災者の方々が笑顔になり、喜んでいただければ僕もうれしいです。風評被害を払拭するとともに、震災の風化を防ぐためにも、先頭に立って声を上げ続けたいと思っています。
そこで始めたのが、エベレストへのチャレンジなんです。最初は「売名行為」とバッシングを受けました。ただ、それも仕方ないことだと思います。登山家でもない僕がエベレストに登頂するとなぜ福島が元気になるのか、復興と何の関係があるのか、すぐには結びつきません。そんな中で福島のみなさんが、「なすびが命がけで福島の復興を訴えようとしているのだから、我々も応援しようじゃないか」と背中を押してくださったことが、エベレストへのチャレンジにつながっていきました。
実はある被災者の方から、このようなお言葉をいただいたのです。「ボランティア活動も大切だけど、それはなすびじゃなくてもできる。広く世間に名前も顔も知られているなすびだから出来ること、なすびにしか出来ない被災地支援の形があるはずだ」と。そこから僕は何をなすべきかとずっと考えていました。
そしてエベレストに向かうきっかけとなったのが、ある映画の高松ロケの際に、お遍路として17日間をかけて四国八十八箇所を巡ったことです。途中には峠越えなどの難所もありましたが、普通の人なら5~6時間かかるといわれているルートを2~3時間で走破することができ、サポートしてくれた方から「どうしてそんなに早く歩けるの?山登りに向いているよ」と大変驚かれ、ならばやってみようと思いました。
もっとも口で言うのは簡単ですが、実際のエベレストはきわめて困難です。2013年の初挑戦は、残り100mのところで体力の限界と天候悪化が重なって断念。2014年の2回目は、雪崩事故が発生して中止を余儀なくされました。2015年の3回目は、ネパール大地震が発生して登山どころではありませんでした。そんな失敗続きの末、4回目の挑戦でやっと2016年に成功することができました。そしてエベレストの頂から「人間 やればできるんです!福島、そして東北は絶対に復興します。再生します。僕がエベレストに登れたんです。奇跡は絶対に起こせます」と訴えることができました。
あえて困難に身を置くことでこそ世間に目を向けてもらえることがあり、届けられたたくさんの応援の声を、福島そして東北のみなさんにこれからも還元していきたいと思います。
- プロフィール
- 俳優・タレント
なすびさん
福島県福島市出身。『進ぬ!電波少年』の「電波少年的懸賞生活」への出演で一躍有名に。2002年に劇団「なす我儘」を立ち上げるなど、現在は俳優・タレントして幅広く活躍。エベレスト挑戦、除染情報サイト「なすびのギモン」のレポーター、あったかふくしま観光交流大使、トークイベントなど、地元福島と東北の復興を願い、多岐にわたる活動を行っている。
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