2019年9月3日

大野おおの 均ひとし さん

ラグビー選手
東芝ブレイブルーパス所属
元日本代表

　いよいよラグビーワールドカップ2019日本大会が9月20日から開催かいさいされます。福島県出身の大野均選手は、2015年に開かれた前回のイングランド大会で、強豪きょうごう南アフリカを初戦で破るなど、予選プールで3勝した代表チームの中心選手として活躍かつやくし、40歳さいを過ぎた今でも現役を続行して闘志とうしあふれるプレーを見せています。

　福島第一原子力発電所の廃炉はいろ作業にも大きな関心をもっている大野選手は、2019年7月24日、ラグビー選手として初めて廃炉はいろ資料館や福島第一原子力発電所構内を訪おとずれて廃炉はいろ作業の現状を視察しさつしました。そんな大野選手に、福島第一原子力発電所視察しさつの印象やラグビーワールドカップ2019日本大会への思いをうかがいました。

廃炉はいろ作業が進んだことで
Jヴィレッジが本来の姿すがたに

福島第一原子力発電所を視察しさつした感想をお聞かせください。

　普段着ふだんぎで構内に入れるだけでなく、原子炉建屋げんしろたてやのそばまで行けたことは予想外で驚おどろきました。その一方で、津波つなみでタンクが壊こわされたままになっていたり、原子炉建屋げんしろたてやの壁かべが崩くずれたままになっているのを見て、改めて事故の大きさをかみしめるとともに、作業にはまだまだ長い時間がかかりそうだなとも感じました。

構内では数多くの作業員が働く姿すがたをご覧らんになったと思いますが。

　本当に多くの人が力を合わせて廃炉はいろという目標に向け、努力しているんだなと知りました。そうした作業員の方々の努力があったからこそ、事故直後の大変な状態からここまで安定させることができたのでしょう。世の中には不可能なことはないんだなと思い、私自身も大きな勇気をもらいました。

福島第一原子力発電所を視察しさつする前にはJヴィレッジも訪問ほうもんしましたね。

　Jヴィレッジは、私が日本代表となって初めて合宿したところなので、思い入れが強い場所です。その場所が廃炉はいろ作業の最前線基地となり、しかたがないことだとはいえ、美しい芝生しばふの上に砂利じゃりが敷しき詰つめられてつらい思いをしました。
　廃炉はいろ作業が進んだことで、そんなJヴィレッジのグラウンドも本来の姿すがたになりました。昨年7月のプレオープンでは、福島県U-15選抜せんばつと地元クラブチームの試合を観戦し、地震じしん発生時刻じこくである14時46分にキックオフされましたが、鳥肌とりはだが立つほど感動しました。

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日本も十分に優勝ゆうしょうが狙ねらえるチーム
白熱した試合が期待される

ところで、まもなくラグビーワールドカップがはじまります。日本代表はいかがですか。

　今回の日本代表は、歴代の代表の中でも間違まちがいなく最強のチームです。目標は決勝トーナメント進出ともベスト8ともいわれていますが、ぜひ優勝ゆうしょうを目指してほしいし、十分に狙えると私は思っています。

　不可能なことはないというのは、4年前の南アフリカ戦でも証明されましたし、今回の視察しさつでもまざまざと感じさせられました。廃炉はいろ作業の最前線基地として使われたJヴィレッジはトップリーグの試合ができるまでになりましたし、損傷そんしょうした原子炉建屋げんしろたてやのすぐ近くまで普段着ふだんぎで行けるようになりました。それを思うと、日本がラグビーワールドカップで優勝ゆうしょうすることも決して不可能ではありません。

今回、予選プールのプールＡは、アイルランド、スコットランド、ロシア、サモアが相手です。

アジアで初めてのワールドカップ開催かいさい
成功に向けてぜひ応援おうえんしてほしい

福島県ではアルゼンチン代表とサモア代表が合宿をしますね。

　アルゼンチン代表は20年前までは日本代表と同じくらいの実力でした。それが急速に力をつけて、ワールドカップで優勝ゆうしょうを争うほどになっています。それだけラグビーに対する意識が高いといえるでしょう。間違まちがいいなく注目されるチームの一つです。サモアは以前から強豪きょうごう国でしたが、そんな両チームが福島のおもてなしを受け、おいしいものを食べて試合するのですから、ライバルとして手ごわいですね。

　

ほかに注目チームはありますか。

　ぜひフィジー代表の試合を見てほしいですね。フィジアンマジックと呼よばれるほど、ステップにしてもパスにしても、想像のつかない動きをするチームです。適当に放り投げたように見えるトリッキーなパスをうまくつなげてトライを決めます。見ているだけでおもしろさを感じられるので、これからラグビーを知りたいという初心者にもおすすめです。

　

日本代表の注目選手を教えてください。

さまざまなプレイヤーが一丸になるのは
ラグビーと廃炉はいろ作業の共通点

ラグビーの代表チームには外国人選手が多いですね。

　サッカーなどとは違ちがって、国籍こくせきを持っていなくても条件を満たせば代表になれます。そもそも日本でプレーしている選手にとって、母国の代表になることが一番ですが、母国の代表の資格を捨すててまで日の丸を背負せおうのですから、相当な覚悟かくごがあるはずです。日本人が日本代表になるのとは別の強い思いがあるように見受けられます。彼らは、試合前に君が代もしっかり歌いますし、試合になったら桜のジャージを着て体を張ってくれる非常に頼たのもしい存在そんざいです。

　さまざまなルーツや考えを持つ人たちが、一つの目標に向かって力を合わせるのは、廃炉はいろ作業にも通じることではないでしょうか。今回の視察しさつでは、私が所属している東芝をはじめ、本当にたくさんの企業が福島第一原子力発電所で作業していることを知りました。普段ふだんはライバル企業きぎょう同士であっても、力を合わせて廃炉はいろに向けて作業をしているのは、ラグビーにちょっと似ているなと感じました。

きつい練習でも終わらない練習はない
廃炉はいろ作業も必ず報われる

40歳さいを過ぎても現役を続けていられるのは、何か心構えや秘訣ひけつはありますか。

オフにはどんなことをしているのですか。

　試合ではかなり動いていますから、オフは自宅じたくのソファに座すわってのんびりしながら、お酒を楽しんでいます。福島の日本酒のほか、郡山の酒造会社が販売はんばいしているウイスキーでハイボールをつくって、よく飲んでいます。

今後は、どのようなことに力を入れていきたいと考えていますか。

　まだまだ現役ですので、自分のプレーで多くの人を力づけられるのが一番だと考えています。実際に、40代になっても第一線でプレーしている私の姿すがたを見ていただき、「元気をもらっている」といわれているので、1日でも長く続けていきたいと思っています。